【MLF沖縄】カンファレンスレポート「音楽未来会議 in 沖縄」
2025年1月17日(金)~19日(日)の3日間、沖縄コザにて、アジア各都市の音楽関係者を招いた音楽ショーケース・フェスティバル「Music Lane Festival Okinawa 2025」が開催されました。
今回、エンターテック・ユニバーシティ(ETU)の学生たちもスタッフとして参加し、カンファレンスプログラム「Trans Asia Music Meeting 2025」のレポートを執筆しました。
本記事では、1/19(日)に行われた「音楽未来会議 in 沖縄」セッションについて、ETU音楽ビジネス専攻 一期生の磯﨑がレポートします。
20世紀に隆盛を究めた日本の音楽ビジネスでは、「レーベル」「レコード会社」が業界の中心であった。レーベルが資本となり、CDを作り、テレビ、ラジオ、雑誌、メディアで宣伝し、ショップで販売する。しかしインターネットが浸透し、スマホ、SNS、ストリーミングの時代が到来したことで、レコード会社が築いたこのシステムの有効性は失われた。
さらにTikTokが登場、ショート動画時代が到来。その先の時代へと変化は進んでいる。誰もが個人で発信し、販売できる時代に、レーベル、メディアはどんな役割を担うのだろうかーー。
登壇者
山口 哲一(やまぐち のりかず)
これまで音楽プロデューサーや事務所社長として、音楽ビジネス全般に関わってきた。それらの経験から、日本の音楽業界のデジタル化が遅れていることに危機感を持ち、10年以上、エンターテック・エバンジェリストとして音楽情報の発信を続けている。柴 那典(しば とものり)
1999年、株式会社ロッキング・オンに入社。「ROCKIN’ON JAPAN」「BUZZ」「rockin'on」の編集に携わったのち、音楽ジャーナリストとして独立。アーティストに関する文章だけでなく、音楽の構造やビジネスの潮流、トレンドについての執筆も行う。脇田 敬(わきた たかし)
2023年、音楽マーケティング・スタートアップの株式会社LABを設立。これまで多くの新人アーティストのマネジメント・制作を行い、メジャーデビュー、ブレイクへと導いた経験をもとに、音楽ビジネス知識を広める発信や著述活動、人材育成も行う。
「音楽未来会議」とは?
凄まじいスピードで変容してきた音楽ビジネスの10年間を振り返り、これから起こる、さらなる変化を考え、行動する人を増やしていくことを目的としたイベントである。過去に開催した4回のイベントでは、「ヒットとブレイクの10年」「ライブとフェスの10年」「メディアとレーベルの10年」「マネーとクリエイトの10年」をテーマに議論してきた。初の沖縄開催となる今回のメインテーマは「アジアと日本の10年」。アジアと日本の音楽シーンについて考えていく。
これまでの「アジアと日本の10年」
かつての日本は、CDビジネスが大成功を収めたことで、アジアの音楽業界を牽引していた。しかし2010年代から加速したデジタル移行の波に乗り遅れ、たった数年でアジア諸国に追いつかれてしまったのだ。日本がデジタル移行に時間をかけている間に、アジアの音楽市場で一体何が起こっていたのだろうかーー。
2010年代後半の88risingの勃興をきっかけに、アジアの音楽市場の風景が変わったという。88risingはHIPHOPやR&Bレーベルとして、アメリカのヒットチャートに多くのアジア発アーティストを送り込んでいった。そして2022年、Coachellaのメインステージで、アジア諸国のアーティストがASIAN-POPSを鳴らしたことで、さらに深くアメリカのメインストリームに進出していった。この出来事は、日本の音楽関係者に「新しい時代と出会った」と実感させるには充分過ぎることだった。

これからの「アジアと日本の10年」
キーワードとして、「豊かさとは多様性であること」が挙げられた。山口氏、柴氏、脇田氏はそれぞれの考える「豊かな多様性のあり方」について、次のように語った。
山口氏:❝これからの日本音楽の強みは、多様な音楽背景と文化、そしてそのノウハウの蓄積である。アジア諸国も日本と同じように、多様なカルチャーを大切にしている。その国々の多様性を意識しながら、アジアにあるマイナー音楽を集めることで、日本単独では見出せない、新たな音楽の分野や市場の拡大に挑戦できるのではないか。そこに到達するには、音楽業界で働く人や志す人が、文化の違いや豊かさを踏まえて、音楽の価値をどう上げていくか、どう関わっていくかを考えていくことが大切になるだろう。❞
柴氏:❝これからはヒットに惑わされないことが大切になってくる。ストリーミングサービスが当たり前になると、皆、数字をもとにヒットを語るようになってくる。すると「数字が大きい方が豊かだ」と感じる人が増えてしまう。
しかし「多様性(多様であることが豊かである)」という部分では、「メジャーレーベルなどは数字で勝負する」、「インディーズは多様性(多様であることが豊かである)で勝負する」、そして「メジャーとインディーズの中間層:ミドルクラス(1000〜2000人規模のライブ・アーティスト)を増やしていく」ことが、あらゆる多様な音楽が皆、健全である状態を生み出すことになるだろう。❞
脇田氏:❝これからはアメリカを経由せず、アジア諸国と連携し、同じルーツを持っている者同士で音楽を作っていく時代が始まる。しかし海外となると、いきなりチケット代が必要となる興行を実施しても、アーティストの空気、ファンの空気、リスナーの空気がなかなか浸透しづらい。ゆえに海外挑戦のインフラが整っても、アーティストがプレゼンする場がないため、なかなかうまく回っていかない。これらの課題は、業界主導だけでの解決には限界があるため、リスナーが時代の流れに乗っていけるような仕組み(ファン同士の交流など)を考えないといけない。そのためにも、業界村だけではないところで考える人を増やすべく、出版やカンファレンスを通じて、考えを発信し続ける必要性を感じている。❞
終わりに
SNSやストリーミングサービスが当たり前になったことで、自由に触れられる音楽の幅が広がり続けている。一方で、選択肢が増えたからこそ、自分の趣味嗜好の範囲内での選択を無意識のうちに行なってしまう。すると、実際に触れられる範囲での、ほんの一部にしか触れていないことがわかる。
今回、Music Lane Festivalでアジア各国からたくさんのアーティストが集まって行われたショーケース・ライブを見て、自国の文化の範囲でしか、音楽に触れてきていなかったと実感せざるを得なかった。
また、会場のコザでは、ジャズ、レゲエ、ラップなど多様な音楽が街中で流れており、東京で耳にするJ-POPやヒットチャートとは違った空気を街に漂わせていた。
同じ日本の中でも、このような文化の違いを感じるのだ。アジア諸国、世界となると、もっと知らない世界が広がっているのだろう。
なぜ、このような文化背景になったのか。その背景をアーティストたちはどう汲み取り、音楽に落とし込んだのか…。
音楽に関わる者同士が、互いに因数分解し合って音楽を語り、共鳴して次の曲が生まれる。そういった繋がりのきっかけと、未来への広がりがMusic Lane Festivalにはあると、今回のカンファレンスとイベントを通じて実感した。
レポート執筆:エンターテック・ユニバーシティ 音楽ビジネス専攻 一期生
磯﨑 天
