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『続 黄表紙のぞき』感想

文学フリマ東京39(2024年12月1日開催)にて購入した大和堂(X(旧ツイッター)@pororon_s)様のゆる江戸別冊『続 黄表紙のぞき』を読了。

『黄表紙のぞき』の続編であり、5つの黄表紙を収録する。

僕は『黄表紙のぞき』を読んだ際、江戸時代の人たちが、今の現代人とまったく同じように、寝転んでごろごろして、空想にふけって、もてようとしたりして、でもさっぱりうまくいかなかった、という生活を送っていたのだと実感した。

本来の「黄表紙」は、くずし字でとても読めないし、当時の予備知識がないと分からないことだらけだが、『黄表紙のぞき』ではそこが見事にフォローされ、素人でも楽しめるもの。

その『続』なのだから期待が高まるわけだが、これが予想以上に面白かった。
以下、各作品の感想。


心学早染草しんがくはやぞめくさ

山東京伝の作品。
教科書で名前だけはよく目にする山東京伝だが、中身を読んだことは一度もない。
江戸時代に流行って大人気だったものが今は触れるのが困難というのは、とても不幸でもったいないことである。
しかしこの『黄表紙のぞき』では、それがどんなものか、わかりやすく読める。

本の表紙にもある悪玉のキャラが登場する作品であり、ビジュアル面もインパクト大。

ストーリーとしては、一人の人間を軸に、善の心と悪の心が戦うもの。

最初は善の心の方が優位だったのだが、だんだん悪の心が優勢になると、本人も放蕩三昧になっていき・・・という展開。
この放蕩三昧の様子に、当時の人々は憧れも見ていたのだろうと感じる。

自分の行いを中国の古い詩の一節を引用して正当化するのだが、このあたりの解説が丁寧で大変ありがたい。

終盤の展開としては、ここまで悪人になるかと驚くものがあった。
人間世界の話と並行して、善と悪の戦いも描かれるのだが、そちらでもドラマがあり、見ごたえがある。

最後に改心するのは安心感があった。


人間一生胸算用にんげんいっしょうむなざんよう

なんだかとんでもないタイトルである。
先ほどの「心学早染草」の続編であり、冒頭から悪玉キャラが、裸で失礼、とメタ的な挨拶をする。
このメタ的というのは黄表紙によく出てくる趣向で、この点でも江戸時代が現代と同じだと感じる。

この作品はとにかく絵がすごい。
体の各パーツがそれぞれ独立してキャラ化しており、「目」は芝居が観たい、「口」はおいしいものが食べたい、「耳」は三味線が聞きたいとそれぞれ欲求を述べる。

「足」が籠に乗りたいというのがなるほどという内容だし、擬人化で頭の部分に足があるのがすごいビジュアルである。


莫切自根金生木きるなのねからかねのなるき

「切るな」の「根」から「金のなる木」というタイトル。
回文であり、高度な言葉遊びだ。

ストーリー的にはお金がありすぎて困る、というもの。
とにかくお金を使い、捨てようとしても、逆にどんどんお金が溜まっていくというシュールなもの。
クライマックスもすごいページだが、最終ページがシュール過ぎるものだった。


大悲千禄本だいひのせんろっぽん

千手観音の千本の手をレンタルするという、衝撃的な発想の話。

江戸時代はレンタルが流行っていて、ふんどしのレンタルもあったという話を以前、本で読んで、なるほどと思っていたが、それどころではなく千手観音の手である。

借りる側もかなり癖が強い人たちばかりで、それぞれの人物に絡んだ言葉の表現がされるのだが、この解説がとても親切でありがたい。

当時の童謡のもじりとか、そのときの様子を如実に表すものほど、後の時代になるとさっぱり分からなくなってしまうのだが、そこが解説されていて、作者様の知識のすごさを感じる。

ラストも衝撃的。


辞闘戦新根ことばたたかいあたらしいのね

江戸時代には、現代と同じようにメタ的であったり、言葉遊びにこだわった本があると感じるが、この作品は特にそれがすごい。

流行っては廃れていく流行語。その擬人化。
というとんでもないコンセプトなのが本作である。

言葉にちなんだ擬人化のキャラ、それが入り乱れ、大暴れする。
想像力の大爆発である。
そして最後のページは、見事な結末。

江戸時代の人々のこんなにも考えて、楽しんだんだ、ということに圧倒されるものだった。

これまで買った本。

どれも面白く、江戸時代が身近(というか今も一緒)と感じられるものばかり。

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