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構造を見れば直せる ━ 父から受け取った言葉

構造を見れば直せる
私は長い間、父を「怖い男」だと思っていた。
体は大きく、顔は迫力があった。
梅宮辰夫をもっとワイルドにしたようだと、誰かが言っていた。
奥目で、黙っていると近寄りがたい。
スラックスに光沢のある柄シャツ。
セカンドバッグ。
腕にはロレックス。
黒いセルシオにBBSのアルミ。
外から見れば、強い男だった。
だが、家の中では空気が張り詰めることもあった。
怒りが爆発する夜もあった。
私はずっと、
「短気な人だ」「怖い人だ」と思っていた。


けれど思い出す場面がある。
父が機械を直している姿だ。
何かがジャムる。
ネジが噛む。
動かなくなる。
私が焦ると、父は必ず言った。
「構造を見れば直せる。落ち着いてやれ。」
怒鳴るわけでもなく、
静かなトーンで。
当時は、ただの機械の話だと思っていた。


父のピークは、黒いセルシオに乗っていた頃だと思う。
後部座席にはマッサージ機能。
冷蔵庫まで付いていた。
運転はゆったりしていた。
発進は静かで、無駄にアクセルを踏まない。
「女と車は同じだ。優しく扱えば、相手も優しくこたえてくれる。」
そう言うときの父は、本氣だった。
あの車の中では、怒りはなかった。
ただ、静かな時間があった。


私は46歳になり、自分の神経を整え始めた。
人の視線が苦手なこと。
狭い店で消耗すること。
人のエネルギーに敏感で影響を受けてしまうこと。
ずっと「自分が弱い」と思っていた。
だから心理学を読み、
自己啓発を読み、
スピリチュアルも試した。
自分の人生を使って、人体実験のように。
そこでやっと氣づいた。
これは性格の欠陥ではない。
神経の特性だ。
刺激に敏感で、感じすぎる構造。


そのとき、フト父を思い出した。
外見は強そうだった。
だが、やたらと身なりを整え、
運転は丁寧で、
言葉は落ち着いていた。
もしかしたら父も、
刺激に敏感な人だったのではないか。
母は精神的にとても強い人だった。
外から見れば強いのは父の方だったが、
神経の強度は逆だった可能性もある。
外で張り、家で削られ、
逃げ場が車しかなかった。
怒りは性格ではなく、
処理できなかった刺激の出口だったのかもしれない。
擁護ではない。
美化でもない。
ただ、構造が見えた。


「構造を見れば直せる。落ち着いてやれ。」
父は機械の話をしていた。
だが今はわかる。
怒りにも構造がある。
恐れにも構造がある。
繊細さにも構造がある。
家族がどうだったかよりも先に、
まず自分の構造を見る。
それがわかれば、
壊れていると思っていたものは、
少しずつ整い始める。
私は、そうやって自分を直してきた。
父の言葉を、
人生のレベルで受け取ることで。


もしこの文章を読んで、
あなたが自分の怒りや不安を
「性格」ではなく「構造」として見られたなら。
その瞬間から、
何かは直り始める。
焦らなくていい。
まず、落ち着いて見ることだ。
構造を見れば、直せる。

だが、構造を見るというのは、
誰かを責めることではない。
私は長い間、
父の怒りを「性格」だと思っていた。
短気。
怖い。
支配的。

そうラベルを貼れば、わかった気になれる。
だがラベルは、構造ではない。

ラベルは思考停止だ。

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