言葉遣いについて・英語でも丁寧な話し方はあります
日本に住んでいた頃は、まだ未成年だった事もあり、周りは年上ばかりでした。なので、周りの大人と話す時は意識して丁寧な言葉を使うようにしていました。こちらで日本人相手のお仕事をしていた時期も、みなさんお客様なのでわたしは敬語でお話ししました。日本語では、丁寧に話すことや敬語の使い方は、学校でも教わりますし、一旦社会に出ると学ばなければならないことの一つですね。
英語には敬語がない*などという話も確かに聞きますが、日本語の場合と同じで、英語にも丁寧な話し方というのがあります。なので、お客さんを相手にするときや学術的な場面などでは、きちんとした丁寧な言葉遣いをします。(*「英語には敬語がない」という主張については、単に敬語自体の構造が違っていたり、言葉で表す敬意の幅が違うということです。このトピック一つで長い論文も書けてしまうほどです)
一度、20代の頃に日本へ一時帰国していた際に、日本人の有名な歌手の方が、アメリカのニューヨークかどこかで活躍されていて、その方がアメリカのテレビ番組でインタビューを受けている様子を日本のテレビで放映しているのを観たことがあります。その方も、おそらくまだ若く、20代くらい。誰だったのかなあ、と今も時々思い出しますが、わたしはその当時日本で誰が有名だったかなどは全く無知でしたし、家族が名前を教えてくれたけれど、それもすぐ忘れてしまったのです。
とても有名なベテランインタビューアーの進行の番組で、その日本の歌手の方が受け答えするのはもちろん英語だったのですが、10分間ほどのクリップを字幕付きで放映されていたのを見て、わたしは本当にびっくりしてしまいました。
わたしは、その当時でアメリカ暮らしは5〜6年経っていて、言葉の使い分けはできていました。その歌手の方もアメリカに数年は住んでいるはずなのに、ベテランのインタービューアーに対しての言葉遣いが、例えばランチでお友達と一緒にマクドナルドへ行っておしゃべりをするというようなノリのものだったのです。目上の人に対する話し方では全くありませんでした。
例えば、「Yes. I think you are right.(はい、その通りですね)」というような感じで答えればいいところを、「Yeah, you got it.」というような。面白かったのは、日本語訳の字幕では、一応『です・ます調』になっていたことでした。が、英語では、どう聞いてもお友達との会話で使う言葉でした。
この方は、きっと米国でフォーマルな英語の教育を受けることがなく、日本のスーパースターが現地のミュージシャンに交じって実戦で英語を学んだんだろうな、と感じました。それはそれでいいことなのですが。教える側から見て、言葉をコミュニケーションの中で学ぶことはいいことだと断言します。
ただ、この方の英語の使い方は、言語学で言う語用論(pragmatics)の部分が欠けていて、英語でも社会規範があり言葉は使い分けなければならないと言うことに気づいていなかったからであったと思います。言葉の社会規範というものは、さまざまな場面で言葉を使い、何が求められているか何が失礼に当たるか、などを経験で学ぶことが多いのですが、この方にはきっと幅広い練習の場がなかったのかと思います。音楽作りで手いっぱいだったのでしょう。
当時、ESL(English as a Second Language)を教える側として駆け出しであったわたしは、この歌手の方のインタビューを見て、英語を教えると言うのは単語や文法だけではなく、語用論面でもきちんと教えていかないと、こうなってしまうんだろうな、としっかり心に刻みました。この方ももうすでに50代、丁寧な英語の使い方はマスターできたのかしらん、それとももう日本へ帰っているのかしらん、などと思いを巡らせているところです。
