ロリィタとガーリーの狭間に ~着こなし次第の、わたしのワンピース~
神宮前で逢いましょう
【ロリィタとガーリーの狭間に
~着こなし次第の、わたしのワンピース~】
平成の頃、我々ロリィタの“ローカルルール”は貴族のしきたりさながらであった。
『ひとつのブランドにしぼって、頭から靴まで同じブランドで揃えよ』
や、
『ロリィタを着てラーメンを食べてはいけません』
など。
令和になってロリィタ姿でラーメンを食しに行く……それが我々の中でちょっとしたムーブメントとなった時期もあり、何ならInnocent Worldを着て私が最初に行ったご飯屋さんはカレー屋さんなのだが それだけ平成半ば、何のために守っているか分からぬ謎のルールのためにロリィタを 一回やめてしまった先人だったり そればかりが原因ではなかろうが、コロナ渦の頃ロリィタが激減して一時この世界が なくなってしまうのではなかろうか? と 当時も変わらず続けていた先輩方やモデルさんも、そう言った危機感に駆られていたの だろうか。
また、その当時よく取沙汰されて覚えている論争がある。
『MILK、Emily Temple cuteはロリータファッションか、或いはガーリーに区分するか』
当時は横浜にもマルイシティには運営元が変わる前のEmilyが、ビブレにはMILKが出店していた夢のような時代である。
MILKはジャンスカ含め、いくらかカジュアルである。
当時主流だったベビードール型のジャンスカもパニエを履いて膨らませるには丈が短すぎ、デニムのズボンやスタジャンなど当時のロリィタではまず取り入れないアイテムも 多かったのである。
また、全身MILKで街中を出歩いても凝視されるほど目立たないだろう(これはアイテムにも寄るだろうが)。
対していちばんシビアなのは、今はFraisierというセレクトショップで取り扱いのある お洋服全般にも言えることだが ひとまずこの段落ではEmilyである。
当時はいくらかカジュアルダウンして着られるTシャツの取り扱いなどもあったが それでもちゃんとしたジャンスカやワンピースは今通販サイトで見られるアイテムと 基本形は変わらない。
パニエを仕込んで(このお店で出ているものはペチコート、と言った方がニュアンスは近い)ドレッシーに纏うのは変わらぬが 頭モノはリボン型の少し大きいヘアピン(MILKはハートのバレッタがマスト)。
余談だが、数年前にロリィタに戻ってきた際Emilyの公式サイトを見てリボン型の ワッペンがついたバレッタを探してしまった。
平成の頃、冬場はリボンのついたベレー帽が王道だったような。
私が高校生の頃、KERAやバイブルを読み漁っていた時期に 全身Emilyでスナップを撮られているお姉さんを見るとあの髪飾りをつけて写真をとって いた記憶があり、
(パニエ穿かなくてもちゃんと穿きこなせるのか、電車で座れそう……)
と当時ゴシックに傾いていたむぎすけちゃんがいくらか目線を全身ゴスのお姉さんより そちらへ向けていた。
「パニエ4枚入れたスカート履いたら電車で立ちっぱなしでしょ~」
と、人より疲れやすいのに長女がこのお洋服を着ているのをいくらか心配していた 当時の母もマルイでお洋服を見て、
「大人になったら、あれ着て家出て大丈夫?」
とそれとなく聞いたら、
「どうぞ、どうぞ」
とMILKの前を通ったときとだいたい同じ返答を得られたのだ。
当時はやせ我慢してでも好きを貫くべき、なんて考えがロリィタさんのマインドだった。
夏は熱中症でぶっ倒れる寸前だろうと全身ゴスの人は澄ました顔で佇んでいたし ロリィタを着ているから、その理由で酔っ払いに言いがかりをつけられても 受け流さなくてはならなかった。
今となっては前者に関してはつけ襟という便利なアイテムがあるのだからムリは禁物、ヴァンパイアのごとく直射日光は避けつつ水分補給すべきだし 酔っ払いや、仮に電車の駅構内で言いがかりをつけられたら、
「駅員さん呼びますよ!」
ぐらいは言ってやるべきだ。
自分でお洋服を買うようになってから系列のブランドに熱をあげるようになったのも 何となくうなずける。
ところで前段でこの議題に関する考察をクドクドと書くのかと思いきや、平成の 回顧録を書き出していったあたり むぎすけの見解としては、
『そんなの、好きに決めりゃいいじゃん』
この一言に尽きる。
私の好きなMelody BasKetも、“ロリィタ”とはあまりカテゴライズしてはいない。
というのも。
このブランドとモデルの青木美沙子さん・深澤翠さんの3者がコラボしたドレス・(2人ともイニシャルに“M“の字が入っているのもあり)『Triple M`s』というドレスとボンネットが発売されたのだが 発売開始前のインスタライブを見ていて、
「うち(メロバス)ではじめて、ボンネットをお作りしました」
と、スタッフさんが紹介していたのだ。
胸元に4段重ねに連なるリボン、パニエで膨らませることを前提に作られた円錐型の スカート……確かにロリィタブランドで多用されるデザインだがメロバスは頑なに作ってはいなかった のだ。
むしろヘアメイクを整えていればヘアアクセサリーを用いずともお洒落着として 扱えるワンピ―スが多い。
この一筋縄では行かないデザインもまたこのブランドに惹かれる理由のひとつではあり 仮に“ロリィタ“とは正式にカテゴライズされないとしても『メロバスが好きだから』着続けるし、一向に構わないのである。
前のエッセイにもちょくちょく書いているが、テーマパークしかり私は“非日常”に 隔絶されると帰ってこられなくなるような怖さをほんの少し覚えるので 老舗ロリィタブランドのお洋服は可愛いけれど写真を撮ると、パニエ4枚で膨らませたシャンティクリームさながらフリルたっぷりの円錐型スカートや ローブ・ア・ラ・フランセーズ(中世フランスの宮廷衣装)ような広がった姫袖のドレス姿は そこだけ切り貼りしたような気分になってしまう。
でも、私の愛するブランドたちは(秋田の風光明媚な土地の工場で生産され、日本に根差したモノづくりだからか)不思議と風景に……何なら東北の田園風景や神社境内にもなじんでいる。
あくまで『日常』の延長線上にあるように感じるのだ。
どれも素敵なお洋服たちだから世界中にファンは多いだろうし、国際化が進むいま この言葉を使っていいかは分からぬが。
海外での生産が主流になる中、あえて国内で自社工場を持ち着心地もさることながら パターンやシルエットに魂を込め一着を作る『日本人による、日本人のための』国内ブランドすべてにどうか、幸あれ。
執筆 むぎすけ様
挿絵 麻菜様
投稿 笹木スカーレット顯
©DIGITAL butter/EUREKA project
