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キングオブコントの舞台上でなぜ観客が笑っていたのかわからなかった 2026/09/02

僕はキングオブコントに出たことがある。そう。知っている人なら知っているであろう、賞金1,000万円のお笑いの大会だ。

結果は一回戦敗退だった。

悔しかった。けれど、まあそうだよなとも思っていた。当時は来年からNSCに入るつもりだったけれど、手探りどころかお笑いがなんなのかもわからない状態でやっていたからだった。

手応えもなければ、当日やったネタが面白いとは到底思えなかった。

同年に出ていたM-1グランプリでは観客の声が全く聞こえないってこともあった。笑いどころか声も聞こえない。音が出ていないのか、自分たちが聞こえていないのか、全くわからなかった。

まあ舞台でネタをやるって経験が圧倒的になく、観客を見る余裕なんてなかったのだが当然と言えば当然なのだが。

でも、今日話したいのは自分にお笑いのセンスがなかったって話ではない。むしろその逆の話である。

先ほどあげたM-1とは対照的にキングオブコントでは笑い声が聞こえた。これは観に来ていた友達も言っていたので一定事実だと思う。

実際にネタをやりながら、笑う観客を見ながら「笑ってる、、」と驚いたのを覚えている。

これはさっき自転車に乗りながらいまだに心に一筋の光として差している。

今日は人前での舞台での話だが、日常の話となると、僕は昔から笑いをとるのが得意だった。初対面でもおちゃらければ大抵の人は笑うことは知っていたし、関係を深めれば深めるほど飲み会の場で笑いをとることは容易いことだった。

それがお笑い芸人をやりたいと思ったきっかけでもあるし、実際に自分のことを「面白い」と自認していた。

しかし、その面白さは圧倒的に内輪だった。自分のことを知っている人の前で、相手のことを知っていることを少しズラしてボケる。だいたい笑いをとる時はそういう構造だった。

これは明らかに自分のことを知っているという前提のもとに笑いが生まれていた。だからどちらかというと、お笑いのネタの部分よりも、バラエティ番組などに憧れていた。

そして、アマチュアだとしてもお笑いをやりながらネタを作ることが自分にとってつまらないことだと感じるようになる。

ネタはある意味誰がやっても面白い台本を書くことが求められる。実際はそうじゃないのかもしれないけど、自分にはそういう作業のように感じた。

だからネタを作っても、高校の同級生だった相方に面白いと言われれば面白いのだと思ったし、面白くないと言われたらつまらないのだと判断した。

そこに自分はいなかった。自分が面白いと思ったもので、笑わせる。そんな状況ではなかった。

だから本番までなんか面白くないなあ。やっぱりネタが好きじゃないなあと思っていた。ネタが好きじゃないのに、お笑いをやる人なんているのだろうかとか思っていた。

そして迎えた本番。

観客が笑っていた。と言っても、100人のうち5人くらい。覚えているのは60歳くらいのおじさん。ボケたシーンで笑っていた。驚いた。練習だけはしていたし、コントは漫才よりゆっくり時間が進むので、客席を見る余裕があった。

「面白いんだ。」

そう思った。

「これって面白いんだ。」

そう思った。

自分が作って、相方も同意して、実際に舞台でやって、笑う人がいるんだ。これには驚いた。驚いたってのは、すごく自分のよくないところだと思う。

やっぱ面白いだろ!と自信を見せるのでもなく、評価されたことに喜ぶわけでもなく他人事として「これって面白いんだ。」となってしまう。

どこまでいっても自分はメタだった。

こんな自意識に苛まれていたので、自分はお笑いを辞めた。こんな思いを持っているのに他人を巻き込むわけにはいかないとかなんとか言っていた。

しかし、その自分がお笑い芸人に向いているかどうかとか、ネタを作るのが好きかとか、そういう話とは違う。人生で最も驚いたことの一つにネタがウケたってことがある。

僕は大抵のことでは驚かない。犯罪をした人を見ても、なにかあったのだろうと思うし、理解できない人を見てもその人なりの思考回路があるのだろうと思う。

人に褒められても、そんなこと自分が一番わかってますよって思うし、けなされても論理武装がいとも簡単にできる。

しかし、その時は驚いた。「あ、面白いんだ。」

「あ、人ってこうやって笑うんだ。」

人のメカニズムが少しわかった気がした。

よく芸人のエッセイに書いてある、舞台で笑いをとることの快感とはまた違った。ドーパミンが出た感覚もない。ただ驚いた。

あの人はなにが面白かったんだろう。25歳の男性が制服を着て学生コントをやっているのが面白かったのか、アマチュア芸人が思い出作りにキングオブコントに出ていることが面白かったのか。

しかし、そんな人を蔑むような乾いた笑いではないことは直観的にわかった。

単に、ネタが面白かったのだ。

ここで言いたいことは、私のネタが面白かったんです。って話ではない。

ではなにかと言われると困るのだが、ちょっとネタの説明もしておこうと思う。

それは学生が告白をするネタで、相方が告白の練習をするため、友達である自分がそれに付き合うのだが、自分が何者かに呼ばれ、途中で席を外す。

その相手はその相方が好きな人で、自分が告白され、付き合うことになる。

それを相方は聞いているのだが、戻ってきた自分にそのあともひたすら告白の練習をするってネタだったと思う。

こうやって書いているとまあ悪くないとは思うのだが、当時は圧倒的に自信がなかった。まあ初めて出るキングオブコントなんてそんなもんなんだろう。

書きながら、自分は不思議だったのだと思う。自分もそれほど面白いと思っていないネタで、他人が笑っている。なぜ笑っているのか、なにが面白いのか、自分には全くわからない。

そんな状態で時は進んでいた。

こんなこともある。人生。



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