Fado do Estudante (学生のファド)
もう先も長くないしどうかこの世からいなくなる前にたとえ一曲でもFadoが弾けるようになることが老いた私の願いかもしれない。
などと、レッスンの度に嫌がらせのように言い続けていたからか、ギターの先生が急にFadoらしき曲を弾きながら教室の黒板にTAB譜をかきはじめた。ちなみにこの五線の黒板は、音楽教室的な雰囲気を出すためだけに存在してるかのように滅多につかわれることはない。
先生はちょっと弾いてみては考えてTAB譜を書いたり消したりしてどんどん書いていく。書き終わってから「これはFado do Estudanteという曲で、曲は知ってたけど初めて弾いてみた。それでも弾けて譜がかけた」などと嬉しそうにいっている。今日からこれを練習してみようということらしい。いつまでもRun to youの出だしの部分ばかりチマチマとやらされてた私たち生徒は、それぞれ携帯で黒板の写真をとって、それを見ながら練習することになった。
あいかわらずのゆるいギタークラスは、今日も授業の半分は亡くなったサッカー選手の話だった。
選手の話の最中に、表の楽器店で店番をしていたCeuおばさんが教室を覗き込んで「Ameliaを知っているか」となんだか楽しそうに私に聞いてきた。なんとシニア大学のボルトガル語のAmelia先生のことだった。Amelia先生はCeuさんの友達で、そして店番をしている楽器店の常連であるピアノの先生からピアノを習っているらしい。なんだか裏で(この町でおそらく一人しかいない)日本人のおばさんがギターを習いにきてるだの、あ、その人はシニア大学にきてる人と同じだの、というような話になっているのだろう。
最近近所にもう一つ音楽教室をみつけた。そこではクラシックギターだけでなくFado ギターも教えてるらしいので「お、いいな」とちょっと思っていたが、まるでそんな気分を見透かされたかのようにこんなことになっては、このギタークラスをやめられない。
