自己実現に向き合い、英語でグロービスのMBAを取得。実務との相乗効果と得た学びとは
皆さんは、自己実現と聞いてどんな印象を持ちますか? 現在そのために自己研鑽に励んでいる方もいれば、具体的なイメージがわかない方もいると思います。特に女性は社会から求められる役割が多く、全力でそれに向かえない方もいるかもしれません。この記事では、そんな方にこそ読んでいただきたい私の自己実現のエピソードをお話しします。
お忙しい方は、記事の最後の「このnoteのサマリ」を、そして私が履修した授業の一覧をご覧ください。ビジネススクールや、自己実現の方法に興味がある方の参考になれば幸いです。
自己実現欲求が溢れていた出産前。MBA取得の決意

2021年、第一子を妊娠中だった私は出産を楽しみにする一方で、自己実現欲求が溢れてくるのを感じていました。一定のキャリアを積み重ね、マズローの欲求階層で言う最上段の「自己実現」に差し掛かっていたからです。「母」という役割への責任を感じる一方で、一般的に持たれる母親像を越えてみたいというモチベーションを感じていた私はまっすぐにこの欲求に向き合うことにしました。その欲求とは、ざっくりと言えば「より強くなりたい」という気持ち。それを仕事の視点で言うならば「濃度の高い仕事ができる自分になり、高いアウトプットを出したい」というものでした。そして、私の自己実現には仕事の占める割合が高かった。やっぱり仕事が好きですし、仕事を通して社会や組織に貢献したいというのが私にとっての自己実現欲でした。
さて、当時の私はGoogleでさらにキャリアを継続するか、Faciloの創業に参画するかという二つの選択肢を持っていました。そのどちらを取るかという人生の岐路に立ち、どちらに進んでも役立ちそうなグロービス経営大学院(以下、グロービス)のMBAを育休の時間を使って取得することにしました。
グロービスは世界各国から受講生が集まるグローバルなコースがあり、英語でオンラインで修了できるのが特長です。また、スタートアップ向けのプログラムも豊富で、当時の私にはぴったりでした。臨月間近のパンパンなお腹でTOEICの試験を受け、2021年7月に出産し、育休中の9月から履修を始めました。この学びがその後の私にどんな影響をもたらしたのか、振り返ってみたいと思います。
仕事と育児をしながら履修するための、綿密な計画と工夫
グロービスは、通常2年間で修了するプログラムです。初めての出産、子育て、そして仕事復帰とどのように両立させたかを振り返ってみましょう。
修了までの計画を立てる
グロービスでは通常2年で36単位 (1教科1.5単位なので、およそ24科目)を取得します。1教科あたり1回3時間の授業があり、隔週で全6回受講します。毎回アサインメントがあり、それを提出したうえで授業にのぞむ形です。4回目にはレポートの提出があり、そのクオリティと出席態度で成績がつき、単位取得の可否を判断される形です。
36単位を2年で取得するには、月に6回×3時間、合計18時間の授業に出席し、アサインメントを6本提出し、3カ月に1度は3本のレポート提出が必須ということになります。しかも、ケースは全て英語。子育てや仕事復帰と両立させるには無謀だと考え、3~4年で修了する計画にしました。概算で、月に4回×3時間の合計12時間授業に出席し、アサインメントを4本提出し、1.5カ月に1本のレポート提出をすれば修了できる計画です。

英語履修にあたって
帰国子女でも英語ネイティブでもない私は、履修の精度を上げるために、まず英語力を高めることから始めました。当時在籍していたGoogleでは、帰国子女やバイリンガルが多数で、TOEICは900以上ないと恥ずかしいような環境。私もGoogle入社時点では500くらいだったスコアを900近くまで伸ばしていましたが、入学に際してさらに英語学習を強化しました。
ビジネス英語に精通した先生を見つけ、毎週1回90分、朝の始業前にレッスンをお願いし、授業の事前予習にあてました。これにより、概要をつかんだうえで授業にのぞむことができる状態を作ることができました。
仕事や育児と両立させる工夫
私が実際に行った工夫は、次の通りです。
💡仕事や育児と両立させる工夫
・アサインメントは、朝5時からの時間を使って取り組む
・レポートは、「月に一度は徹夜する」と決めてじっくり取り組む
・期初に全てのテキストとアサインメントを印刷し、ファイルに仕分けしてすぐ着手できる状態をつくる
・Googleドキュメントにケースと質問内容を記載し、移動時間やすき間時間に取り組める状態をつくる
特に効果的だったのは、環境づくりです。期初に印刷しておくことで英語のインプットをしやすい状態をつくったこと、Googleドキュメントを使って子どもが寝た瞬間、電車に乗った瞬間、お風呂中など、仕事以外のどんなすき間時間でもアサインメントができる状況にしておくことで、効率よく履修を進めることができました。仕事に支障を出さず、締め切りを守るということを目標に、タスクを処理する感覚で取り組んでいたので、モチベーションの維持や取り組みのムラをなくすことができました。


✏️反省点
最初の2年間は、真面目に英語の家庭教師と事前予習をし、ケースに対して自分の意見を持ったうえで、授業に参加するというリズムを作っていたので、集中して取り組むことができていました。しかし、途中でFaciloへの参画を決め、後半2年は事業が軌道に乗ったこともあり、惰性で授業に出席してしまうこともありました。短期的な視点で見れば授業より事業の方が何百倍も面白かったこと、生成AIの急スピードの進化に頼り切ってしまい、課題の提出はなんともお粗末なものになってしまったと振り返っています。
ケースと実践はどう違う? スタートアップ創業との相乗効果
入学当時の私はGoogleに在籍していました。しかし、何コマか授業を履修してたくさんの経営に関するケースを読んでいるうちに「やっぱり読んでるだけじゃなくて、自分でやりたい」と決心が固まりました。結果、入学からおよそ2カ月後には、Faciloに創業メンバーとして参画することを決めていました。今振り返ると、この決断もビジネススクールに在籍していたから得られたものだったのかもしれません。
いざスタートアップに参画すると、面白いことに気づきました。それは、ケースと実践を行き来できること。グロービスは経営に必要な知識を体系的に学ぶ科目構成になっており、これを学びながら実際にスタートアップの事業を推進することで相乗効果が生まれたのです。
具体的に、役立った点や相乗効果を感じた点をご紹介しましょう。

管轄外の組織への理解が深まり、全体のマネジメント精度が上がる
Accounting、Finance、HRなどの自分の所属している部門からは見えて来ない領域への理解が、それぞれの授業により深まりました。専門性は身につかなくとも、部門ごとの「経営の要点」が理解できるようになり、経営へのインパクトを理解することができました。
例えば、授業を通して興味をもったAccountingでは、管理会計の授業まで辿り着くことができました。管理会計は数字の解釈であって、同じコストでも管理会計上、どの勘定項目に振り分けるのかは、経営方針に基づいて判断されるべきであるということを学びました。
HR系の授業では、MBOよりOKRの方が組織のミッションを急速に実現できる点で優れているという流れがあるようで、Google社員代表として教授に意見を求められました。自分にとって当たり前の制度が、授業のなかで最新のマネジメント手法として扱われているとわかり、その重要性を理解することができたので、自信を持ってFaciloの経営にも取り入れることができました。これらは、FaciloのCOOとして部門横断型でそれぞれの仕事を牽引する際にとても役立ちました。
他業種を知ることで自分の事業を相対的に捉える
製造業、製薬事業、金融、レストラン業、輸入業、コンテンツビジネスなど、これまで縁のなかった業種のケーススタディも学びました。他業種への理解が深まることで、自分が向き合っている事業の本質をつかむことができました。
経営判断をする際に、この視点が役立ちました。俯瞰力や別業界への置き換えが自在になることで、多角的な視点から判断をすることができました。また、他業界からの候補者の方への解像度も高まり、スタートアップで重要な採用にもこの知識が役立っています。
スタートアップの登場人物とフェーズを把握する
Venture Managementという授業では、シードフェーズからシリーズA、B、C、IPOまでのフェーズごとに起きるリアルなケースをひも解きました。これから本格的にスタートアップを経営する私にとって、その全体像を把握するのにとても役立った授業です。ケースで紹介された「スタートアップあるある」は実際に創業してみて遭遇することがあり、実務に活かすことができました。
また、ベンチャーキャピタルの立場で自分の事業計画をバリュエーションするという授業を通して、ベンチャーキャピタリストの視点を学ぶこともできました。スタートアップ初心者の私にとって、授業を通してスタートアップというエコシステムを学ぶことができたのは、その後の事業推進の場で大いに役立ちました。稚拙な表現ではありますが、実際には、実務とケースは、“恋愛と恋愛バラエティ”くらいの差があり、ケースのようなきれいなことばかりではなかったこともここに記しておきます。
目指すリーダー像を具体化する
Leadership development and Ethicsや、Entrepreneur leadership、Keiei Dojo など、リーダーシップについての学びも貴重なものでした。たくさんの経営者や著名なリーダーの世界中のケースを読み、一生忘れられないエピソードとも出会うことができました。
松下幸之助やネルソン・マンデラ、緒方貞子など、有名なリーダー達のエピソードのなかでも自分自身が最も共感したのは、冒険家のアーネスト・シャクルトン。リーダーとして、命懸けでチームを守る姿から「リーダーは最後まで希望と人を信じ抜く、精神的支柱であらねばならない。私もそうなりたい」と感じさせてくれました。

さらに、Leadership development and Ethicsの最後のアサインメントで、「自分がリーダーとして伸ばしていくために何をするか」という課題がありました。そこで私は、重要なのは「発信力」であると結論づけました。直接管理していない部門を含め、組織全体のマネジメントを行っていくうえで、自身のメッセージをシャープに伝え、組織に浸透させることが重要だと痛感したのです。このnoteで『COO’s room』を始めたきっかけもその強化のためであり、この授業のアサインメントでの宣言が原点です。
自己実現の支柱になる「志」を得た
最後に、自己実現の土台になる大きな学びをシェアしたいと思います。「志は人生の側から考える」。これは安永雄玄先生から教わった言葉です。知識を得て、仲間を見つけ、志を育てるというのが、グロービスの軸ですが、私自身もこの言葉により志を見つけることができました。
強烈な体験から課題意識を持ち、志を見つける......。そんなケースは稀で、多くの人が確固たる志を見つけることができていない。そのような人たちに向けて教授が示してくれたのは、自分の人生を振り返り、あなたの「人生さん」はあなたにどう生きてもらいたいと思って、様々な偶然や苦難、出会いを与えているのか、という問いです。
この問いを念頭に置いて、私の人生を振り返ってみました。リクルートでたまたま不動産事業に配属されて、リクルートの部活の先輩に誘われてGoogleに転職し、闘病を乗り越えて管理職に従事し、母になった。そんな私の「人生さん」は、私に何を成し遂げろと、語りかけているのでしょうか。私が出した答えはこうです。
「ITバックグラウンドを活かした不動産業界の進化」「男女対等な仕組みを実現する会社経営」この二本柱が自身の志である。
不惑の年に、授業を通して人生を振り返り、志が確固たるものになったことで、自己実現に向かうための大きな推進力を得ることができました。ここで得た志を持って、「ITバックグラウンドを活かした不動産業界の進化」のためにFaciloの事業成長に全力を注ぎ、「男女対等な仕組みを実現する会社経営」を叶えるルールメイクに勤しんでいます。
これを読んでくださっているあなたがもし自己実現を目指しているなら、遅すぎることはありません。また、私は自己実現と社会が求める役割が相反しそうでも、自己実現を諦める必要はないと思います。私のこのエピソードがあなたの自己実現の背中を押してくれることを願っています。
💡私が履修した科目一覧
基礎科目
Marketing・Strategy・Human Resource Management・Organization Leadership・Accounting・Finance・
選択科目
Venture Management ・ Venture Capital & Finance ・ Venture Business Planning ・ Social Venture Management ・ Cross Cultural Management
・ Strategic Reorganization ・Design Thinking and User Experience・Technovate for Future Enterprise ・ Business Presentation ・Keiei Dojo ・Essentials of Finance ・Technovate Thinking ・Essentials of Marketing and Strategy ・Essentials of Accounting ・Critical Thinking
💡このnoteのサマリ
・より濃度の高い仕事ができる自分になり、高いアウトプットを出したいという自己実現欲求から、グロービスのMBAを英語で取得することを決意
・出産、子育て、仕事をしながら取得するため、履修計画、予習、アサインメントとレポートのタイミングを事前に設計。英語の家庭教師の協力も得て効率的な履修を行った
・履修中にFaciloの創業メンバーとして実際のスタートアップ立ち上げを経験。学びと実務の相乗効果を実感した
・グロービスの軸である自分の「志」を、これまでの人生から発想して得ることで自己実現の土台を固めることができ、現在のCOOの仕事に役立っている
それではまた、次回のCOO's voice でお会いしましょう!
(文:浅岡純子 編集協力:出川光)
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