【えっせい これでええか⑬】昔の思い出とカレーパスタ
昨日の昼
フードコートの隣の席でカレーを食べている人がいた
あの独特の匂いを嗅ぐと
なぜか無性に食べたくなるな
何か危険な成分でも入ってるんちゃうかといつも思ってまう
案の定
家に帰って作ったのはポークカレー
スーパーで豚肉が安かったから
頭の中も腹もすっかりカレーモードだったので
いつもより大盛りのカレーを一杯食べ
満足して昨日の夜を終えた
……ところが
今日もコンロの上には大きな鍋がデンと居座っている
なぜカレーというものは
いつも作りすぎてしまうのだろう
「一晩寝かせたカレーが美味い」とは言うけれど
2日続けて同じものは少し飽きる
しかもカレー欲は昨日満たしたばかりだ
定番のカレーうどんにしようか
ドリアでもええかと考えながらキッチンを漁っていると
乾燥パスタを発見した。
そういえば……。
専門学生時代に教習所の費用を払うためにバイトをしていた頃のことを思い出した
部活漬けだった学生生活を終えたばかりで
社会に出て初めて自分のポンコツさを知った時期だ
カラオケや居酒屋、ガソリンスタンド
第一印象で「落ち着いている」「しっかりしていそう」とよく言われるのだが
実際は仕事を覚えるのが人の数倍遅く
グラスや皿を何個割ったか分からない
ポンコツだと知った社員さんの顔が怖くなったこともある
今おもえばメンタルも弱く
できないことが続いて諦めてはバイトを転々としていた
そんな中
大阪市内にある小さな喫茶店でバイトをすることに
オフィス街の外れにある
高齢のご夫婦が営むお店
白髪で少しカーネル・サンダースに似た見た目のマスターと
小柄で温厚な奥様だった
恥ずかしい話だが
やはりそこでも最初はオーダーを聞き間違えたり
グラスをこぼすことがあった
また他のバイト同様に怒られるんだろう
呆れられるんだろうと思っていた
だが
マスターは怒った顔なんて一度も見せなかった
「おぼんはもう少し腕に引き寄せて
高さは低く持ってみて」
「バッシングするときにちょっとずつ練習してみ」
私の癖を見た上で
どうすればできるようになるかを具体的に教えてくれたのだ
そのおかげか落ち着いて動けるようになり
1ヶ月過ぎたあたりからはミスも激減した
常連のおっちゃんに
「最近はこぼさんくなったな」と冷やかされるのが
密かに嬉しかった
その店でよく出してもらっていたのが
まかないの「カレーパスタ」だった
あまりもののカレーとパスタを掛け合わせた
マスターの気まぐれメニュー
不器用な私はフォークとスプーンで上手く巻けず
大変汚い食べ方をしていた。
マスターは笑いながら「こうやってみー」とフォークとスプーンを取り出して見せてくれた
言われた通りスプーンの上でフォークを回すと
綺麗に巻けた
19歳にして人生で初めて
フォークとスプーンを使った食べ方ができた瞬間だった。
できることが増えるのは
どんな些細なことでもやっぱり嬉しい
卒業まで1年半も続き
たくさんできることが増えたとおもう
ふとそんなことを思い出しながら
お湯を沸かしてパスタを茹でる
一晩寝かせたカレーと絡め
あの時と同じようにスライスチーズをトッピングした
カレーの味は違うが
懐かしのカレーパスタの完成だ

マスターは高齢だったこともあり
私が就職した年にはお店をたたんだらしい
あの時のマスターや奥さんの優しさのおかげで
社会人になっても失敗することへのためらいはなくなった気がする
相変わらず不器用で失敗だらけの毎日だが
「上手な人を見つけて教えてもらって、できるようになればええか」と思えている
元気にしているやろか
スプーンの上でフォークを回しながら
そんな懐かしいことを思い出した夜だった
