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ヒューマンドラマ小説|サンクチュアリが見えたら(30)|事件は台所で起きている

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 田舎の古民家シェアハウス『サンクチュアリ』。
 住人は老若男女6人と猫が一匹。

 住人の一人、雨宮あめみや茉莉花まりかは40代シングルマザー。小学生の男の子が一人いる。茉莉花は、ある日サンクチュアリへの帰宅途中で男性と揉めていた50代の元モデルの女性、夏見なつみゆかりをサンクチュアリに誘う。

 茉莉花もまた、そうしてサンクチュアリに迎えられた一人だった——

 茉莉花をサンクチュアリに誘った野路菊のじぎくさくらは、過去に不倫経験のある70代女性。その他、神野じんの宗四郎そうしろうは30代の同性愛者の男性、木南きなみはるかはお金のない現役大学生。

 仕事、恋愛、家族——

 これは、それぞれがそれぞれに、生き方に悩みながらも、少しずつその答えを見つけていく物語。


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事件は台所で起きている


 その日、サンクチュアリの冷蔵庫は、いつもより少しやかましかった。裏から、まあまあの音量でブーンという音がする。

 台所で、「ねえ、この冷蔵庫、ちょっとヤバくない?」と紫が言うと、隣で茉莉花が「私もそんな気がします」と言う。

 あれから、紫と茉莉花はこうして2人で台所に立つことが増えた。今日は、2人で昼ごはんにうどんを作ろうとしていたところ。

「なんだ? なんかあったか?」

 ふいに、2階から顔を出した宗四郎が、台所を覗いた。

「ああ、宗四郎。あんた、絵はいいの?」と言ったのは紫。冷蔵庫の裏を覗いていた体勢から、宗四郎に向き直る。

「いや、まだ途中。ちょっと煮詰まってて、コーヒーでも淹れようかと思って下りてきたんだけど——」

「なんだ? 冷蔵庫がどうかしたのか?」と台所に回ってくる。

「いや、それが。冷蔵庫から変な音がするの」

 茉莉花が言う。

「変な音?」と宗四郎が耳を澄ます。

「確かに。いつもより音がデカいな」
「故障かしら? どう思う? 宗四郎」
「まあ故障だろうな。いずれにせよ、俺が聞いてる通りなら、この冷蔵庫はもう15年使ってるらしいからな。消費電力のことも考えると、そろそろ替え時だろう」と宗四郎が言う。

 紫はそれに、うーんと頭を捻り、「サンクチュアリの会の収支は?」と言った。

「今月の頭の段階で、積み立てが16万弱です」と茉莉花が言う。

「冷蔵庫買ったら、積み立てが無くなっちゃうわね」
「ああ、そういうことなら大丈夫だ」
「え?」
「冷蔵庫なら、俺が探してくる。ただその代わり、茉莉花や紫にも、運ぶのを手伝ってもらうことになりそうだけどな」



「いいの? 車だって——」
「車は、知り合いの車屋が安くで譲ってくれたんだ。個人的にちょっと貸しもあって。冷蔵庫は島のツテで探してみる。俺、町おこしの手伝いだったりで知り合いも多いから」

 宗四郎は言って、「早速連絡しとくわ」とスマホをいじる。

「ありがとう。助かるわ」と言ったのは紫だ。特に、まだあまりサンクチュアリに貢献できていない身としては、今このタイミングで積み立てが無くなるのは何となく心苦しい。

「それで? コーヒー淹れに来たって?」
「え? ああ——」
「いいわ。ささやかだけど、お礼に私淹れるから」と紫が言う。

「そうか? サンキュ」と宗四郎が言って、居間に回り、ちゃぶ台に腰掛けた。

「今日、葉は学校だっけか?」
「そう。登校日で午前中だけね。もうすぐ帰ってくるはずよ」と茉莉花が返事をする。

「夏休みの宿題は大丈夫だったか?」
「ああ。うん。バッチリ。今日、習字の宿題も出してくるはず。本当ありがとうね。助かった」
「いや、まあお安い御用」

 宗四郎は、スマホに視線を落としたまま言う。

「はい。お待たせ」と紫が、出来上がったコーヒーを宗四郎の前に置く。宗四郎が「サンキュ」と言って、コーヒーを受け取った。

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【1182文字(あらすじ、その他除く本文のみ)】

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