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⑱震災と海の記憶【実体験シリーズ】【第ニ章】見えない世界との交差

ー天使のラジオー
【実体験シリーズ】【第ニ章】

夏になると、海水浴の映像が流れ海水浴客が
楽しそうにテレビのインタビューに答えている。

そのたびに、私は思う。

みんな、忘れてしまったのか。

津波にのまれ、
まだ見つかっていない人もいるというのに。

経験していないから、他人事なのか。。。

2011年3月11日 14時46分


私は宮城県にある自宅にいた。

携帯電話の緊急地震速報が鳴り、
その直後、激しい揺れに襲われた。

上下左右、めちゃくちゃに揺れ、
家具は固定していたはずなのに、
何の意味もなかったかのように倒れていく。

引き出しはすべて開き、中身が飛び散り
重たいオーブンが宙を飛び、床に叩きつけられた。

外からは、
悲鳴や泣き声、助けを求める声が聞こえてくる。

どれくらい揺れていたのか、分からない。
冷静でいられる状況ではなかった。

娘の通う小学校は、車で30分の場所。
一刻も早く迎えに行かなければならない。
そう思い、パニックのまま車に乗り込んだ。

携帯電話はほとんど繋がらない。
電気も、ガスも、水道も止まった。
テレビは見られず、ラジオだけが頼りだった。

車を走らせながらラジオをつけると、

「津波が来ます。車から降りて避難してください」

というアナウンスが、繰り返し流れていた。

どこに逃げたらいいのかも分からない。

ただ、娘に会いたい一心だった。

外を見ると、折れた電柱、崩れた建物。

遠くには煙が上がり、
信号機は壊れ、すべて消えている。

道路は混乱していた。
譲り合う余裕などなく、誰もが必死だった。

路上には、
座り込んで泣いている人、
家族と抱き合う人、
毛布にくるまる人。

余震は止まらなかった。

携帯電話には、
震度5以上のエリアメールが何十通も残っている。

車を走らせていると、突然、空の様子が変わり、
大粒の雪が降り始めた。

電気もガスもない中での寒さ。

夜になると、
何も見えないほどの暗さに包まれた。

灯りがないだけで、
世界はここまで暗くなるのかと思った。

私は、地震が起きる前に分かってしまうせいで、
地震が本当に苦手だ。

寒さと暗さ、終わらない余震。

不安で、精神状態を保つのも難しくなっていった。

そんな中、知人からの連絡で、近くの海岸に多くの遺体があがっているという情報が入る。

ラジオの情報だけでは実際には何が起きているのか分からない。

見たことのない光景だった。
すべてが壊れていた。
津波が引いた後はあたり一帯が、
嗅いだことのない臭いで満ちていた。

食料を確保しようと、近くのコンビニへ向かった。

ガラスは割れ、
店内は足の踏み場もないほど荒れていた。
それでも、店員は必死に働いていた。

冷蔵庫の中身は散乱し、
酒瓶が割れ、
店内には酒の匂いが充満していた。

地面のうなりが遠くから聞こえ、
大きな余震が絶え間なく続いていた。

過呼吸になりそうになった。

家の中に入ること自体が危険で、
その日は家族で車の中で過ごした。

三日後、ようやく電気が復旧した。

テレビを見て、あらためて被害の大きさを知った。

都市ガスは一ヶ月以上、復旧しなかった。

食料は不足し、どこへ行っても行列ができていた。
その中に、全身泥だらけの高齢女性が並んでいて
津波から生き延びた人だと、すぐに分かった。

あの時、みんな生きることに必死だった。

助け合う人もいれば、
値段をつり上げる店もあった。

人の優しさも、醜さも、すべてが見えていた。

報道されていないことも、たくさんある。

本当の意味での復興が終わっているとは思えない。

15年経った今も、私は海水浴には行けない。

あの日のこともある。
でも
それだけじゃない。
海に行くとどうしても感じてしまうものがある。

何もないはずの場所に、確かに“いる”もの。
それが、今も変わらずそこにある気がしている。

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