⑨動き出す壁【実体験シリーズ】【第ニ章】見えない世界との交差
ー天使のラジオー
【実体験シリーズ】【第ニ章】
動くはずのないものが、
動いて見えることがある。
それが当たり前だと思っていた。
だけどそれは、誰にでも見えているわけではなかった。
部屋にいると、
カーテンが風もないのに揺れて見える。
レンガ張りの壁は、
まるで列車のように横へ流れていく。
天井の電気は、そこに固定されているはずなのに不規則に動いて見える。
壁を見ていると何もなかったはずの場所に、
模様のようなものが浮かび上がってくる。
その中でも一番はっきり覚えているものがある。
動いている壁に、突然光の点線が現れた。
それは円を描くように広がり、
やがて、ひとつの入口のような形になる。
その先は、
どす黒い雲でできたトンネルのようで、
壁の向こう側へと果てしなく続いていた。
見ていると今にも吸い込まれそうになる。
「近づいてはいけない」
そう思いながらも目を離すことができなかった。
あれは何だったのかは分からない。
ひとつ言えるのは
見えているこの世界だけが、
すべてではないということ。
見えないものに囁かれ、導かれ、
気づかないうちに選ばされている。
数字に意味を感じ、光に惹かれ、
何かに導かれるように、神社や仏閣へ足を運ぶ。
それが正しいことのように思わされ、
知らないうちに、何かを背負っている。
人生は、必ず落ちる時がある。
上がれば、落とされる。
それを繰り返す。
そこから抜け出す方法はあるのか。
生きているうちに、気づくことはできるのか。

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