イギリス海軍による敵船拿捕・尋問記録(Prize Papers Online)De Gruyter Brill Primary Sources
(イギリス海軍のスループ艦HSSアリエル号は、ブルターニュ地方のドゥアルネーズ湾に停泊していたが、海上封鎖からの脱出を試みる途中で事故が発生。乗組員はフランス軍に捕虜として捕らえられる。)
この20年間の戦争中、ブルターニュ沿岸で多くのイギリス海軍の船が沈没し、その一部は捕獲された。ブレストの当局はこのような状況に慣れていた……(捕虜となった)海軍士官・将校の正確な名簿を作成する任務を負った兵站将校は、捕虜となった将校らの祖母の旧姓、出生年月日などを含む名簿を作成する際に、奇妙な回答に当惑した。
「信じられません、艦長殿」と彼は言った。「貴官の将校のうち一人を除いて、全員がアン女王の孫だとは」
「残念ですが、アン女王はすでに亡くなられました」とオーブリー艦長はしかつめらしく答えた。「したがって、ご婦人の名誉を守るためにも、この点についてのコメントは控えさせていただきたい」
…「まったく、イギリス人は我々フランス人を馬鹿にしているのかね?両親の名前を尋問したところ、その答えがモロッコの皇帝、クリーピング・ジェンニム、ウォーリックのガイ、ジュリアス・シーザーとは…冗談にもほどがある。我々フランス当局に敬意を払うよう、艦長殿から言っていただかないと」
映画「マスター・アンド・コマンダー」でも知られるPatrick O'brienの帆船小説シリーズの中の1冊、'The Surgeon's Mate'に、こんなユーモラスなシーンがあります。もちろんこれはフィクションですが、捕虜になった兵士や下士官、将校に細かな身元の聞き取りをしていたイメージが浮かぶ部分です。
Prize Papers Onlineシリーズについて

本シリーズは、英国国立公文書館(The National Archves, Kew)に所蔵されている海事裁判所(High Court of Admiralty)関連文書群の一部であり、海事史研究の分野において最も価値のあるアーカイブのひとつと広く認識されています。
イギリス海軍は数多くの海戦などを通じて敵船やその同盟国(とみなされた国)の船を拿捕しましたが、その過程で得られた膨大な数の拿捕船(いわゆるPrize)に関する文書が保存されています。対象となる船舶は、オランダ、フランス、スペイン、ポルトガルに加え、デンマーク、スウェーデン、ドイツ、イタリア、アメリカなど多岐にわたります。各船舶の記録には、少なくとも1点、英語の文書が含まれており、それは合法的に拿捕された船舶の船長や乗組員に対して、戦時捕獲裁判所が行った尋問の記録(英訳)です。
この膨大なシリーズは、海事史研究者だけでなく、社会史・経済史・政治史・文化史の研究者にとっても極めて重要な資料です。イギリス当局は、船の出発地、航路、目的地、トン数、積荷、乗組員に加え、乗組員の国籍、忠誠先、移住歴などについて詳細に尋問しました。これらの回答は英語に通訳され、専門の書記によって記録されました。その結果、標準化された形式で英語による豊富な情報が残されており、この資料群の国際的な性格ゆえに、さまざまな海洋国家間の比較研究も可能となっています。
Brill社はこれらの尋問記録をデジタル化し、世界中の研究者がオンラインで利用できるようにしました。「Prize Papers Online」では各尋問の文書を提供するとともに、特に研究関心を集める14の質問に対する回答を転記・データベース化しており、検索も可能です。地名は米国議会図書館(Library of Congress)の標準に基づいて統一されています。この資料群は扱う戦争の範囲が広いため、17世紀後半から18世紀末までのイギリスが関与した戦争ごとに、3つのコレクションに分けられています。
イギリス海軍による敵船拿捕・尋問記録 Part 1:アメリカ独立戦争および第四次英蘭戦争 /Prize Papers Online 1: American Revolutionary War and Fourth Anglo-Dutch War (KBR-021)

本コレクションには、アメリカ独立戦争および第四次英蘭戦争(1775~1783年、1780~1784年)の間に拿捕された船舶の乗組員に対する約7,000件の尋問記録が収録されています。個別の尋問(2~3ページ、場合によっては6ページ以上にわたることも)の画像が閲覧可能となっています。また、特に研究関心を集めた14の質問に対する回答は転記され、検索可能なデータベースとして整備されています。
アメリカ独立戦争(1775年~1783年)は、当初はイギリスとアメリカ13植民地との間の戦争として始まりましたが、次第に、イギリスと、独立を宣言したアメリカ合衆国・フランス・オランダ共和国・スペインなどの連合勢力との戦争へと拡大していきました。
第四次英蘭戦争(1780~1784年)は、イギリス王国とオランダ共和国との間の武力衝突であり、アメリカ独立戦争と間接的に関係しています。この戦争は、イギリスの敵国とオランダが行っていた貿易の合法性とその手法をめぐる両国間の対立によって引き起こされました。※Handwritten(手書文書)のため、文書内のフルテキスト検索はご利用いただけません。
■船名のアルファベット順に整理されたアーカイブ(一部ご紹介)
Aimable Francoise
Aimable Magdelaine
Aimable Nannette
Aimable Victoire
Ajax
Albertus
Albion
Aldeona
Alert
…(中略)
Vryheid
Vryheijt
Vulcain
Vulture
イギリス海軍による敵船拿捕・尋問記録 Part 2:七年戦争およびオーストリア継承戦争 Prize Papers Online 2: Seven Years' War and War of the Austrian Succession (KBR-022)

本コレクションには、オーストリア継承戦争および七年戦争(およそ1739~1763年)の期間に拿捕された船舶の乗組員に対する約6,000件の尋問記録が収録されています。個別の尋問(2ページ、3ページ、場合によっては6ページ以上に及ぶことも)の画像が閲覧可能であり、特に研究関心を集める14の質問に対する回答は転記され、検索可能なデータベースに保存されています。
オーストリア継承戦争(1740~1748年)は、ハプスブルク家の領土に対するマリア・テレジアの継承問題をめぐって、ヨーロッパの主要国の大半を巻き込んで勃発しました。
一方、七年戦争(1754~1763年、主に1756~1763年の7年間)は、当時のほとんどの列強が関与した世界規模の戦争であり、植民地支配・貿易権益の衝突や、神聖ローマ帝国内における領土および覇権争いが主な原因となりました。※Handwritten(手書文書)のため、文書内のフルテキスト検索はご利用いただけません
■船名のアルファベット順に整理されたアーカイブ(一部ご紹介)
Caesar (1)
Caesar (2)
Caiemand
Carls Hamms Warf
Castor
Catharina (1)
Catharina (2)
Catherina et Cecilia
Cesar
Charitas
Charlotte
Charming Molly
イギリス海軍による敵船拿捕・尋問記録 Part 3: 第一、二、三次英蘭戦争とスペイン継承戦争 Prize Papers Online 3: First, Second and Third Anglo-Dutch War and War of the Spanish Succession (KBR-023)

本コレクションには、第一次・第二次・第三次英蘭戦争(およそ1652〜1674年)およびスペイン継承戦争(およそ1701〜1733年)の期間に拿捕された船舶の乗組員に対する約4,000件の尋問記録が収録されています。個別の尋問(2~3ページ、場合によっては6ページ以上にわたることも)の画像が閲覧可能となっています。また、特に研究関心を集めた14の質問に対する回答は転記され、検索可能なデータベースとして整備されています。
英蘭戦争(第一次:1652~1654年、第二次:1665~1667年、第三次:1672~1674年)は、17〜18世紀にかけてイングランド(のちのイギリス)とオランダとの間で繰り広げられた、制海権と貿易路の支配をめぐる一連の戦争です。
なお、第四次英蘭戦争(1780〜1784年)については、『Prize Papers Online 1』に収録されています。
■船名のアルファベット順に整理されたアーカイブ(一部ご紹介)
Young Tobias
Young Victoria
Young Widow
Young Yanger
Young Younger
y Sactia ntra. Senra. Del Augua Saneta Y Sn. Diego
Yvon Chaterine
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