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ご縁を想う 【S君】

20代のとき働いていた職場に、
S君というイケメンがいた。
韓国の俳優さんみたいな見た目で、とても人気だった。

私は、S君に、仕事を教える立場だったので、接する時間が長かった。

S君は、いろんな女の子と噂になっていた。
女の子から相談されるたびに、「やめといた方がいいよ」と話すけれど、誰も聞く耳持たない。
内心、見た目しか良くないのだけどな、と思っていた。

職場の飲み会の帰りに、

「湖畔さん、行きましょうか。ホテル」

と、にっこり笑いながら誘われた。

「はい。今からもう一軒、飲みに行きます。
一人で」

と、にっこり笑いながら返した。
プライベートでは、関わりたくない。

しかし、こんなに軽く誘ってんのか。
ヤバいな。
仕事、もう少し仕事を頑張ってくんねぇかな。

と、思ったけど、黙っていた。

S君は、手広くやりすぎたせいで、立場が危うくなっていた。そりゃそうだ。

「湖畔さん、どうしたら良いのでしょうか?」

半泣きで相談されたときに、勘弁してくれと思った。自業自得にも程がある。

「私の知らないところで遊んでくれと言ったじゃん!」

仕事で挽回するしかないよ、頑張れ。
と思う気持ちと、

なんで、私が尻拭いみたいなこと…。

と、モヤモヤしていた。

異動で、S君とは接する機会が無くなった。
私は、ホッとした。
泣いてる女の子を見たくないし、S君の面倒をみるのも嫌だったから。

私の退職のとき、S君から長文のメッセージをもらった。

仕事以外のことでも、大切なことを教えてもらいました。
湖畔さんに出会えて良かったです。
なんたらかんたら。

仕事のことしか教えていなかったと思う。

でも、S君、こんな心のこもったメッセージを書けるようになったのか、と、ちょっと嬉しかった。
それと、S君のチャラさの中にある、寂しさみたいなものが見えた気がした。

今さら反省している。
ちゃんと向き合って、ひとの心を大切にするということを伝えられたら良かったのかな、と。

うそ。

その時の私も、そんなことよく分かっていなかった。そんなキャパもなかった。
自分を守るのが、精一杯だった。

向き合うって、結構怖いことだと思う。
自分と相手の見なくてもいいところが、見えてしまうかもしれないから。

でも、それでも向き合いたいな。今の私は。

向き合っているその時に生まれる何か。
それを知りたい、大切にしたい。

先のことは分からないからこそ、
「今」を大切にしたい。

それ以外は、時間と共に流れていく気がする。
流れてもいいと思っている。

ああ、でも。
思えば、色んな人から、よく手紙やメッセージをもらっていた。
自分が気付いていなところで、何か出来ていたのかもしれない。

それを言葉で伝えてくれることの、ありがたさ。
その時々で、もっとちゃんと受け取れば良かった。

そう思っているから、今あるご縁を、ちゃんと受け取りたいのかもしれない。

S君、元気にしてるかな。

ちょっとモデルに使わせてもらったついでに、
色んなこと、思い出しちゃった。

「今から、もう一軒行くから、一緒に行く?」

今の私なら、言えるかな。

そして、説教してやる(笑)

なーんてね。