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世界の偉人シリーズ|第20話 五島慶太 東急グループ創始者・鉄道で街を創り人の流れを変えた男

日本の私鉄経営史には、
巨大な人物が何人かいる。
しかしその中でも、

最も「執念深く」、
最も「攻撃的」で、
最も「都市そのもの」を作ろうとした男。

それが五島慶太である。
後に人々は彼を、「強盗慶太」と呼んだ。

もちろん悪口でもある。
しかし同時に、それは恐怖と畏敬だった。
なぜなら彼は、単なる鉄道会社経営者ではなかった。

・鉄道
・百貨店
・学校
・住宅地
・観光
・文化施設

を全て繋ぎ、

「人がどう生きるか」

そのものを設計しようとしていたからである。
現在では当たり前になった、

・郊外住宅地
・私鉄文化
・駅前商業施設
・沿線ブランド
・ベッドタウン

その巨大構造を、東京で完成させた中心人物の一人だった。


五島慶太
「交通を制する者が都市を制する」を実践した男。
都市私鉄モデルを構築した。
1882-1959|東急グループ創始者。


【信州の貧しい農家に生まれる】

1882年、長野県青木村に生まれる。
裕福な家ではなかった。
だから彼は、幼少期から強烈に現実を見る。

金がない。
地方は弱い。
学歴がなければ上へ行けない。

そのため彼は、異常なほど勉強へ執着した。
特に彼は、

「貧乏は頭で突破するしかない」

と考えていたと言われる。
後年の彼が、
超合理主義者になった背景には、
この苦学時代が大きく影響している。


【官僚時代に“交通支配”を学ぶ】

苦学の末、東京高等商業学校へ進学。
後の一橋大学系統である。

さらに卒業後、逓信省へ入省。
ここで彼は、

日本の交通行政、
鉄道政策、
都市形成

を徹底的に学ぶ。
これが極めて大きかった。

なぜなら彼は、この時点で既に、

「鉄道は単なる輸送ではない」

と気づき始めていたからである。

人は、移動のために電車へ乗るのではない。
生活のために移動する。
つまり、

・どこに住み
・どこへ通勤し
・どこで消費し
・どこで遊ぶか

を押さえれば、人の流れそのものを作れる。
この感覚が、後の東急帝国へ繋がっていく。


【なぜ鉄道へ入ったのか】

当時の鉄道会社は、今ほど人気産業ではなかった。
しかし五島は違った。
彼は鉄道を、

「人口導線ビジネス」

として見ていた。
つまり、

鉄道
 ↓
人口移動
 ↓
住宅需要
 ↓
商業需要
 ↓
教育需要
 ↓
都市形成

という流れを見ていたのである。
ここが普通の鉄道経営者と決定的に違った。


【小林一三を徹底研究していた】

関西には既に、阪急を作った小林一三がいた。
五島は、この阪急モデルに強い衝撃を受ける。
特に彼が驚いたのは、

「鉄道は運賃だけでは儲からない」

という発想だった。
阪急は既に、

・住宅地
・百貨店
・学校
・娯楽
・宝塚

を繋ぎ、

「沿線住民そのもの」

を生み出していた。
五島はこれを徹底研究する。
そして理解した。

これは鉄道会社ではない。

「都市創造事業」

だと。


【阪急モデルを東京で巨大化した】

面白いのは、五島が単なる模倣者ではなかった点だ。
彼は阪急モデルを東京向けに再設計し、
さらに巨大化した。
特に象徴的なのが、

・田園調布
・渋谷
・東横百貨店
・田園都市線構想

である。
彼は、

「郊外に上質な住宅地を作れば、人は移住する」

と考えた。
そのため、

・学校
・商業施設
・交通
・文化

を先に整備する。
これは現在のニュータウン戦略そのものだった。


【「学校」を先に作った】

五島が特に重視したのが教育だった。
なぜなら彼は、
教育が人口を動かすことを知っていたからである。

「学校があれば家族が移住する」

そのため彼は、

・学校誘致
・大学設立
・教育文化都市化

を積極的に進める。
現在の東京都市大学系列も、その流れの中にある。
今でも東急沿線には、

・教育熱心
・上品
・落ち着いた住宅地

というブランドがある。
これは偶然ではない。
創業者が、最初から沿線文化を設計していたのである。

因みに、五島より先に学校誘致をした先駆者がいた。
それが堤康次郎(西武鉄道創業者)である。
堤は「国立」を創った。(一ツ橋大学を誘致し学園都市を形成)
但し堤の目的は、学校で街を形成し不動産価値を上げることが目的だった。
これに対し五島は、鉄道会社が学校を呼ぶスタイルだった。
ここに思想の違いがある。


【渋谷を巨大都市へ変えた】

現在の渋谷は、世界的ターミナルである。
しかし当時は、そこまで大きな街ではなかった。
五島は、ここに巨大な可能性を見る。
そして、

・鉄道集中
・ターミナル化
・百貨店
・文化施設
・住宅輸送

を一気に投下する。
その結果、

「新宿でも銀座でもない、巨大私鉄文化圏」

が誕生する。
現在の渋谷文化の根底には、東急の存在がある。


【「強盗慶太」と呼ばれた理由】

しかし彼は、文化人タイプではなかった。
むしろ極めて攻撃的だった。
特に有名なのが、猛烈な私鉄買収である。
当時の関東には、

・小規模私鉄
・資金不足会社
・分断された路線

が乱立していた。
五島は考える。

「全部まとめれば、巨大経済圏になる」

彼は、

「関東私鉄統一構想」

に近いものを描いていた。


【大東急】

その結果、東急は、

・京王
・小田急
・京急
・相鉄

などを含む、巨大私鉄帝国へ拡大していく。
これが、

「大東急」

である。
営業距離は、当時世界最大級とも言われた。
しかしそのやり方は強引だった。
そのため人々は彼を、

「強盗慶太」

と呼ぶようになる。
だが彼は気にしなかった。
なぜなら彼の頭の中には、

「交通を制する者が都市を制する」

という巨大構想があったからである。


【GHQによる解体】

しかし戦後、GHQは巨大独占を問題視する。
その結果、大東急は解体させられた。

・京王
・小田急
・京急

などが独立していく。
もし解体されなければ、
関東私鉄の多くが、
東急になっていた可能性すらある。


【五島慶太という人物】

彼は非常に特徴的だった。

・執念深い
・超合理主義
・教育重視
・数字重視
・長期視点
・権力闘争に強い

感情より構造を見る人だった。
鉄道をロマンで見ない。
人口導線として見る。
そこに彼の恐ろしさがあった。

さらに面白いのは、
五島が「陸」だけを見ていなかった点である。
彼は後に、航空事業にも強い関心を持つ。

その流れの中で生まれたのが、
東急系の 東亜国内航空 だった。
これは単なる新規事業ではない。
五島が追い求めていた、

「巨大モビリティ・生活プラットフォーム」

構想の延長線上にあった。
彼はかなり早い段階で、

・国内旅行需要
・ビジネス移動
・観光大衆化
・高速移動社会

が到来すると見抜いていた。
つまり彼は、鉄道だけでなく、

「人の移動そのもの」

を支配しようとしていたのである。

鉄道で都市を繋ぎ、
百貨店で消費を繋ぎ、
住宅で生活を繋ぎ、
そして航空で全国を繋ぐ。

これは現在で言えば、

・交通
・観光
・不動産
・商業
・ライフスタイル

を統合した巨大プラットフォーム構想に近い。
実際、五島はかなり早い段階で、

「空の交通は巨大市場になる」

ことを見抜いていたと言われる。

ここが、彼のスケールの大きさだった。


【東急に残った文化】

現在の東急グループにも、
創業者の人格が色濃く残っている。

・街ごと作る
・長期視点
・沿線価値重視
・教育文化重視
・生活品質重視

東急沿線には、
独特のブランド感がある。
それは、創業者自身が、

「沿線価値そのものを上げれば、
鉄道利益は永続する」

と考えていたからである。


【戦っていた相手】

五島慶太が戦っていたのは、
他の私鉄会社だけではない。
本当に戦っていたのは、

・人口分散
・都市未整備
・バラバラの交通網
・郊外の未開発
・輸送業という古い鉄道概念
・「鉄道は運ぶだけ」という常識

だった。
だから彼は、

鉄道を敷き、
住宅地を作り、
学校を誘致し、
百貨店を建て、
文化施設を作り、
巨大ターミナルを形成した。

彼がやっていたのは、

「電車経営」ではない。
「都市設計」だったのである。


【これは戦略だったのか】

結果だけ見れば、東急グループ成功譚。
しかし中には、かなり強い型がある。

・交通を人口導線として見る
・住宅地を先に作る
・学校で人口を呼ぶ
・駅を消費空間へ変える
・沿線ブランドを設計する
・成功モデルを研究し巨大化する
・鉄道を都市支配装置として使う
・長期で沿線価値を育てる

極めて東急らしい構造である。
しかも面白いのは、
彼が単なる鉄道好きではなかった点だ。
普通の鉄道会社なら、

線路
 ↓
運賃
 ↓
利益

を見る。
しかし五島は違った。
彼は、

人口移動
 ↓
住宅
 ↓
学校
 ↓
消費
 ↓
文化
 ↓
都市形成

を見ていた。
だから彼は、

鉄道
 ↓
百貨店
 ↓
学校
 ↓
住宅地
 ↓
ターミナル
 ↓
沿線ブランド

を一体化した。
つまり彼は、

「人の生活導線」

そのものを設計していたのである。
さらに特徴的なのは、
彼が非常に合理主義だった点だ。

成功モデルを分析し、
東京向けに再設計し、
より巨大化する。

これは現在の巨大プラットフォーム企業にも近い。
だから東急は、単なる私鉄会社では終わらなかった。

「都市支配型グループ」

へと進化したのである。


【まとめ】

五島慶太は、ロマン型の経営者ではなかった。
むしろ極めて冷徹で、極めて構造的だった。
だから彼は、

・人口
・交通
・住宅
・教育
・消費

を全部繋げた。
その結果、

郊外住宅地、
私鉄文化、
沿線ブランド、
巨大ターミナル都市

が生まれていく。

現在の東京の生活様式そのものに、
彼の思想は深く埋め込まれている。
周囲からは、

「強引すぎる」
「買収屋だ」

と批判された。
しかし彼は止まらなかった。
なぜなら彼には、

「交通を制する者が、都市を制する」

という確信があったからである。
そして実際に彼は、
渋谷を巨大都市へ変え、
東急沿線という巨大生活圏を作り上げた。
五島が残したのは、単なる鉄道会社ではない。

「都市そのもの」

だったのである。


次回予告


世界の偉人シリーズ|第21話 江戸英雄
三井不動産・中興の祖


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