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10-2|人が命を預けた大将 -金・立場・合理性を越えた判断- (2/3)

人が従うのは報酬ではなく「扱われ方」
-蒲生風呂-


戦国武将の一人、蒲生氏郷が、
まだ近江・日野を治めていた頃の話です。

若くして城持ち大名となった氏郷は、
家中を固めるために多くの家臣を抱えました。
しかし、所領は小さく、収入は限られている。

そのため、
譜代の家臣に対しても、
十分な恩賞や金銭を与えることができず、
常に苦しいやりくりを強いられていました。


武功に報いる

ある日、武功を立てた家臣に対し、
氏郷はこう語ります。

武功を立てたお主には
本来、所領や金で報いたい。

しかし、今の我が身にはそれがない。

せめて、お主の労を労いたい。
明日、我が屋敷で酒宴を開こう。

明日は主従を忘れ、
共に楽しもうではないか。

この言葉に、家臣は胸を打たれ、
翌日、氏郷の屋敷へ馳せ参じました。


屋敷に到着すると、
氏郷自ら家臣を出迎え、こう言います。

よく来た。
まずは風呂に入り、疲れを癒してくれ。

言われるまま家臣が風呂に入ると、
釜の方から、氏郷の声が響きました。

風呂加減はどうだ?
ぬるくはないか?

家臣が「少し温いようです」と答えると、
氏郷はこう返します。

そうか。暫し待て。薪を足そう。

家臣は当然、
下人に命じるのだろうと思いました。

しかし、
ふと格子窓から外を覗くと、
そこにいたのは――

煤で顔を黒くし、汗を流しながら、
薪を割り、釜に焚べている氏郷
でした。


その瞬間、
家臣の涙腺は崩壊します。

涙が止まらず、
しばらく風呂から出ることができなかったといいます。

以来、蒲生家では、
「氏郷が沸かした風呂に入ること」が、
何よりの恩賞となりました。

金でも、所領でもない。
人として、どう扱われたか

それが、
家臣の心を完全につかんだのです。


組織の心理

これは、現代の組織でも同じです。

毎日、
「数字を上げろ」
「結果を出せ」
と叱咤する社長がいる一方で、

新規契約を取って帰社した部下に、
満面の笑みで社長はこう言います。

いやぁ、ご苦労。
よくやった。
本当にありがとう。

そして、
強く手を握る。

部下は、
その握手をもう一度もらいたくて、
また頑張ります。


人は、
金だけでは命を懸けません。

覚悟を持って戦い、
人として向き合ってくれる大将
に、
命を預けるのです。

覚悟を決めて、
判断から逃げない大将のもとには
金がなくても、人は集まる。

それが、
人が本気で従う組織の原理です。


次は、
現代の経営者は何をすべきか
-人は「正解」ではなく「判断」を預けている-
について説明します。


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