B Corp取得企業3社に聞いた。認証の先にある「非財務資本」と事業のこれから
こんにちは、ファブリックのプログラムディレクターの柳です。
つい先日、新たにB Corpを取得した3社によるトークセッションを含む交流会が弊社のオフィスで行われました!
登壇したのは、窓・ガラスを通じて住環境の改善に取り組む企業、障害福祉領域で事業を展開する企業、そしてロボティクスで社会課題の解決を目指す企業。それぞれ業種も規模も異なる3社ですが、共通していたのは、「売上や利益だけでは測れない価値を、どう経営に組み込むか」という問いに向き合っていることでした。
今回は、各社のB Corp取得の背景やプロセス、取得後の変化、そして質疑応答で見えてきた実践上のリアルをまとめてみました。

1.窓から日本を変える。住まいの視点からB Corpに向き合う
最初の登壇企業は、ガラスやサッシを扱う老舗企業マテックスさん。(スピーカーは広報・PR担当中川 修平さん)
1928年創業、2028年には100周年を迎える歴史ある会社です。メーカーから仕入れた窓・ガラス製品を、地域の販売店や工務店へ届ける流通の立場にありながら、単なる“当たり前の存在”ではなく、「窓の価値に気づいてもらえる存在」でありたいと語っていました。
特に印象的だったのは、窓が建物の断熱性能において非常に大きな役割を持つという話です。冬は暖房で温めた熱の多くが窓から逃げ、夏は外からの熱が窓から入り込む。そうした現実に対し、高性能ガラスや内窓の普及を通じて、エネルギー使用量の削減やCO2排出の抑制に貢献していく。
同社は、こうした事業の意義を「窓から日本を変えていく」というビジョンで表現していました。
B Corp取得のきっかけは「非財務資本」への問い
同社がB Corp取得を目指した背景には、財務資本だけでなく、人的資本や知的資本、社会関係資本といった非財務資本をどう捉え、どう伸ばしていくかという問題意識がありました。
これまで自社で積み重ねてきた取り組みが、社会的な潮流や時代の方向性と合っているのか。それを体系的に確認するためのフレームとして、B Corpが適していると感じたといいます。
また、生活者とのコミュニケーションを強化したいという思いも、取得の後押しになったそうです。これまで主な顧客は販売店や工務店でしたが、これからはその先にいる生活者の視点をより重視していく必要がある。その文脈で、B Corpのコミュニティや考え方が大きな学びになると感じたとのことでした。
社員とコミュニティへの投資が評価につながった
取得プロセスでは、従業員やコミュニティに関する取り組みが高く評価されたそうです。たとえば、復興支援の一環としての自画像教室、自己肯定感を育むコーチング型研修、読書会、外部講師を招いた連続講座など、単なる福利厚生にとどまらない、社員の内面や関係性を豊かにする活動を継続してきたことが紹介されました。
コミュニティ面でも、取引先を招いたイベントや、学生向けのコンテスト、自治体との連携など、事業の周辺にある多様なステークホルダーと関係を築いてきた実績があります。
今後は業界全体の循環にも関わっていく
今後のテーマとして挙げられたのが、ガラス業界における水平リサイクルです。窓ガラスは多くがオーダーメイドであり、単純な再利用が難しい領域です。それでも、メーカーだけでなく、流通の中間に位置する企業も含めた生態系全体で取り組む必要がある。B Corp取得をきっかけに、そうした業界横断の変化にもより主体的に関わっていきたいという話がありました。
2. 「凸凹が活きる社会を創る。」障害福祉から社会構造を見直す
2社目は、障害児・障害者支援を軸に複数の事業を展開する企業デコボコベースさんです。(スピーカーは代表取締役社長COO 松井 清貴さん)
“でこぼこが活躍できる社会をつくる”という言葉に象徴されるように、障害を「支援の対象」としてだけでなく、社会の中で活躍する主体としてどう位置づけ直すかを事業の中心に据えています。
幼児期から就労までを支える多様なサービスを展開し、全国に数百の拠点を持つまでに成長。直営ではなく、ソーシャルフランチャイズモデルで広げてきたことも特徴です。
障害者雇用は、福祉だけでなく日本の経済課題でもある
この企業の話で強く印象に残ったのは、障害者雇用の問題を「福祉」の文脈だけではなく、労働力不足や日本経済の持続性と結びつけて語っていたことです。
少子化により労働人口が減少する中で、働く力がありながら十分に就労できていない人々がいる。障害のある方々がより働きやすくなり、自立し、納税者として活躍できるようになれば、社会全体へのインパクトは非常に大きい。
だからこそ、障害者雇用を“支援”にとどめず、社会の仕組みの側を変えていく必要があるという視点が一貫していました。
売上・利益以外の指標を持ちたかった
B Corp取得の背景として語られたのは、「いい会社」の定義を変えたいという思いです。
売上が高い、利益が出ている、株価が高い。もちろんそれらも重要ですが、それだけでは測れない価値があるのではないか。事業を通じて、どれだけ社会に貢献しているかを可視化したいという思いから、同社はまずソーシャルインパクト指標の整備に取り組みました。
その流れの中でB Corpに出会い、より包括的に自社を見直すフレームとして取得を決めたといいます。
取得プロセスで見えた「やっているけれど、証明できない」問題
取得にあたって苦労した点として挙げられたのは、言語の壁に加え、社内で実際に行っていることを、制度や文書として十分に整理できていなかったことでした。
「取り組みはある。けれど、それを示す規定や方針書、手順書として可視化されていない」。
これは多くの企業に共通する課題かもしれません。B Corpの申請プロセスは、その意味で会社の“鏡”のようなものであり、今の状態を客観的に映し出してくれる存在だったと振り返っていました。
次の挑戦は「障害者が働く場」そのものを増やすこと
現在の新たな取り組みとして紹介されたのが、障害者が中心となって運営するハンバーガーショップです。支援の場をつくるだけでなく、実際の仕事の場をどう増やすか。そこにチャレンジしている姿勢が印象的でした。
3. ロボティクスで人手不足を支える。スタートアップがB Corpを選んだ理由
3社目は、警備・点検・案内などの分野でロボットを活用したソリューションを提供するロボティクス企業ugoさん。(スピーカーは広報マネージャー 荒木 祥子さん)
設立は2018年、社員数は約90名。開発から製造、販売、サポートまでを社内で一貫して行っているのが特徴です。
ミッションは、「人とロボティクスの融合で新しい社会システムを構築し、新しい価値観を創造する」こと。
人手不足が進む中で、ロボットによって社会インフラを支える仕組みをつくろうとしています。
ロボットを売るのではなく、社会の維持可能性を支える
この企業の話で興味深かったのは、ロボットを単なる製品としてではなく、生活の質や社会機能を維持するためのインフラとして捉えていたことです。
案内ロボット、巡回・点検ロボットなど、既にさまざまな施設で活用が進んでおり、人が担っていた業務の一部をロボットが代替することで、少人数でも社会が回る仕組みを目指しています。
まだ未完成だからこそ、B Corpを起点にした
スタートアップである同社にとって、B Corp申請は簡単ではありませんでした。ガバナンスも、ダイバーシティの体制も、環境面の取り組みも、まだ発展途上。それでも取得を目指したのは、今の会社の姿を見つめ直し、2030年に向けた目標を明確にするためだったと語っていました。
たとえば、ロボットの調達や製造において環境負荷をどう減らすか、廃材や樹脂素材をどう見直すか、どんな人材が活躍できる組織にしていくか。
B Corpは、それらを“できているか/できていないか”で判断するだけでなく、これからどう進むかを定める起点にもなっていたようです。
質疑応答で見えた「取得後」のリアル
後半の質疑応答では、B Corp取得後の活用について率直なやり取りがありました。

取得しただけでは、社内浸透は進まない
印象的だったのは、「B Corpを取ったものの、社内でまだ十分に活用しきれていない」という声が複数あったことです。
たとえば、営業先で名刺や資料にB Corpロゴがあることで話題にはなるものの、担当者によってはうまく説明できない。結果として、認証の価値を十分に伝えられていないという課題が共有されました。
一方で、ロゴが会話のきっかけになることで、相手の印象が変わったというポジティブな変化もあったようです。だからこそ、今後は営業資料や簡単な説明ツールを整え、誰でも一定の質で説明できるようにする必要がある、という話につながっていました。
コミュニティの価値は大きい
もう一つ、繰り返し語られていたのが、B Corpコミュニティそのものの価値です。認証を持つ企業同士で、社内浸透や運用の悩みを共有したり、ナレッジを交換したり、ときには協業につながったりする。B Corpは認証取得そのものよりも、その後に生まれる関係性の方がむしろ大きいのではないか、という実感がにじんでいました。
3社に共通していたこと
今回の3社は、窓・ガラス、障害福祉、ロボティクスとまったく異なる業界に属しています。それでも話を聞いていると、共通するポイントがいくつもありました。
ひとつは、B Corpをブランド装飾ではなく、経営を見直すフレームとして捉えていること。
もうひとつは、財務指標の外側にある価値を、どう言語化し、どう社内外に伝えるかに苦労していること。
そして最後に、取得はゴールではなく、むしろスタートだという感覚です。
B Corpの認証は、企業の“善さ”を一方的に証明するバッジというより、自社のあり方を問い直し、次の打ち手を考えるための実践的な装置なのだと感じました。

おわりに
非財務資本、ソーシャルインパクト、パラダイムシフト。
言葉だけを見ると少し抽象的に感じるかもしれませんが、今回のセッションでは、それらが各社の現場の意思決定や事業の方向性としっかり結びついていることが伝わってきました。
「利益を出すこと」と「社会によいこと」を対立させるのではなく、どう両立し、どう更新していくか。B Corpはその問いに対する唯一の答えではないかもしれませんが、少なくともその問いを企業に突きつけ、実践へと促す力を持っている。そんなことを改めて感じる時間でした。
こんな有意義な時間を今後もたくさん提供できるコミュニティ活動を目指して行きますので、皆様引き続きよろしくお願いします!!
