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『プリンキピア・アポクリファ』OSR TRPG の遊び方の教科書

『ベーシックファンタジーTRPG 第4版 日本語オープンソース版』を公開しています。
レベル 1 から城塞構築までをサポートする完全なクラシック・ダンジョン探索 TRPG です。また OSR(オールドスクール・ルネサンス)の遊び方や、翻訳・制作の記録について書いています。
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日本語版『プリンキピア・アポクリファ-原理秘伝-』を翻訳・公開してくださった渋禽氏に、心より感謝いたします!

OSR(オールドスクール・ルネサンス)の遊び方の教科書、日本語版『プリンキピア・アポクリファ-原理秘伝-』(渋禽氏訳。以下『プリンキピア・アポクリファ』)の PDF を、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(非営利ライセンス)にもとづき BOOTH で無料再配布します。『ベーシックファンタジーTRPG』と同じ BOOTH ショップで、別アイテムとしてダウンロードできます。

プリンキピア・アポクリファ-原理秘伝- 日本語版

原著はベン・ミルトンとスティーブン・ランプキンによる原則を、デビッド・ペリーが編集し、エヴリン・モローが挿絵を手がけた作品です。日本語版翻訳は渋禽氏によるものです。

これから OSR を遊んでみようという方には、『ベーシックファンタジーTRPG』とともにダウンロードしていただけると嬉しいです。なぜなら、この二冊はとても相性がいいからです。

『ベーシックファンタジーTRPG』が OSR を遊ぶためのルールブックなら、『プリンキピア・アポクリファ』は OSR の遊び方を知るための教科書です。

OSR の TRPG のルールを読んでも OSR の遊び方はわからない

クラシック D&D や、その流れを汲む OSR の TRPG をはじめて読むと、不思議に思うことがあります。キャラクターは弱く、戦闘は危険です。遭遇するモンスターが、必ずしも PC たちに合わせて「バランス調整」されているわけでもありません。

キャラクターシートには、現代の TRPG ほどたくさんの技能や特殊能力が並んでいません。そしてルールに書かれていないことも多く、GM がその場で判断しなければならない場面もあります。

現代の TRPG に慣れていると「どうしてこんな不親切な作りになっているんだろう?」と思うかもしれません。

しかし、これらはバラバラの特徴ではありません。すべて、ある「遊び方」を前提として作られています。

問題は、その遊び方そのものがルールブックには十分に書かれていないことです。『プリンキピア・アポクリファ』は、まさにそこを説明するために作られた文書です。

『プリンキピア・アポクリファ』とは?

『プリンキピア・アポクリファ』は、オールドスクール・スタイルで TRPG を進行し、プレイするための「基礎原理と金言」をまとめた 31 ページの冊子です。

『プリンキピア・アポクリファ』という書名は、ラテン語とギリシア語に由来します。OSR の正典ではなく、コミュニティのノウハウをまとめた「原則集」といった意味合いと思われます。

オールドスクール・スタイルの TRPG では、ゲームを どう運用するのか について具体的な指針が示されていないことがあります。その歴史的背景を知らない初心者は、戸惑ったり、運用やプレイで嫌な体験をしたりするかもしれない。そこで、オールドスクール・スタイルを支える考え方を「原則」としてまとめたわけです。

つまりこれは、新しいルールを追加するサプリメントではありません。ルールの向こう側にある「どう考えて遊ぶのか」を説明する本なのです。

ただし「これが正しい OSR だ」という本ではない

「OSR の教科書」と紹介すると、「この通りに遊ばなければ OSR ではない」という本に聞こえるかもしれません。しかし、『プリンキピア・アポクリファ』自身が、それを否定しています。

「原則の使い方」では、これらはゲームのルールを補完する指針ではあるものの、すべてのゲームに等しく当てはまるわけではなく、自分たちの卓に合わなければ無視したり、変更したりしてよいと説明されています。

そして「OSR と基本原則」で掲げられるのが、次の言葉です。

あなた方の卓はあなた方自身のもの

『プリンキピア・アポクリファ』

誰にも「こう楽しむべきだ」と決めることはできません。さらにデイヴィッド・ペリーは OSR を「指針」として従うべきルールではなく、常に拡大し続ける「参考資料リスト(Appendix N)」だと表現しています。

教科書なのに「教科書どおりにやらなくてもいい」と最初に書いてある。 私は、この距離感がとても OSR らしいと思います。

第 1 章(GM 向け):公正な仲裁者であれ

本編で最初に掲げられる原則が 「公正な仲裁者であれ」 です。その最初の項目が 「ルールよりも裁定を重視する」 です。

オールドスクール・スタイルでは、あらゆる状況をルールでカバーしようとはしません。ルールに書かれていないことが起きたら、ルールブックの中から答えを探し続けるのではなく、ゲームの精神に沿って常識的な裁定を下して先へ進む。必要なら、その裁定を記録して、次から一貫して適用します。

ただし、これは「GM が好き勝手に決めていい」という意味ではありません。本書は 「プレイヤーの運命に干渉しない」 とも述べています。GM はプレイヤーの敵でも、PC を救うために物語を書く作家でもありません。世界を描写し、PC の行動に対する結果を公正に判断します。

ルールが少ないからこそ、GM には「公正な仲裁者」であることが求められる。 この 2 つはセットなのです。

第 2 章(GM 向け):プレイヤーに考えさせる

私が『プリンキピア・アポクリファ』の中でも特に重要だと思う章が 「プレイヤーに考えさせる」 です。ここには 「プレイヤーの工夫をキャラクター能力より優先する」 という原則があります。

オールドスクールのキャラクターは比較的シンプルです。問題に遭遇したとき、キャラクターシートを眺めて「この問題を解決できる技能はどれだろう」と探すのではありません。プレイヤー自身が考えます。

たとえば本書では「ワニがいる堀を渡る」「ダンジョン奥深くの扉が日光でしか開かない」「酸の湖に沈んでいる鍵を見つける」といった問題が例として挙げられています。

これらは「正解の技能」を探す問題ではありません。ロープを使うのか、何かを餌にするのか、水を抜くのか、鏡で日光を運ぶのか、魔法を使うのか、そもそも別の道を探すのか。プレイヤーがゲーム世界を見て、自分で方法を考えます。

そこで 「工夫は報われるべきで、妨げられるべきではない」 につながります。プレイヤーが考えた方法が世界の中で合理的なら、GM はそれを積極的に認める。さらに 「どのように行動をするのか訊ねる」 とも書かれています。「罠を調べます」で終わらせず、「どうやって調べますか?」と訊ねる。このやり取りこそ OSR のゲームプレイの中心にあるものです。

第四の壁は気にしない

この章には、もう 1 つ興味深い原則があります。「第四の壁は気にしない」 です。

プレイヤーが知っていることと、プレイヤー・キャラクターが知っていることの食い違い、いわゆる「メタゲーミング」をそれほど気にする必要はない、と本書は説明しています。キャラクターを厳密に演じることよりも、プレイヤーの創意工夫を優先するわけです。

これは私なりの解釈ですが、たとえば、あるプレイヤーの PC がモンスターに食われて死んだとします。そのプレイヤーが新しい PC を作って同じ場所へ向かったとき、「新しい PC はモンスターの存在を知らないはずだから、知らないふりをしなければならない」と厳密に考える必要はありません。

一度モンスターに食われたなら、次からはそこにモンスターがいることを知っている前提で動いてよい。

前回の失敗から学び、次はどうすれば戦わずに済むのか、どうすれば有利な状況を作れるのかを考える。PC だけではなく、プレイヤー自身が経験を積んでいくこともゲームの一部なのです。

第 3 章(GM 向け):困難な状況を作り上げる

第 2 章でプレイヤー自身に考えさせるのであれば、GM は「正解の技能を使えば解決」という問題だけを用意するわけにはいきません。そこで第 3 章では 「厳しい選択肢を提示する」「プレイヤーの予想を覆す」「複数の答えがある課題を構築する」「答えがない課題も用意する」 といった原則が示されます。

重要なのは、GM が用意した一つの正解をプレイヤーに当てさせることではありません。何を犠牲にするのか、どの危険を引き受けるのか、あるいは GM さえ想定していなかった方法で突破するのか。それをプレイヤー自身に考えてもらいます。

問題を作るのが GM で、答えを作るのがプレイヤー。 だからこそ、キャラクターシートの能力だけではなく、プレイヤーの判断と創意工夫がゲームを動かします。

第 4 章(GM 向け):死線をさまようダイスロール

OSR の戦闘は危険です。しかし、本書が求めているのは、GM が理不尽に PC を殺すことではありません。この章には 「死と隣り合わせだが回避可能な戦闘」「緊張感を維持する」「PC の命をダイスに委ねる」「危険性を知らせておく」 という原則が並びます。

危険なモンスターがいるなら、その痕跡や噂などから脅威を察知できるようにする。プレイヤーはその情報をもとに、戦うのか、逃げるのか、準備するのか、そもそも近づかないのかを判断できます。それでも危険を冒すと決めたなら、結果をダイスに委ねる。

危険であることと、理不尽であることは違う。

死の可能性があるからこそ、その前に情報を集め、危険を予測し、ときには戦闘そのものを回避するというプレイヤーの判断に意味が生まれるのです。

第 5 章(GM 向け):プレイヤーの物語の舞台を作る

ここまでプレイヤー自身の判断を重視してきたからこそ、GM には プレイヤーが判断できる世界を提示すること が求められます。

この章には 「状況を分かりやすく伝える」「段階的に明らかにする仕組みを作る」「核心を取りこぼすな」「世界に命を宿す」「NPC に命を吹き込む」 といった原則があります。重要な情報を隠すこと自体をゲームにするのではなく、プレイヤーが何をするのか判断できる材料を提示します。

また、NPC にも PC とは無関係の目的があります。敵も死にたくないので、負けそうなら逃げるかもしれないし、最初から交渉できるかもしれない。本書が反応ロールや士気ロールを勧めているのも、世界を PC のためだけに存在する舞台装置にしないためです。

GM が物語を決めるのではなく、世界と状況を用意する。その中でプレイヤーが選択した結果が物語になる。 それが「プレイヤーの物語の舞台を作る」という考え方です。

第 6 章:プレイヤーのためのオールドスクールの原則

第 1 章から第 5 章までは、主に GM がオールドスクール・スタイルのゲームをどう運用するかについて書かれていました。最後の第 6 章では視点が変わり、プレイヤーはどう遊べばよいのか がまとめられています。

戦闘は競技ではなく戦争

戦闘は競技ではなく戦争

『プリンキピア・アポクリファ』

遭遇が「バランスが取れている」とは限りません。正面から公平に戦う必要もありません。準備する。情報を集める。地形を利用する。罠に誘い込む。そして勝てそうになければ逃げる。本書がその直前に 「逃げるべき時を知る」 と書いているように、戦うかどうかを判断すること自体がゲームです。

これは第 4 章で GM に示された原則の裏返しでもあります。GM は危険を知らせる。プレイヤーは、その危険にどう対処するかを考える。

勝利を目指し、敗北を味わう

本書の終盤には 「『死』のみが行く手を阻む」「創造性を解放しよう」「勝利を目指し、敗北を味わう」 といった原則が並びます。

扉が開かなければ別の入口を探す。モンスターに勝てなければ逃げる、罠にかける、交渉する。一つの方法に失敗しても、それで冒険が終わるとは限りません。

プレイヤーは勝つために本気で考える。しかし、成功は保証されていない。その成功と失敗の積み重ねによって、誰かが最初から書いたものではない、自分たちだけの物語がゲーム世界に残っていきます。

日本語で読める「OSR の教科書」として薦めたい

私は『ベーシックファンタジーTRPG』の日本語版を作りました。しかし、ルールブックを日本語にしただけで OSR の面白さまで日本語で伝えられたとは思っていません。

なぜ戦闘が危険なのか。なぜ遭遇が PC に合わせて調整されていないのか。なぜキャラクターシートに答えが書かれていないのか。なぜ反応ロールや士気ロールが重要なのか。なぜ GM は物語を決めすぎないのか。そして、そんなゲームのいったい何が面白いのか。

その答えを、わずか 31 ページの冊子で説明してくれるのが『プリンキピア・アポクリファ』です。

だから私は、現時点で日本語で読むことのできる 「OSR の教科書」 として、この一冊を薦めたいと思います。

もちろん、この本自身が言っているように 「あなた方の卓はあなた方自身のもの」 です。ここに書かれた原則に従う義務などありません。

でも、「OSR って聞いたことはあるけど、普通の TRPG と何が違うの?」「昔の D&D をそのまま遊ぶことが OSR なの?」「ベーシックファンタジーTRPG を手に入れたけれど、どう遊べばいいの?」という人には、ぜひ一度読んでもらいたい一冊です。

『ベーシックファンタジーTRPG』が OSR を遊ぶためのルールブックなら、『プリンキピア・アポクリファ』は OSR の遊び方を知るための教科書です。

どちらも無料で公開しています。BOOTH では別々のアイテムとして公開していますので、『ベーシックファンタジーTRPG』とあわせて『プリンキピア・アポクリファ』もダウンロードしていただけると嬉しいです。

プリンキピア・アポクリファ-原理秘伝- 日本語版


ベーシックファンタジーTRPG 第4版 日本語オープンソース版

レベル 1 から城塞構築までをサポートする完全なクラシック・ダンジョン探索 TRPG です。また OSR(オールドスクール・ルネサンス)の遊び方や、翻訳・制作の記録について書いています。

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