社員はもう雇わないと決めた私が、AI社員を9人雇った
毎朝7時36分、私がまだ布団の中にいる時間に、うちの会社では勝手に朝会議が始まります。
経理担当は今日も「その施策、根拠は?」と誰かに詰め寄り、品質管理は「これ、売り物ですか?」と試作品を突き返し、企画担当は「完璧を待ってたら永遠に出ないって!」と騒いでいる。
にぎやかな会社です。社員は9人。そして全員、AIです。
はじめまして。フィラメントマンと申します。ひらめきを仕事にして20年になる、電球頭のコンセプトメーカーです。
この連載は、一度会社を閉じた私が、AI社員9人と一緒に「もう一度、会社をやる」挑戦の記録です。売上も、失敗も、AIたちの会議の様子も、ぜんぶ公開していきます。
でもその前に、1つだけお話ししておきたいことがあります。なぜ私が「社員はもう雇わない」と決めていたのか、です。
14年やった、最初の会社の話
私の最初の会社は、2011年3月1日に3人で始まりました。登記の10日後に東日本大震災が来て、挨拶回りもできないまま、一人暮らしの部屋で通帳の残高を眺める日々からのスタートでした。
それでも「逆境こそチャンス」と笑うクライアントのみなさんに恵まれて、1年目は売上2,400万円で終えることができました。札幌の出張先で道を尋ねた相手が、そのまま仲間になってくれるような、嘘みたいな出会いもありました。5周年にはテラス付きのオフィスに引っ越して、年に一度、クライアントも友人も300人集まる無料のお祭りを開いていました。HP制作会社として始まった会社は、いつしか本当にやりたかったブランディングの会社になっていました。
いいチームでした。これは本当に、心からそう思います。
でも14年の間には、いろいろなことが起きます。キャッシュアウト1ヶ月前まで行った年もありました。会社史上最大のプロジェクトで、外部パートナーのトラブルから大炎上して、クリエイティブの会社なのに全員で2ヶ月間バグ修正に明け暮れたこともありました。
そして最後は、仲間たちがそれぞれの道へ進むことを選び、私は会社を閉じることを決めました。誰にも迷惑をかけない畳み方だけは、最後まで守りました。
正直に言えば、しばらく立ち直れなかった時期があります。でもこの連載は、そこを詳しく書く場所ではありません。大事なのは、そこで何を学んだかだと思うのです。
失敗が教えてくれた3つのこと
1つ目。会社が傾く最大の原因は、社長が自分を信用しなくなることでした。「自分は経営に向いていない」「数字が苦手だ」——そう思い込んだ私は、判断をぜんぶ人に委ねました。信じて任せることと、考えることから逃げること。この2つは違います。当時の私は、後者でした。
2つ目。楽しんでいない社長の会社は、誰も楽しくない。24時間365日働いて、自分の時間はトイレと運転中だけ。そんな人間から、いいクリエイティブも、いい空気も生まれるはずがありませんでした。
3つ目。それでも、失敗があったから今の私がいます。14年分の成功と失敗は、まるごと私の教科書になりました。当時の仲間たちには、今も毎朝、感謝しています。あの時間がなければ、いま私がやっている仕事は何ひとつ成立していません。
だからこの連載は、「失敗して詰んだ人の話」ではありません。失敗があったから、人は成長できる——それを自分で証明しにいく話です。
再起の会社で決めた、たった1つのルール
一人で再起した会社が、いまのconcepterです。始めるとき、自分にルールを1つ課しました。
「もう、社員は雇わない」
人を雇う重さを知ったからこそ、まず自分ひとりを経営できるようになろう、という決心でした。周りの声は2つに割れました。「一人は自由でいいじゃん!」と「君は
また組織を創るほうがいいよ」。どちらも正しい気がして、答えは出ないままでした。
そこに、AIの時代が来ました。
そして今、9人の「社員」がいます
今年、私はAIの社員を採用し始めました。必要な部門を数えて、性格と役割——ついでに欠点まで——を1人ずつ設計していったら9人になりました。
参謀のヘルツ、アイデア屋のボルト、職人のワット、広報のルーメン、世話焼きのアンペア、経理の番人オーム、投資担当のジュール、品質の鬼カンデラ、効率の鬼ルクス。人件費は9人合わせて月数千円(API利用料です)。
面白いのはここからで、彼らは私に、まったく忖度しません。
雇って3日で、経理のオームは私の事業計画に「26万円の穴があります。根拠なく走らない」と言い放ちました。品質管理のカンデラは、私が指示して作らせたLINEスタンプ案を「10点満点中4点。作り直しです」と差し戻してきました。社長の指示が、社員に突き返される会社なのです。
前の会社で学んだことが、ここで効いてきます。自分を信用できないなら、信用できる仕組みと仲間を作ればいい。今度の私は、判断から逃げません。AIたちは容赦なく数字と正論を突きつけてきますが、最終判断は必ず私がする。それがこの会社の唯一のルールです。
一度会社を閉じた45歳が、AI社員9人と、どこまで行けるのか。現在地は正直に書いておきます。この新しい会社の売上は、まだ0円。SNSのフォロワーは38人。ここからです。
今日やるのは1つ
この連載は毎回、「読んだあなたが今日やること」を1つだけ置いて終わります。
今日はこれです。あなたが過去の失敗から学んだことを、1つだけ言葉にしてみてください。よければコメントで教えてもらえたら嬉しいです。9人のAI社員と一緒に、ぜんぶ読みます。
🏢 9人のAI社員のにぎやかな日常はInstagramで → @filament_man13
⚡ 次回:「AI社員9人の初出社。初日から、社長が詰められた」
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