【57歳・女子大生(未定)第7話】覚悟の前夜
第7話
覚悟の前夜
前夜です。
試験の前日。
大学最寄駅のホテルに、ひとりで泊まっています。
ひとりホテルは、ほとんど経験がありません。
部屋に入ると、
しん、と静かでした。
テレビもつけず、
しばらく立ったまま、深呼吸。
この日のために、スーツを新調しました。
靴も、鞄も。
ストッキングは多めに。
形から入るのも、作戦のひとつです。
受験票はダウンロード。
ネット出願にも驚きました。
プリンターの前で、
ゆっくり出てくる紙を見ながら
「これが、私の受験票か」
と、少し不思議な気持ちになりました。
本当は車で来る予定でした。
でも、私の落ち着かない顔を見ていた“クッパ”が言いました。
「新幹線で行け。」
数十年ぶりの新幹線。
ICカードも、この機会に作りました。
大高駅で、はじめてのタッチ。
……スムーズ。
けれど新幹線の改札では、
ピッ、のはずが
「ピンポーン。」
異音。
一瞬、固まる私。
戸惑っていると、奥から小さな紙が出てきました。
そうか、これが例の印字。
友達に聞いていてよかった。
何事もなかった顔で受け取り、
静かに前へ進みました。
新大阪駅から御堂筋線への乗り換えも、
床のラインが導いてくれました。
ここまで、順調。
でも。
次に来るときのために。
もし通うことになったら、迷わないように。
そう思っていたのに、
写真を撮るのを、すっかり忘れていました。
余裕、ゼロです。
新幹線は憧れの乗り物でした。
小学校の修学旅行では、
停車時間内に全員が乗れるように、
講堂に椅子を並べて練習したのを思い出します。
あのときの私たち、本気でした。
今日も、ちゃんと緊張しています。
実際に血圧が上がっていました。
AIに相談したら、
「一度受診を」と勧められました。
肩に力が入っていたのだと思います。
自分では気づかないうちに、
ずいぶんと力んでいたようです。
今夜は、静かな部屋で
もう一度、過去問を開きます。
不安と覚悟が、
同じ重さで並んでいる夜。
明日は試験。
でも今日は、ICカード合格。
それで、十分。
深呼吸。
おやすみなさい。
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