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映画評 『おいしい給食 炎の修学旅行』

©2025「おいしい給食」製作委員会

 日本は言わずと知れたグルメ大国。権威あるグルメガイド「ミシュランガイド」でも三ツ星レストランの数が世界でもっとも多く、テレビでもSNSでもグルメ情報に事欠かない。そんな中「学校給食」をグルメ・エンタメにしようという本作は、盲点を突かれたと感じさせるアイデアだ。

 本作は2019年からテレビ神奈川やTOKYO MXなどローカル局で放映されていたドラマから火が付いた。すでにドラマは3シリーズを数え、劇場版も今回が4作めの人気シリーズである。偶然なのだが、以前紹介した「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!」もまたローカル局からヒットしたドラマの映画化。ネット配信が主流になったことで「全国キー局でなくても面白ければ支持される」時代になったということかもしれない。

 主人公は給食好きが高じて中学校教師となった甘利田幸男。ふだんは眼光鋭く、パワハラ気質の威圧感すら感じる人物でありながら、給食の時間となると一変。食事前の校歌斉唱で踊り出し、パンにほおずりしながら給食を味わい尽くす変人ぶり。今回が初見だった筆者は最初おおいにドン引きしてしまったが、いったんキャラ設定を理解すると〝痛い芸風〟の面白さにはまってしまう。

 そこに現れるライバルが、甘利田同様に給食愛あふれる生徒・粒来ケン。ただおいしく食べるだけではなく、デザートのゼリーをメロンパンの皮でデコレートするなどの「アレンジ給食」を駆使して甘利田を翻弄する。二人のドタバタぶりを空気のように無視して、給食とおしゃべりに興じる教室のシュールさがたまらない。

 甘利田たちは修学旅行先の立ち寄ったドライブインで偶然鉢合わせた別の学校の生徒とのトラブルをきっかけに、なぜか「給食交流会」を持ちかけられる。その学校は、授業時の机の並びのまま黙食を強要。コロナ禍の給食を思い出させるが、教師は「給食はしつけや規律のためのカリキュラムである」として厳しく指導する。それを見かねた甘利田は立ち上がるのだった。

 主人公・甘利田を演じるのは、NHK大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」で盲目の高利貸し鳥山検校を演じた市川隼人。鋭い眼光と知的なハスキーボイスが魅力のクールな美青年だが、文字通りの体当たりで〝給食偏愛〟を表現。極端な演技の振り幅で、作品の面白さそのものになっている。

 時代設定は1989年。ワンレンヘアの女性教師、短ランとリーゼントの男子学生など、昭和感たっぷりのレトロさ。当時テレビで人気を博した小堺一機や伊藤まいこらを脇役に配し、ほのぼのとしたノスタルジーを醸し出しているところも心憎い演出。あの頃に学生だった中年世代も十分楽しめるのではないだろうか。

 ただ面白いだけではない。「生徒はまだ子どもなんです。矯正されなければ進む方向も分からない」と厳しい指導の必要性を訴える教師に対し、「あなたは生徒を正したくて指導していない。ただ加虐しているだけだ」と甘利田は反論する。昨今の教育現場ではだいぶ指導が〝ゆるく〟なってきたそうだが、教師だけでなく、親として上司として指導する立場となった時、常にこの二つの主張に立ち戻ることの大切さも思い出させてくれる。

※『鐵の世界』214号(日本金属通信社 刊)より転載

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