第103話|「せっかくだから」で、無理をしていた頃
「せっかくだから」
この言葉で、
自分の気持ちを後回しにしたことはないだろうか。
昔、まだ主人と付き合っていた頃。
私の誕生日に、
少し特別なお店を予約してくれたことがあった。
楽しみにしていたはずなのに、
その日はお店に着く前から、なんとなく体調が悪かった。
それでも私は、
せっかく予約してくれたから。
せっかくのお祝いだから。
そう思って、そのままお店へ向かった。
でも、体調はどんどん悪くなっていく。
ほとんど食べることもできず、
何度も席を立った。
それでも最後まで、
「帰りたい」
と言えなかった。
今なら思う。
なんで、あんなに我慢したんだろう。
そして今日、
その出来事をふと思い出した。
今、主人は足を痛めていて、
まだ歩くのも少しつらそうにしている。
そんな主人を見ながら、
「そろそろ歩いたほうがいいんじゃない?」
と思っている自分がいた。
そのとき、
昔の自分がふっと浮かんできた。
あのとき私も、
本当はしんどかった。
でも、そのしんどさは、
私にしかわからなかった。
そう思ったら、
「痛い」と言っている人に、
外側にいる私が「これくらい大丈夫」と決めることはできないな、と。
昔の私は、
相手を優先することが優しさだと思っていたのかもしれない。
我慢すること。
迷惑をかけないこと。
せっかくしてくれたことを無駄にしないこと。
それが相手を思いやることだと思っていた。
でも今は、
「今日は無理」
「ちょっと休みたい」
そんな自分の声をちゃんと伝えることも、
自分を大切にすることのひとつだと思っている。
そして同じように、
誰かの「痛い」や「しんどい」を、
そのまま受け取ることも。
あれから、ずいぶん時間が経った。
主人も変わったし、
私も変わった。
昔なら言えなかった「無理」が、
今ならちゃんと言える。
それもきっと、
歳を重ねてきたからこその変化なのかもしれない。
「せっかくだから」の前に、
私は今、どうしたい?
そんな自分の声も、
ちゃんと聞いてあげたい。
今日、昔のことを思い出して、
そんなことを考えた。
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ここまで読んでくださってありがとうございます。
“整える日々”をこれからも綴っていきます。
またふらっと、心をゆるめに来てもらえたら嬉しいです。
