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食品衛生法施行規則の一部を改正する省令の公布について ~食品安全管理体制は予防型国際標準へ大きく転換~

食品衛生法施行規則の一部を改正する省令の公布について ~食品安全管理体制は予防型国際標準へ大きく転換~(本文5,867文字)
 
 
厚生労働省は、令和7年10月1日付にて「食品衛生法施行規則の一部を改正する省令の公布について」(健生発1001第4号)を発出し、日本の食品安全管理体制の根幹を、国際標準であるHACCPに基づく予防管理型へと転換する一連の制度改正などを、地方自治体へ周知徹底しました。ここでは概要を簡単にまとめます。詳細については<一次情報>ならびに<関連情報>からご確認ください。
 
 
<通知>
今回発出された通知、「食品衛生法施行規則の一部を改正する省令の公布について」(健生発1001第4号)は次の通り;

第1 改正の概要
食品衛生法(昭和22 年法律第233 号。以下「法」という。)第27 条の規定により、販売の用に供し、又は営業上使用する食品、添加物、器具又は容器包装(以下「食品等」という。)を輸入しようとする者は、その都度厚生労働大臣に届け出なければならないこととされている。規則第32 条第4項から第6項までにおいて、規則別表第12 に定める食品等について、同一の製品又はこれに準ずるものを繰り返し輸入する場合においては、輸入者が、輸入計画を記載した輸入届出書の提出を行っているときは、当該提出をもって、それぞれの食品等に係る輸入届出書の提出に代えることができることとしている。法第27 条の規定に基づく届出については、規則第32 条第7項において、厚生労働大臣は、電子情報処理組織を使用して行わせることができることとしているところ。
一方で、規則第32 条第9項において、規則第32 条第4項から第6項までの規定に基づき、輸入計画を記載した輸入届出書の提出をもって、それぞれの食品等に係る輸入届出書の提出に代える場合については、厚生労働大臣は電子情報処理組織を使用して行わせることはできないとしていた。
今般、輸入計画を記載した輸入届出書についても、電子情報処理組織を使用して適切に提出することが可能となるよう、規則について改正を行った。
 
第2 施行日
令和7年10 月12 日から施行すること。
 
第3 その他
規則第32 条第4項から第6項までの規定に基づいて、輸入計画を記載した輸入届出書の提出をもって、それぞれの食品等に係る輸入届出書の提出に代える輸入者は、輸入計画を記載した輸入届出書を提出した検疫所に輸入実績を年度毎に報告すること。
なお、令和7年10 月12 日以降、原則として電子情報処理組織を使用して輸入計画を記載した輸入届出書を提出するものとするが、各検疫所の窓口に紙媒体で提出することでも差し支えない。

「食品衛生法施行規則の一部を改正する省令の公布について」(健生発1001第4号)
https://www.mhlw.go.jp/content/11135200/001572107.pdf


<改正について>

1. 公布通知の行政的背景と改正される既存規則の概要
通知された「食品衛生法施行規則の一部を改正する省令の公布について」(健生発1001第4号)は、日本の食品衛生行政における重要な転換点となった平成30年改正食品衛生法を、地方自治体レベルで運用するための厚生労働省発の事務連絡である。今回改正の対象となった「食品衛生法施行規則」(昭和23年厚生省令第23号)は、戦後の食品衛生法が制定されて以来、日本の食品安全体制の根幹を支えてきた。その主要な役割は以下の通りであった。
◆一般衛生管理の基準の規定・・・ 食品等事業者が遵守すべき、施設や設備の衛生、器具の洗浄・消毒、従事者の健康管理、ねずみ・昆虫の駆除など、基本的な衛生管理の細目を詳細に定めた。食品衛生法の下で長年にわたり運用されてきた、いわば日本の食品衛生管理の慣習と経験則の集大成といえる。
◆営業許可・届出の規定・・・ 営業許可が必要な業種の範囲を具体的に整備し、その申請手続きや行政が許可を与える際の技術的な要件を定めた。
行政執行の細目・・・ 食品衛生監視員の職務、食品等の検査命令、違反者への処分に関する手続きなど、法律の規定を行政が実務として執行するための具体的な手順を定めた。
今回の改正は、この既存の枠組みに対し、国際的な手法や新たなリスク対応の要素を組み込むという、抜本的な見直しを意味するものである。
 
2. 今回の公布通知が対象とした主要な改正事項とその目的
今回の通知において、平成30年改正食品衛生法の柱となる主要な改革を具体化するための細則を組み込むことを行政に指示した。
2-1. HACCPに沿った衛生管理の制度化
最大の改正は、衛生管理の仕組みそのものの変更である。従来の一般衛生管理に加え、国際的な手法であるHACCP(危害分析重要管理点)に基づく衛生管理計画の作成と実施が、原則としてすべての食品等事業者に義務付けられた。改正規則は、HACCPの義務付けの具体的な対象者、管理基準の詳細、そして小規模事業者向けの簡略化された管理方法、つまりHACCPの考え方を取り入れた衛生管理の適用範囲を定めた。この改正の目的は、食品安全管理を「事後的な検査・処分」から「予防的・科学的管理」へと転換させることにある。
2-2. 食品用器具・容器包装へのポジティブリスト制度の導入
食品と接触する可能性のある器具や容器包装について、安全性が確認された物質のみをリスト化し、そのリストに記載された物質の使用のみを許可するポジティブリスト制度の導入が規定された。これにより、従来の有害物質の使用禁止という受動的な規制、いわゆる「ネガティブリスト制度」から、安全性が証明された物質のみを使用可能とするという、より厳格で能動的な規制へと移行した。改正規則は、この制度の対象となる主に合成樹脂などの材質、リストへの適合義務、そして業界の準備期間のための経過措置の期間を定めた。
2-3. 危機管理体制と情報共有の強化
食品事故発生時の対応力を高めるため、情報共有義務が追加された。
◆自主回収情報の報告義務化・・・ 営業者が食品等の自主回収(リコール)を行う場合、その情報を速やかに行政に報告することが義務付けられた。これは、リコール情報を迅速に行政に集約し、国民への情報公開を通じて健康被害等の拡大を防ぐことを目的としている。
◆特定の食品による健康被害情報の届出義務化・・・ 厚生労働大臣が定める特別な注意を要する成分を含む食品との関連が疑われる健康被害が発生した場合、事業者はその情報を行政に届け出ることが義務化された。
2-4. 営業規制の見直しと事業者の把握強化
食品等事業者の実態を正確に把握するため、営業許可制度が見直された。
◆営業許可制度の見直し・・・ 食中毒等のリスクや食品産業の実態を踏まえ、許可が必要な業種の範囲が再整理された。
◆営業届出制度の創設・・・ これまで許可や届出が不要であった食品販売業や製造業など多くの食品等事業者に対しても、営業届出制度が創設された。改正規則は、この届出の具体的な様式、手続き、届出対象業種を定め、行政による監視指導の対象範囲を大幅に拡大させた。
2-5. 大規模・広域食中毒への対策強化
複数の都道府県にまたがる大規模な食中毒事案の発生・拡大を防止するため、国と都道府県等の行政機関が相互に連携・協力を行う「広域連携協議会」を設置するための規定が追加された。
 
3. 改正された制度の施行時期と現在の運用状況
今回公布された改正規則によって定められた主要な制度は、以下の通り。
3-1. 食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度
食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度は、業界が原材料の切り替えや安全性の確認を行うための準備期間として、令和2年6月1日の施行から5年間の経過措置期間が設けられ、令和7年6月1日から完全適用されている。
3-2. HACCPに沿った衛生管理の義務化
HACCPに沿った衛生管理の義務化は、令和2年6月1日の施行から1年間の経過措置を経て、令和3年6月1日をもって完全に適用された。現在、日本の食品等事業者は、規模や業種に応じて、HACCPに基づく衛生管理計画の作成と記録・保存を継続的に実施することが法的義務となっている。この義務違反は、行政処分の対象となる。
3-3. 事業者の実態把握と危機対応に関する情報収集の強化
自主回収情報の行政への報告義務、特定の食品による健康被害情報の届出義務、および営業届出制度もすでに施行されている。
 
4. 抜本的改正について
「食品衛生法施行規則」の抜本的な改正は、以下の4つの構造的な課題に根本的に対応するために不可欠であった。
4-1. 国際的な食品安全管理とのギャップ
従来の日本の衛生管理は、法令や許可の基準を満たすことに重点が置かれており、国際的な食品安全基準であるコーデックスのHACCP原則が求める「科学的根拠に基づき、リスクを予防的に管理する」という考え方とは異なっていた。このギャップは、日本の食品が国際的に評価される上での障壁となるとともに、海外からの輸入食品の管理における基準の整合性も課題となっていた。
4-2. 広域的な食品リスクの増大
食品の製造・流通が広域化・複雑化する中で、一つの食中毒事案が複数の都道府県にまたがるケースが増加した。従来の行政区画ごとの対応では、情報の共有や初動対応が遅れ、被害が拡大するリスクが高まっていた。このため、行政の情報共有と連携を強化するための法的基盤が必要とされた。
4-3. 新たな健康被害リスクへの対応
健康食品や新たな成分を含む加工食品の市場拡大に伴い、これらの食品と関連する健康被害リスクが増加した。しかし、従来の制度では、行政が特定の成分による被害情報を迅速かつ網羅的に把握する仕組みが不足していたため、特定の食品による健康被害情報の届出義務を設ける必要が生じた。
4-4. 事業者把握の不十分さ
従来の営業許可制度は、特定の業種に限定されており、食中毒リスクが相対的に低い業種や、新たな形態の食品事業者の多くが行政の把握対象外であった。HACCPを義務化するにあたり、すべての食品等事業者を指導・監視の対象とするため、営業届出制度を導入し、事業者の実態把握を強化する必要があった。
 
5. 改正後の制度がもたらす今後の影響と罰則
この改正規則の施行は、日本の食品安全体制を根本から変革し、今後数十年間にわたる食品産業のあり方に影響を与えると推測される。
5-1. 事業構造とコスト・信頼性の変化
HACCP義務化は、事業者に衛生管理の記録・文書化、従業員の教育、設備の改修など、初期投資やランニングコストの増加につながる。しかし、これは単なるコストではなく、製品の安全性を科学的に証明するための投資である。HACCPの導入によって食品事故のリスクが最小限に抑えられることで、結果的にリコール費用の回避につながり、国内取引先や海外市場からの信頼性向上という形で大きな経済的利益をもたらし、また、衛生管理が標準化されることで、経験や勘に頼らない、誰でも安全性を担保できる生産体制が構築される。
5-2. 行政監視の質の変化
行政機関の役割は、従来の「違反の摘発」から、「リスクの予防的管理の支援と検証」へとシフトする。食品衛生監視員は、単に施設の清掃状況を見るだけでなく、事業者が作成したHACCP計画がその事業所の特性とリスクを正確に捉えているか、そして計画通りに管理記録が適切に実施・保存されているかを検証監査することが主な職務となる。このリスクベースの監視指導により、行政リソースの効率化と監視指導の質の向上が図られる。
5-3. サプライチェーン全体のリスク低減
ポジティブリスト制度の完全適用は、食品を扱う製造・販売業者だけでなく、その上流にある器具・容器包装のサプライヤーに対し、使用する化学物質の安全性を証明する責任を負わせる。これにより、サプライチェーン全体での化学物質の管理が厳格化され、最終的な食品の安全性を高めることができる。
5-4. 罰則と行政責任
今回の改正規則によって定められた衛生管理基準(HACCPを含む)の遵守は、食品衛生法に基づく法的義務である。この義務に違反した場合、行政処分や罰則の対象となる。
◆行政処分・・・ 衛生管理基準を遵守しない事業者に対しては、行政指導、改善命令を経て、最終的には営業許可の取り消しや営業停止命令が下される。
◆罰則・・・ 行政からの改善命令や営業停止命令に従わない、あるいは食品衛生上重大な危害を及ぼす悪質な違反を犯した場合には、食品衛生法に基づき罰金や懲役などの罰則が適用される。
この改正は、単にルールを変えただけでなく、食品安全に対する事業者の法的責任を強化し、安全性の確保を予防的かつ継続的な責務として位置づけた、極めて重要な行政措置である。
 
 
<まとめ>
今回の通知、「食品衛生法施行規則の一部を改正する省令の公布について」(健生発1001第4号)は、日本の食品衛生行政が、長年の経験と慣習に基づいた管理体制から、国際的な基準に基づく予防的な管理体制へと、その根幹を転換したことを示します。公布の背景には、平成30年になされた食品衛生法の改正があり、施行規則の改正はその法律の精神を実務に落とし込むというものです。
従来の規則が定めていた一般的な衛生管理の枠組みは維持されつつも、これに加えて、すべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務付けられました。これは、単に施設を清潔に保つだけでなく、危害要因を予測し、科学的根拠に基づいて管理を継続する仕組みへの移行を意味します。また、行政の危機管理能力も大幅に強化されました。事業者が食品の自主回収を行う際の行政への報告が義務化され、情報が迅速かつ透明に公開される仕組みが整いました。さらに、食品に触れる器具や容器包装については、安全性が証明された物質のみを使用可能とするポジティブリスト制度が導入され、化学物質によるリスクの事前排除が図られました。
これらの法改正は、事業者にHACCP導入に伴う記録作成や設備改修などの負担を一時的に強いるものですが、食品の安全性と国際的な信頼性を飛躍的に高めるという、長期的な利益をもたらします。行政も、従来の検査中心から、事業者による予防管理が適切かを検証するリスクベースの監視指導へと役割を転換しています。
 
以上をあらためてまとめます。
◆日本の食品安全管理体制の、国際標準であるHACCPを基盤とした予防管理型への根本的な転換。全食品等事業者への継続的な実施の法的義務化。

◆食品に触れる器具・容器包装について、安全な物質のみの使用を認めるポジティブリスト制度の導入と、化学物質による健康被害リスクの事前かつ恒久的な排除。

◆食品の自主回収情報や特定の健康被害情報の行政への報告義務化と、行政の広域的な連携による危機管理体制の抜本的強化。

◆営業許可が必要な業種の見直しと、未把握事業者に対する営業届出制度の創設。全食品等事業者を指導・監視の対象とすること。
 
詳細については<一次情報>からご確認ください。
 
 
 
<一次情報>
「食品衛生法施行規則の一部を改正する省令の公布について」(健生発1001第4号)
https://www.mhlw.go.jp/content/11135200/001572107.pdf
 
<関連情報>
食品衛生法の改正について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000197196.html
器具・容器包装、おもちゃ、洗浄剤に関する情報
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/kigu/index.html
 
 

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