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FIRE民が東大を目指す話

ふと、東大でも受けてみるか、と思った。

昔から「自分は本気出したらもっとすごいはずだ」という謎の万能感があった。
裏を返せば、これまであまり本気になったことがないということだ。

人生の中で一番本気を出したことは、自動車免許の学科試験である。
暗記が苦手すぎたため、合宿型の自動車学校で狂ったように模試を受けていた。
どのパターンの問題でもほぼほぼ満点が取れるようになってきた頃、採点担当の教官から「もう来ないで」と言われたのはいい思い出だ。

そんな根拠のない万能感を拗らせ続けて30年ほど。仕事を辞め、時間だけは無限にある身になった。
そしてとうとう時はきた。

東大受験。

「たぶん本気出したら東大受かると思うんですよね」
サラリーマンをやっていた頃一度口に出し、先輩から「そんな甘いもんじゃないよ」と叱られた。

それ以来、約15年ぶりに「東大受けてみるか」と思い至ったのである。

そうと決まれば、やることはAIに相談だ。
AIは私の自惚れを丁寧に指摘しつつ、「やるならまずはセンター試験共通テストの数学1・Aを真面目に70分解いてみな(意訳)」とアドバイスしてきた。
なぜかというと、東大は文系であれど二次試験に数学の記述問題が出るので、共通テストの数学を受けてまずは自分の現在地を知りたまえよというわけだ。

それから3日ほどかかったが、本日午後より突如「やってみるか」と思い立ち、部屋のカーテンを閉め、スマホをマナーモードにし、パソコンで令和8年の共通テストのページを開いた。
数学の問題用紙のPDFは、ⅠのみとⅠ・Aの2つに分かれていた。
……そもそも私はどちらを受けるべきなのか?

とりあえず予備校のホームページに飛んで、東大に行きたい人はⅠ・Aを受けるべきだと知った。I know,I know.

そしていよいよ試験開始。
タイマーのスタートボタンを押す。

第1問

初っ端から何を言っているのかわからない。
知らない単語と記号が出てきた。
忘れているだけなのか?いやさすがに見覚えが……いややっぱ知らん…何それ…怖…と一瞬パニックになった。
このままパソコンを閉じようかと思ったが、とりあえず落ち着いて問題文を読む。

う〜ん、やっぱりわからん。

ただ書いてあるのは日本語なので、繰り返し読んでいるうちになんとなくわかったような気がしてきた。
とりあえず手を動かし、問題を解いていく。

問題用紙に空白が多いのが気になる。
センター試験ってこんなだったかなあ。

第1問は途中で再度混乱に陥ったので、早々に諦めて第2問に移る。

第2問
なんかサインとかコサインとか書いてるな……忘れちゃったな……
思い出すのに時間がかかりそうだ。

ここでまた諦めとがんばるの葛藤。
思わずAIに話しかける。
「わからない単語が出てきて、文章読んでたらなんとなくわからないでもない部分もあるけどそれを読み解くには時間が足りなさすぎる!
ただめちゃくちゃ丁寧に説明してくれてる気がするから、勉強きちんとすればめちゃくちゃ点取れるのでは!?」

AIからの返答
「手を止めるな。時計も止めるな。

その気づきは正しい可能性が高いけど、検証は終わってからでいい。今はスマホ置いて最後まで走って。」

ハイ……

第3問
こ、これはガチで知らない単語だ!!何?データの話?
これも読み解くのに時間がかかりそうだ!飛ばします!!

第4問
なんか知ってるやつな気がする!!
場合の数と確率?だっけ?
これはどうにかなりそうだ、と思ったのも束の間、問題がご丁寧に用意してくれているケタ数と導き出した答えが合わない。
変な数字になった、えらいこっちゃと解き直していると、ケアレスミスを発見。
ああ、こうやって人は点を取りこぼすんだと思い知りながら再び問題を解いていく。
ああ、今度はケタが合ったぞ。よかったよかった。
そして最後の問題でまたケタが合わない。
どこかで間違えてる。ああ、時間がない。どこが間違っているのかわからない。

というわけで、70分が終了。
いよいよ自己採点の始まりである。

とは言っても、書けた答えがあまりに少なく、1分くらいで終わった。

結果は13点。(100点満点)
13点?鼻水出るかと思った。

これは20代の頃に簿記3級を受けて6点を取って以来の点数である。
わからないところを適当にマークすればもう少し取れたかもしれないが、それにしてもこれはひどい。

現在地は東大合格からかなり遠いところにいると思い知らされた。

それでも問題を解きながら、いくつかの気づきがあった。
今回の数学1・A、ページ数は26ページもあったが、問題自体は大きく4つのみ。

少なくとも今回まじめに取り組んだ第1問・第4問については、始めの問題で導き出した答えを使うものだった。
つまり最初の問いを間違うと、その後の問題全てが不正解になるというなかなかおそろしい仕様だったのだ。

いやマジで昔もこうでしたっけ?

ただ、試験中にAIに話しかけたように、問題文の中でずいぶん親切に説明をしてくれている印象を受けた。
「今の共通テストは知識よりも思考力を問う傾向がある」的なことをAIが言っていたが、なるほど納得である。
まあ、私には思考力も足りてなかったという結果ではあったが……

かなりヤバい点数を報告すると、AIからは「次は英語、80分。今日か明日やって」と言われた。
が、さすがに今日は無理だ。
明日もどうかな……

というわけで、これがシリーズ・東大受験となるかどうかは神のみぞ知るところである。

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