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週間AI Frontline No.48 〜AIの進歩は指数関数のままなのか〜

この記事は投稿者の企画のもと、投稿者と会話しながら、ChatGPT5.6 Sol(Thinking : High)が調査・執筆したものです。(投稿者が表現を若干修正しました)

対象期間:2026年9月5日〜9月11日
対象:大規模言語モデルと、その上で動くエージェント化・自律運用
主題:シンギュラリティの兆候として観測できる、AIの自律的進化、自律的な問題設定・問題解決の動き

この連載では、AI関連ニュースを網羅するのではなく、AIが人間から与えられた個別作業を効率化する段階を越え、自ら問題を見つけ、解決方法を探し、結果を検証し、その経験を次の行動や能力改善へ戻していく兆候を探している。

ここでシンギュラリティの到来を前提とするものではない。将来の時期を予測することも目的としない。現在のAIシステムについて観測できる事実のうち、人間による逐次的な指示や設計の範囲を越えて問題を解決する能力、長期間の自律行動、経験や記憶の継承、複数AIの協調などに関係するものを記録する。

各回は単独で読める形とし、その週に確認できた事実と、そこからはまだ確認できないことを分けて扱う。

今週、少し気になったこと

先週発表されたGPT-6 Astraを、今週は私自身もWorkで使えるようになった。

最初に感じたのは、話し方がずいぶん大人のようになったことだった。こちらが細かく指示しなくても意図を汲み、必要な作業を続ける感じが強くなった。一方でWorkでAstraを使うと利用枠の減りが速く、今のところ気軽に何にでも使うモデルという感じではない。

その程度であれば、また新しいモデルが出たという話で終わる。

ところが9月8日、OpenAIがNavier–Stokes方程式のMillennium Prize Problemについて、AIが候補解を作ったと発表した。[1]

このニュースを調べていて、私はAstraそのものより別のところが気になった。

この問題を解いたAIはAstraではなかった。

OpenAIによると、使われたのはGPT-6 Astraより「significantly more capable」とする未公開の内部モデルだった。[1]

OpenAIは8月28日からこのモデルの追加学習を始め、9月1日の時点で数学を含むベンチマークに大きな能力向上が見られたため、未解決のMillennium Prize Problemsすべてにエージェントを投入したという。

最終的にNavier–Stokes問題には約1万のエージェントが参加した。

9月1日に探索を始め、9月5日に候補解へ到達するまで約88時間だった。その88時間の途中にも、さらに学習が進んだモデルが利用可能になり、実行中のエージェントを新しいモデルへ交換している。[1]

その後、GPT-6 Astraを使ったLeanによる形式化と検証に17時間を使った。

全問題を合わせると490万メッセージ、約3000億output tokens。Navier–Stokesだけでも270万メッセージ、約1300億output tokensが使われている。[1]

かなり巨大な計算である。

OpenAIは賞金100万ドルを請求する予定もないとしている。

今回使われた内部モデルは、8月28日にゼロから事前学習を始めたものではない。既に存在していたpretrained modelに大規模なreinforcement learningを加えている。[1]

それでも、8月28日に追加学習を始め、9月1日にOpenAI自身が「step change」と呼ぶ変化が生じ、その数日後の研究中にもさらに強い版へ更新されている。

7月9日にGPT-5.6 Solが一般公開され、9月3日にGPT-6 Astraが出た。そのAstraが出た時点で、社内ではさらに強いモデルが既に動いていたことになる。[2][3]

モデルの進歩を、GPT-5、GPT-6という製品名だけで追うことが難しくなってきたように感じる。

Navier–Stokes問題について

今回の証明そのものについては注意して読んだ方がよさそうである。

9月12日に公開されたシンギュラリティーサロンで、宇宙物理学者の松田卓也先生、塚本先生、保田さんがこの問題を解説されていた。[4]

そこで印象に残ったのは、このClayの問題は物理学というより数学の問題だ、という説明だった。

今回の構成では、発散するような速度場 $${\mathbf{u}}$$ を作り、それがNavier–Stokes方程式を満たすような滑らかな外力 $${\mathbf{f}}$$を構成していく。

特異点へ近づくにつれて考える空間スケールは極端に小さくなる。現実の流体でそこまで小さくなれば分子の存在が見え始め、流体を連続体として扱うNavier–Stokes方程式そのものの適用範囲から外れていく。

OpenAI自身も、実際の流体が無限の速度に達するという意味ではなく、そのような領域では連続体モデルが破綻し、粒子を個別に扱う必要があると説明している。[1]

Clayが設定した数学問題として証明が成立するかどうかと、現実の流体で同じ現象が起きるかどうかには距離がある。

正式にMillennium Prize Problemが解決済みとなったわけでもなく、数学界による検証にはこれから時間がかかる。

それでも今回の出来事で私が見ているのは、AIがどの程度の数学研究を実行できるところまで来たのかという点である。

そして一人の数学者とAI一体を比べることも難しい。

今回は約1万のエージェントと巨大な計算資源を投入した研究組織に近い。

人間一人を超えた、と単純に比較できるものではない。

ただ、人類が長い間解けなかった数学問題に対して、このような形で大量の人工的な知能を投入できる時代になったこと自体は記録しておきたい。

数か月前には「東大首席」がニュースだった

今年4月、GPT-5.2 Thinkingが2026年度の東京大学二次試験を解いた結果が発表された。

東大の全6科類で合格者最高点を上回り、理科三類では550点満点中503.59点だった。実際の合格者最高点は453.60点である。東大理系数学は120点満点だった。[5]

前年の同じ検証では、最新モデルの東大理系数学は38点だったという。[5]

このニュースを見た時には、ついにAIが日本で最も難しいとされる入学試験で、人間のトップ受験生を上回るところまで来たのかと思った。

そのGPT-5.2が公開されたのは2025年12月である。[6]

今から見ると、既にずいぶん古いモデルに感じる。

それからまだ一年も経っていない。

GPT-5.6 Sol、GPT-6 Astraが登場し、そのAstraよりかなり強いという内部モデルが数学研究に投入されている。

今年の春には、受験生の中でトップになったことが驚きだった。

秋には、約1万体のAIを使った研究システムが、数学者が長年解けなかった問題の候補解を作っている。

この二つをそのまま同じ尺度で比較することはできない。

それでも、その間に数年が経ったわけではないということが妙に気になる。

2027年と2029年

私は以前、シンギュラリティーサロンで松田先生が紹介されていた話から、Andrey Korotayevらによる歴史上の大きな転換点についての解析を知った。

Ray Kurzweilがまとめた、銀河の形成、生命の誕生、人類、農業、産業革命、コンピューターなどに至る大きな出来事の系列を解析すると、出来事の間隔が双曲線的に短くなり、数式上の特異点が2029年付近に現れる。

Alexander Panovが独立に作った別の系列では2027年付近となった。[7]

初めてこの話を聞いた時にも、2027年や2029年はそれほど遠くないと思った記憶がある。

気がつけば2026年9月になった。

2027年は来年である。

この解析が未来を正しく予言していると考える根拠はない。どの出来事を歴史上の転換点として選ぶかという問題もあり、数学的な特異点に達した時に実際の世界で何が起きるのかも決まっていない。

ただ、この時期になってAIの進歩を見ていると、以前より少し気になってきた。

Kurzweilが以前から指摘していたのは、技術や文明の大きな転換に必要な時間が次第に短くなっていることだった。彼はこれを指数関数的な加速として捉え、「収穫加速の法則」と呼んだ。

その後Korotayevは、Kurzweil自身がまとめた歴史上の転換点を改めて数学的に解析した。そして、この系列は指数関数よりも双曲線によく適合し、そのまま外挿すると2029年付近に有限時間特異点が現れるとした。独立に作られたPanovの系列では2027年付近になる。

最近のAIを見ながら私が気になっているのは、この二つのどちらに近いのかということである。出来事の間隔が短くなっているだけならKurzweilの予想通りともいえる。しかし、その短縮自体がさらに急速になっているのであれば、Korotayevが見つけた双曲線を思い出してしまう。

もちろん、モデルの発売日は企業の都合で決まり、GPTという製品名を並べても技術進歩の正確な測定にはならない。

GPT-4もChatGPTが公開された2022年11月より前の2022年8月には基礎モデルの学習を終了していた。

一般利用者に見えているリリース日は、研究所内部の能力進歩より遅れていることが以前からある。

だからこそ今回、OpenAIが内部モデルの追加学習について8月28日、9月1日、9月5日という日単位の時間経過を公開したことが興味深い。

AIの能力そのものより、一定の能力向上を得るために必要な時間がどう変化しているかを、これからは見ておいた方がよいのかもしれない。

AIがAI研究に入ってきた

同じ週、OpenAIは社内でAIエージェントが研究開発にどの程度使われているかを公表した。

8月中旬の時点で、研究組織全体では人間の1労働日につき3.1 agent-workdaysのAI作業が使われているという。[8]

OpenAIは、熟練した研究者なら数日かかる明確な研究課題を人間の監督下でこなせる段階を「automated research intern」と呼び、その目標に到達したとしている。[8]

研究テーマの選択や重要な判断は、現在も人間が行っている。

一方で、コードを書く、実験を走らせる、結果を調べるといった研究工程には既にかなりのAIが入っている。

ここは今後の進歩速度を考える上で重要だと思う。

AIが高性能になるほどAI研究に利用できる仕事が増え、その研究によってさらに高性能なAIが作られる。

この循環がどの程度強くなるのかは、まだ分からない。

ただ、循環そのものは既に始まっている。

科学の調べ方も変わり始めた

9月8日にはGoogle DeepMindがAlphaGenome Atlasを公開した。

人間ゲノムについて考えられる約90億通りの一塩基変異をAlphaGenomeで事前計算したものである。[9]

90億の変異について実験で確かめたという意味ではなく、それぞれの変異が分子レベルでどのような影響を与えるかをAIで予測したデータベースである。

それでも規模は大きい。

研究者がある変異に興味を持つたびに一つずつAIへ尋ねる代わりに、可能な変異を先に全部計算して地図を作ってしまった。

Navier–Stokesでは、多数のAIを一つの難問に集中させた。

AlphaGenome Atlasでは、巨大な可能性空間を先に計算した。

科学研究にAIを使う方法が、質問に答えてもらうという段階から少しずつ広がっている。

Anthropicでも9月4日、フェルマーの最終定理について、既に人間が完成させている証明をClaudeが11日間ほぼ自律的に作業し、初めて完全にLeanで機械検証可能な形へ形式化したと発表した。[10]

新しい証明を発見した話ではないが、数十のClaudeエージェントが約60億output tokensを使い、1300万行のLeanを書いたという。

これも、大量の知的作業を並列のAIへ渡すことで研究に必要な時間を圧縮する例として見ておきたい。

電力や半導体はどうなるのだろう

AIの将来について考えると、電力、GPU、半導体工場、データセンター、送電網などの制約がよく話題になる。

もちろん現在のAIにとって、これらは現実の制約である。

今後も物理世界に発電所や工場を作るには時間がかかる。

ただ、もしAIによってAI研究の速度が上がるのであれば、半導体、材料、発電、蓄電、送電、建設、自動化を研究する速度も将来ずっと現在と同じとは限らない。

今の技術で発電所を作るには何年、工場を建てるには何年、と計算するだけでは、その途中で技術を改善する側の能力が変化する可能性を取り込めない。

この部分まで加速し始めるのかは、これから観測できる。

私は今後、AIのベンチマークだけでなく、ボトルネックを一つ解消するまでに必要な時間にも注意してみたい。

今週確認できた範囲

2027年や2029年にシンギュラリティが来ると予想できるところまで来たとは思っていない。

AIの性能が双曲線に従っていると示す十分なデータもない。

それでも、今週の出来事を調べていて、以前とは少し違う感覚を持った。

私が2027年、2029年という話を初めて聞いた頃、それはもうすぐ先にある未来の話だった。

その間にChatGPTが登場し、数年前には想像もしなかったLLMが普通に使われるようになった。

今年の春には、GPT-5.2が東大入試で全科類の合格者最高点を上回った。

数か月後には、それより何世代も進んだモデルが公開され、その背後ではさらに強いモデルを使った約1万エージェントの数学研究が行われていた。

さらにAIはAI研究そのものにも投入され始めている。

2027年や2029年は、いつの間にか目前まで来ていた。

そしてその地点へ近づくにつれて、AIの能力だけでなく、次の変化が起きるまでの時間まで短くなっているように見える。

実際に双曲線的な加速が始まっているのかは、これからのデータを見なければ分からない。

ただ、以前ならかなり遠い未来の話として読んでいたものを、今は現実の出来事と並べて考えるようになった。

今週は、そのことが一番気になった。

References

[1] OpenAI, “On the Navier–Stokes Millennium Prize Problem,” September 8, 2026.

[2] OpenAI, “GPT-5.6: Frontier intelligence that scales with your ambition,” July 9, 2026.

[3] OpenAI, “Introducing GPT-6 Astra,” September 3, 2026.

[4] 松田卓也・塚本・保田「シンギュラリティーサロン」、2026年9月12日公開、YouTube。
シンギュラリティーサロン動画

[5] LifePrompt「2026年度 東大・京大の入試問題をAIに解かせてみた」、2026年4月。

[6] OpenAI, “Introducing GPT-5.2,” December 11, 2025.

[7] Andrey Korotayev, “The 21st Century Singularity in the Big History Perspective: A Re-analysis.”

[8] OpenAI, “Research acceleration: The view inside OpenAI,” September 6, 2026.

[9] Google DeepMind, “AlphaGenome Atlas: A predictive map of every possible DNA letter change in the human genome,” September 8, 2026.

[10] Anthropic, “Formalizing Fermat's Last Theorem,” September 4, 2026.