選ばれたい男女 同じ季節の中で ―その髪、いつ切る…第11話  

ヨウコの家

コスメ大好き 覚えたての化粧 

弟がじっと見ている。

大都会の近く。チェーン店だらけ。

田んぼ。


「6年生になるとしっかりしてますね」

「そうですね、あ、〇〇さん、こちらサキコさん」

「初めまして」

小学生の体、大きい、小さい

「うちの子、坊主にしちゃった」

「似合うね、かわいっ」

「ソウ君いくつになったの?何年生?」

「今年の秋で8歳よ、もう2年生」

こうやって坊主にも慣れてくるんだ。

神社の奉納相撲。

小学生のマワシ姿。

母たち、裸足。

ここは裸足。


夏、朝早い。

サキコは朝早くに起き、公民館で米をとぐ。青年の男たちは神社で準備

子ども達は相撲だけ取る。いつかは大人になるんだけど。サキコは息子ソウの顔を浮かべる。まだまだ小学2年

サキコの姉 フウコ

一つ年上のフウコ、今年はソウが見たいってことで米とぎ、おにぎりづくりしている。


去年の今頃、札幌に。コンサートに行ってた姉。ライブね ライブ

フウコは推し活が生きがいって。

推し活って。追っかけじゃん。なによ

まだ推し活やってんのか、30過ぎて

年齢じゃないけどね。

いつまでたっても、私、一個下。

去年はちょっと神社に顔出して、札幌に行ったフウコ

フウコ「あら、1年生になったのよね、可愛いっ。ふんどし似合うねー」

サキコ「これマワシよ」

フウコ「かっこいいねー」

いい叔母さんの演技してんじゃん。

馴れ馴れしくソウの肩をチョンと触る。札幌に行く。


フウコ

札幌まで飛行機

わざわざ飛行機で行く

ああ、推し活もなあ

推し活セットを持ち運ぶ

ドーム内、看板アド、広告・・・ほとんど家族もちのためじゃん

ドーム

普段は野球のドーム

今日は、私のためにコンサート ライブ ライブ

って言ったって何万人って客がいるじゃん。

ドームに並ぶ年配の皆さん。あんなおばさんにはなりたかないねって言ったって、私も足突っ込んでるし。

ドームって嫌なのよね

看板広告見ると現実にもどる

保険、マイホーム、電気、ガス・・・

夢の世界じゃない。

現実。

興奮するさ、推し活だし

終演

ホテルに帰るのが嫌。飲んじゃえ。

アルコール漬けにしてホテルに。

ホテルひとり。

あーあ、明日の朝が嫌だよ。家族連れいるじゃん。

カウントダウンが始まる。毎日。夜に始まる。

この身体、アルコールにひたしていいの?

あと何年 あと何日

こんな生活がいつまで?

シャワーを浴びる。ソウの姿が浮かぶ。

ソウからすれば母ちゃんの姉か。私はおばはん。あーあ

髪を乾かす。

半乾き

どうしよ どうしよ

翌朝、案の定。

家族連れ

ここの朝食がおいしいのは知ってるけど、

無理無理。

さあ、観光

タクシー、

どさっ


ソウ 2年生、夏

サキコ「今年は推し活じゃないんだ」

フウコ「今年はソウを見たいの」

神社

エプロンして裸足のサキコ

エプロンのフウコ。髪は一つ結び。

サキコ「くつ、ぬいだら?」

フウコ「まだいいじゃん、子どもらいないし、踏みそうだったら脱ぐよ」

そうじゃないんだけど


フウコ「だれ あの子?」

サキコ「ん?」

フウコ「あの金髪ネックレスの」

サキコ「ヨウコちゃんよ」

「えっ あんなに大きくなったの?」

「〇〇大に行ってるって」

フウコはクラっと来た。

あんな難しい大学・・・。

なんでサキコは落ち着いてんの?

「ヨウコちゃん 髪なんか染めて」奥様方の声

「化粧なんかしなくも、かわいいのに」さらに奥様

サキコ「そうよ・・・」

サキコ、お前もか

えい、フウコが靴を隅に置きに行った。

裸足で戻ってくる。

知ってるよ、もちろん、ここは裸足よ。

雑談 笑い 雑談 笑い

「ヨウコちゃん、ここ靴脱ぐのよ、知ってるでしょ」奥様方

「はーい」

ヨウコには言うんだ。私には言ってくれない。


ヨウコがマワシ姿の子と一緒にいる。

金髪のヨウコ、無垢な弟。

「そっか、あの子、弟か」サキコ

無言のフウコ。追いつかない。頭が。

「何年生だろ?うーんソウよりずいぶん大きいな」

もう言わないで。

「マワシ、緩んでんじゃん」ヨウコ

「ここちょっと引っ張って」弟

「うまくいかないよ」

「おじさん、緩んだって」ヨウコ

「こっち来な」おじさん

弟が連れられる。

ヨウコも行く。

なんか来るなって言われてる。

でも行っちゃった。

木と木に大きな幕。

ヨウコちゃん入っちゃった。

「ヨウコちゃん、覚えた?」サキコ

「ばっちり」ヨウコ

え? どういうこと?

ソウを呼ぶサキコ。

「ソウ、まわし緩んじゃったね。」サキコ

サキコとヨウコでソウを見る。

「ヨウコちゃん、締めてみる?」サキコ

大きな幕の向こうに行った。

しゃがむフウコ。

ソウが幕からぴょんって出てくる。

ヨウコ、サキコ、幕から出てくる。

キリっとなったソウ。

「ヨウコちゃん、覚えたの?」奥様方のひとり

「サキコさんから」

「あら、サキコちゃんから習ったの」奥様

どうせ、覚えるのはやいんでしょ


そんなの覚えて何になるのよ。女でしょ。女は相撲しないじゃん。フウコの声が脳内で回る。しないよね。

マワシなんて。

締め方。

しゃがんでいるフウコ。横腹に手。太ももの内側。

そんなに締めて。って、、、。

縛って。痛くない?

腰に手を当てる。そのまま下におろす。指で押す。ずん。

ちっちゃい子も締める、、、。

あー良かった、女で。

でも
いっそのこと男がよかった。

石段の前

サキコ、ソウ。

母と子

餅みたいなおしりを触るサキコ。小さなお尻。生。

ぷる。

食い込むまわし、お尻に食い込む。細い。え、細いとこも触る?

緩まないか確かめた?

親ね、なんでもあり。

なんかしゃべってる。

痛いって言いなよ、ソウ君。そんなに縛られて。

えー笑うの、ソウ。

おしり、あ、また触った。さすった。

えっ

つまむ?つまんでんの?

軽く握って、ちょっとパシっ。

見なきゃよかった。

サキコに絡みつくソウ。笑顔


灯ろう、丸刈りの子。青い頭。
背が高い。で、まだ細いな。
だれの子だろう。
あんな子いたな。

おじさんから触られてる?たたかれてる?スキンシップ?

考えすぎ。普通じゃん。

いいお尻、ソウと全然違う。パシ!

今から土俵に上がるのね。

キリっと締まってるね。

お辞儀もきれい。

しっかり見せなさいよ。うふ

取り組み

取っ組み合い

バシバシ、うわっ、張り手

うわっ、痛いぃ

やっと組んだ

止まった。

え、持ち上げんの

マワシ握って

ふう

なんか止まった

組み合ってる

あ、あ、押し出されて、倒れる。

おわった。

綺麗な肌が。

真っ赤っか。

お尻の下のほう、擦り剝けてる。

最後、押し倒されたからね。後ろに倒れて。

あ、血。

血、血よ。

泥、肌、血ぃ

私行こうか。

あ、お母さんかな

来た。お母さんね。

何笑ってんのよ。

たたくの? 今?

え、ホースで

水かける

あ、また叩く。

え、何、泣いてんじゃん

痛いんでしょ。

どっち?悔しいの。

もう、また叩いてる。

話聞いてあげて。

「今の良かったね」サキコ

「もうちょっと踏ん張れたのに」ヨウコ

泥ついた傷口よ。


この人 どう?

「どう?っていわれても」フウコ

バツイチの男なんて。

ちっちゃい男の子もいるって?

話にならない

で、

バツイチのオトコすら28の女がくっついた。速い。

なんなの。

札幌を思い出す。夢と虚構のオトコ。

バツイチの男の息子も相撲出てるじゃん。なんだい。

え、28の女ってあの人?

おなか大きい

乾いた土の上に座るフウコ

自分の腕を見る。手の平から肘まで触る。

スー

もう一回触る。

アキレスけんを触る、こする

かたい。

足の指

足裏の砂

おなか。ぐにゅ

なんともない。平気 


私がいなくてもおにぎりはたくさんあるし、

箒持って掃くのは男だし、

マワシなんか締められないし、

誰も教えてくれないし、

オトコは断ったし、

し、し、し、

帰ろっかな。

負けない

残る。

こんな時、残るからいけないんだよな

飲み会の終わりもぐずぐずいるし。

意味ないんだよね。

若い子ばっかりなのに私がいるなんて。

もうさ、アルコールはやめ。

終了。

ただでさえ、からだ終わってんのに。

終わっちゃいないよ、まだ。

大丈夫。

まだ産める。って大丈夫か?私。

大学生か、若いな、

化粧が楽しいよねー。そりゃねー。

鏡ばっか見るよね。

髪も染めたいよねー。

化粧。化け。おばけよ。くそっ。

ご婦人たちの顔

何よ、最近は嫌味も言わない時代になったんよね。

ホワイトな感じよねー。どこも。


裸足になった。

何年ぶりだろ。

小学校の体育のときかな

神社も裸足だったな

空気よんで一目散に裸足になったのに、あの時は。

物わかり良かった。

アルコール、行くか?

やめとこ。


え、大人もマワシ?

ぞわ

こっちが恥ずかしくなる。

「前からあったよ。四股踏みだけ」サキコ

記憶、記憶 あった。

「四股踏むだけよ」サキコ

サキコの旦那。なんか弱っちいが、四股。

サキコと旦那。

旦那の腕に、細い指、指輪。

ソウも近寄る。エプロンのサキコ。

大きな木 小さな木 

鳥の鳴き声がする。葉っぱの緑

うわ、誰?

「〇〇くん、大きくなったね」声が聞こえる。

四股、

土俵降りる、

ヨウコが迎える

「大学でできた彼氏よね」

聞きたくない。

帰ればよかった。

こうなるんよね。

このまま残れば、もっと。

もっと嫌なことがある。

いつもそう。


実家に帰れば、何か起こる

フウコはわかっている。

絶対いやなことが起きる。


結局最後までいた。

神社にいた。

いっぱい見た。

大きな幕の向こうにみんな行った。

わかるよ

わかるよ

なにしてるか

でも

わかんないよ

やりかた

教えてあげよっかって、そんなのいらないよ

いらない

セミの羽

幕の向こうに行く前に、帰るよって言えばよかった。

もう帰ります、また来年、ってなんで言えない、私。

ひとり

公民館行くか。

行ってもな

勝手があるだろうし、

私、いらないし

実家

行ったらどうせ。でも、

行かなくてもへんだし

ソウに声かけないと、

がんばったねも言ってないし

ホントはソウを見に神社に。


結局実家にいる。

サキコもいる。

大きなものほし竿

実家にしかない。

マワシ2本

長い。

がんばったね。やっと言えた。


コショウとってきて

ソウが走る

トイレットペーパー切れた

サキコが押し入れを開ける

実家って。

あれ スプーンがない

置き場変えたのよ

ソウがスプーンを持っている

ソウのほうがわかってる

へとへと。自分の場所に。フウコ


ワンルーム 家賃高い 

家買わないとお金なくなるばかりよ、、、

うるさい

自分の場所に帰っても声が聞こえる

シャワー

ドライヤー

止まるな 止まるな

考えるな

寝るぞ

おもしろい寝落ち動画見ながら

ああ、いらない声が聞こえてくる

脳内で再生すんなよ

はいはい 無視無視

動画動画

全然おもしろくない

今日は疲れたはず

眠れるはず。

眠れない。


「(義理の)姉さん 来てくれたね」

「そうね」

これ以上会話が進まない。

旦那もわかってる。

紹介しようにもなあ。

大きな幕の内側の男達

人一倍空気を読むのがうまかったフウコ

サキコ「真似したんだけどね、神社での動き」

「義姉さんの?」

「そう、動き、フウコは高校生の時までバシッとしてたんだから」

もう寝ようか。

サキコ「ソウ、かっこよかったね、勝ったじゃん」

旦那「うん」

サキコ「あーっ、あんた、四股」

「ごめん、緊張した」

「足、しっかりあげろって、ぷっ」

サキコの笑い

ソウ 寝てる

「来年も出るんでしょ、稽古しなよ、四股」

「結構やってんだけどな、寝る前とか」

「そういえばしてるね」

「うん」

「緊張すんのね」

「する」

「マワシしてやれば?本番通り」ニッ 

「そこまでしなくても」

「締めたら?ぐいーっと」ニッ

サキコはニンマリ。

「いいよ、しならく無理。なんかきつい。本番前、四股踏みすぎた」

知らなかった

未婚の男は、もっともっと、である。


ヨウコちゃんいいな

オンナ満喫よね

キラキラ、アクセサリー 

いくらしたの?

おにぎりも、若い 

食べ物すら若くしてしまう

私、もう握れない あんなの見たら

高校生の時の私、バシバシ握ってたな

褒められて 褒められて

なんだい、あの彼氏、尻なんか見せて、見たくない

来るなよ

って言うか、来るなって言われんのは私か。

尻、相撲だし。普通。

10年以上前か、高校生は。

あんとき勉強してたらな。

してたよな

しっかり

何時間した?

ん?何時間?

でもな 物覚えなんだよな

大学院行った子たち、バケモンだったよな、すごく出来がいいって言うか、 

なんでもサラリってするよな

ヨウコちゃんもそうなんだろな

化粧も、おにぎりも、、、。

あ、大きな幕の向こうで覚えてたな、締め方

サキコか、教えたの。

不器用だったのにな、サキコ

ヨウコちゃん、彼氏もいるのか


車、ビル、雲

階段

電話

いつもの場所

自分のデスク、いつもの窓

夜、買い物、ワンルーム

フウコは、毎日同じ空気を吸う。

同じ場所でシャワー、ドライヤー、寝る。

洗濯、私だけ

マワシなんかない

ヨウコちゃん何してるかな?

大学行ってるかな

就職活動、失敗しないかな

悪い、私

どうせ大学院行くんでしょ。どうせ。

マワシ洗ってんの?もしかして ヨウコちゃん

無心に洗っているヨウコの顔が浮かぶ。

干しているヨウコ。

白い

彼氏と見てんの、乾くまで。

ないな。

まだ大学生だし、結婚してないし。ない。それはない。

結婚かあ。

神社

サキコの一つ上の私、誰も見ていない。

誰かに見つけられるために来たのに。

違う。ソウを見に行ったの。はい。

誰も私を見ていない

婚活よ これ

あれ、品評会よね。奥さんたち、審査員。

腹立つけど。

朝の公民館から、神社

帰り、

、、、たったそんだけじゃん。

長かったなー。

私、品評会に出たのかな。かすりもしなかった。

え、もしかして、サキコ、審査員?サキコが?ウソ。

でも、サキコ、審査員しかないよね。奥様だもん。

ヨウコに「化粧なんてしなくていいよ」って言ってたよね、サキコは。そういえば。

なんか、市場に並べられた感じ。

男は土俵に上がる。裸で。

ギューッとズーンって締めて。マワシ。

お辞儀して。きれいね。

蹲踞して。胸張ってるね。脚広げてるね。

四股踏んで。足、高いね。ももの内側、全部見せるんね。

これでもか、これでもかってね。

だけど、私は地べた。

地べた。それも端っこ。

どうやって見てもらうの。

ネズミみたいにうごいてやろうか。

ここ、ここよ。見て、見てよ。

あそこにいたオトコたち。

オトコも。品評されるね。

いっぱいいっぱいで見れなかった。誰か後で紹介してよ。あそこにいたオトコなら。

いい。あの場所。

未婚のオトコたちが四股踏んでた

市場ね。いっそのこと値札つけてよ。

ソウを見に行ったの。来年もソウを見に行くの。


ヨウコの実家

弟のマワシ洗うヨウコ

結構、小学校で相撲やるのね

ごしごし ざばー

いつか洗ってあげるんかな、

彼氏の顔が浮かぶ。

彼の四股、見るのなんだか恥ずかしかった。

幕の向こう行ってマワシの締め方習った。弟つれて。

ずっとここにいるんかな、私。

庭の柿の木を見る。

一人暮らしの大学生いいな。

大きな物干し

干す。まだまだ、今はいいよ。弟だけで。

弟だけで十分。

マワシの匂い。

水を吸ったマワシは、まあまあ重い。

よいしょっと。

暑い

大きな物干しざお、ないと困るな。

ピンと張って。

弟が庭で遊ぶ。

「コンニチハ」

「あ、サキコさん」

「あら、洗濯?」

「弟の」

「大変でしょ 場所とるし」

「腹が立ちます」

ふふふ

「うちなんか、2本よ」

今、冷たいの準備します

氷の音

同じ季節の中で

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