閉じてから
お笑いの偏差値というものがあったら、我が家は35ぐらいだろう。アルコールが入った時には25くらいまで低下する。
私が「大吉大吉ぃーーー」とIKKOのモノマネをするだけで妻は飽きることなく笑っている。そしてお尻を出して見せれば「桃だあ!」とペチペチしてはケタケタと転がらんばかりだ。こういった時、私たちは小学校低学年くらいの兄妹であるかのように錯覚する。
しかしてその実態は、肝機能が低下した40過ぎの男と、50を過ぎた女である。
一年前、妻は閉じていく体と戦っていた。筋腫もあり出血は多量、貧血に至るほどだった。抑制する服薬も、状況を好転させない。終わりぎわが大変とよく聞くが、なんでこんな仕打ちを受けなくてはいけないのか、理不尽だと側から見て感じた。
体調の低下は当然メンタルにも影響する。それでもやや落ち込む程度で済んだから、大したものだと思う。同棲を始めたばかり、二人の関係性がフレッシュな時期で、当たり散らす方向にたまたま進まなかったのだろうか。ヒステリックになっても当然な状況に思える。
結局服薬での軟着陸はできず、数ヶ月に一度の点滴で強制的に終わらせることになった。数回目の実施で「終わった…のかな?」とやっと落ち着いたのは、もう年末の頃だった。
不調を抱えつつも就活した甲斐あって、年明けからは新しい職場へ。けれどどうにも合わない職場で、精神科の薬が必要な状況になった。結局数ヶ月でその職場を辞した。
それでも次を諦めず現在の職場へ。最初は職場に馴染むのに苦労して、薬に頼ることも多かったが、最近やっと落ち着いて、余裕をもって仕事に臨めるようになった。
そんなある日、遅い勤務の日、顔を真っ白にして帰ってきた。仕事がもう少しで終わるところで、頭痛と吐き気が現れたのだという。
血圧が高い。数日前から太ももが張っていると言う訴えがあった。肩から首にかけてひどく凝っているような感覚があると言う。
バファリンを飲んで横になっていると少しよくなったという。首や肩をマッサージしてみる。少し良いと言う。顔は白い。
翌日だいぶ良くなったと普段の顔色で言う。内科を受診する。特に病的な状態にはなさそうとの診断で鎮痛剤などをもらう。
とりあえずはほっとした。
「血圧高かったり、体が凝っていたり、色々見直さないとね。閉経後は色々とバランス崩れるから、気をつけます。」そんなことをいつもの顔色で言っていた。
翌日、仕事から帰ってくるとまた顔が白くなっている。「良くなったと思ったんだけどな」と。
なって間もない状況だから、少し様子を見る時期だろう。しかし白い顔。普段食欲は結構旺盛な方だが、今晩も食べないと言う。
仕方なく妻には休んでもらって私一人食事する。テレビもYouTubeもひどくつまらない。白い顔を見る。目を閉じている。諦めて食べ進めていると視線を感じた。後ろを見ると妻はじっとこっちを見ていた。
振り返ってみれば、妻は随分長いこと何かしらの不調を突きつけられ続けている。ようやくひと段落ということもなく、体の巡りなのかなんなのか知らないが、苦しんでいる。誰が悪いわけではないが、腹が立ってくる。白い顔をした彼女に、今この瞬間私ができることは一体なんだ?
私はズボンとパンツを脱ぎお尻を突き出して後方で横たわる妻に見せた。
「桃。」うふふと妻は笑った。
お尻を突き出しつつ、今後を考える。私たちは小学生ではないから、無理なく良く生きていける方法を、考えなくてはいけない。
温泉でも行ってみたらいいかしら。
