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「夜店から」 - シロクマ文芸部


「夜店から」


迷い込んだ3人

  • ルリア: 現実感覚だけは失わない省エネギャル

  • エレジー: 何でも自分の悲劇に変換する地雷系女子

  • アイス: 知識を雰囲気で語りたがるサブカル女子



ルリア:
は? ちょっと待って、ここどこ。お祭りから一瞬で変なとこ来たんだけど。てか、赤色灯多すぎ。ラブホ街? 目がチカチカする。


エレジー:
……っ! これ、SNSでバズってた「大正レトロ風コンセプトカフェ」……? いや、違う。この本物の、退廃の空気……。間違いない、吉原だ……! ……エモ死(ぢ)ぬ……。


アイス:
エモいとか安易な言葉で片付けないでくれる? この建築様式、および格子の配置……うん、完全に江戸後期の新吉原だね。これ「さくらん」とかで見たやつじゃん。要するに、私の持つサブカル的感性に導かれて、ホンモノの「夜店」に辿り着いちゃったってワケ。



客引き

  • ルエ: 自分の顔しか見ていない客引き

  • ロニカ:隣の店に振り回されるマジメな客引き

  • スティ:どっちの店の手伝いか分からない、電波なチラシ配り。



ルエ:
はーい、そこの迷子のお客さんたち! そこのちょっとサブカル拗らせてそうな女の子も! 立ち止まってないで、ボクの美貌にひれ伏しながらお店に入っちゃいなよ!


アイス:
な、何この人……。自分をアイドルのプロデューサーか何かと勘違いしてるの? 顔は整ってるけど……はい、関わりたくないタイプおつ。


ロニカ:
こら、ルエ! 勝手に他所の縄張りまで出てきて声かけるな! お前の店はそっちやろ! ……すんませんね、そこのお嬢さん方。そいつの胡散臭い店なんか行ったら財布の底まで毟り取られます。入るならうちの健全な老舗にしとき。太夫も揃うとるから。


エレジー:
……なんか、関西弁でグイグイくる客引きの人……怖い……。威圧感でエレのメンタル削れる……つらたん……。


スティ:
……我は境界線上に咲く一輪の徒花……。こちら側の光も、あちら側の闇も、すべては「VA-11 Hall-A」のガットパンチのようなもの……。このチラシ、裏に、推しイケボ配信者の配信スケジュール書いておいたから。みんなフォローして、夜は一緒に寝落ち通話しようね……。


ルリア:
は? てかこのティッシュ配りの子、何言ってんの? 喋り方めちゃくちゃ不気味なんだけど。マジむり。てか、お腹空いた。お祭りみたいな「夜店」じゃないなら、焼きそばとか売ってないの?


ロニカ:
スティ……。お前は遊郭の入り口で勝手に自分の個人Xアカの宣伝すな! あと、そこのギャルのお姉ちゃん、ここは焼きそば売るような「夜店」やなくて、大人の「夜店」や。そこの格子の中にいる女の子たちを買い受ける場所やで。




格子の中

  • アイカ:斜に構えた現実主義の遊女

  • ミステ:外の人間を煽る好戦的遊女



アイス:
なるほどね……。つまり、あれが張見世。格子の中に女性たちが並べられて、客に選ばれるのを待っている。いわば男尊女卑の象徴でありつつ、一方で独特の退廃美が……。


アイカ:
何あいつら。うるさいんだけど。外で偉そうに蘊蓄語ってるあのサブカル女、マジで底が浅そう。興味ないからどっか行ってほしい。


ミステ:
あはは! いいじゃんアイカ、退屈しのぎにちょうどいいオモチャが来たぜ! ねえ、そこのサブカルのお姉さん! さっきから何知ったかぶって語っちゃってんの? そんなに遊郭に詳しいなら、ウチらのこと、いくらで買い受けてくれるわけ? まさかお金も教養もない、口だけサブカルじゃないよねぇ?


アイス:
な、ナメないでよ! 私はこういう退廃的な空間の持つ美学を消費しに来ただけであって、べ、別にお金がないわけじゃ……。


エレジー:
冷たい檻の中で、男たちの品定めの視線に晒される遊女たち……。でも、それって今のエレと同じ。スマホの画面という檻の中で、いつ来るか分からないフォロワーの「いいね」を待つ、令和の遊女……エモ……。これ今すぐ自撮りしてポストしよ。


ミステ:
あはは! アイカ見ろよ、あの外にいる地雷女! 檻だの何だの言っておきながら、必死に自分の顔を「奇跡の角度」で自撮りしようとしてる! ウケるんだけど!


エレジー:
えっ……。


ミステ:
ねえ、そこのお姉ちゃん! ウチらをダシにして自己演出するのやめてくんない? 結局さ、自分が一番可愛くて、誰かにチヤホヤされたくてしょうがないだけでしょ。下心が透けて見えてんの、マジで必死すぎて草。なんでもかんでも自分のエモいポストの肥やしにするなよー!


エレジー:
……剥き出しの悪意……。そうやって、誰もエレの本当の孤独を理解しようとしないんだね。でもいいの。この胸に深く刻まれた生々しい傷の数だけ、エレの魂は透明になっていくから……。つらみだけど、これがエレの宿命なんだね……。


ミステ:
はあ!? ちょっとアイカ見てよこれ、ウチの煽りが全部こいつの演出に吸い込まれてんだけど! マジで意味わかんねー、ゾッとした!


アイカ:
……うん、関わらない方がいいよ。その人、攻撃されるのを楽しんでるタイプだから。自分の傷口をSNSのサムネイルにして喜ぶタイプだよ。



隣の店

  • レーサ:無邪気で純粋な遊女

  • レベマ:プライドの権化。お嬢様的遊女


ルリア:
エレジーのせいで、店の女の子がマジ引きしてるじゃん。うける。……ん、でも隣の店の子は、キツそうな目でうちらのこと睨んでる。超怖いんだけど。


レベマ:
そこの低俗な見物人。あなたの言っている「美学」とやらは、二番煎じのサブカルチャーのnoteから適当に繋ぎ合わせた薄っぺらいハリボテに過ぎませんわ。私は最高学府で本物の美学を修めた身。そのような浅はかな知識で、この由緒正しき吉原の歴史を語るなど、屈辱の極みです!


アイス:
えっ……あ、いや、ええと……三島由紀夫が、その、金閣寺で、美について語ってて……。


レベマ:
「夜店」
の語源やこの街の制度を語るなら、当時の吉原における「引手茶屋」のシステムと、それに対する幕府の法規制の変遷を、今すぐこの場で論文レベルで述べなさい! さあ!





アイス:
あ、ああああ!(精神崩壊)


レーサ:
あわわ……! お外のサブカルお姉ちゃん、頭を抱えてぐるぐる回っているのです! お利口さんになりたいのに、とってもお勉強が難しそうなのです!




ルリア:
はー。なんか、客引きも、格子の中にいる子たちも、みんな揃って性格悪くてだるいんだけど。てかアイス、あんたプライドズタズタじゃん。もう帰ろうよ。ここ、マックもないし。


ロニカ:
せやな……なんかお互い全然話噛み合ってへんし、そこのサブカルの姉ちゃんは真っ白に燃え尽きとるし……。おいルエ、スティ、もうこのお客さんらはええわ。帰したれ。


ルエ:
えー? ボクの圧倒的な可愛さに免じて、チェキ1枚くらい撮っていってくれてもいいのに。もちろん有料だけどね!


スティ:
我は、夜店の提灯に群がる虫……。あるいは、消えかけた虚無に浮かぶ、正体不明の湯の花……。ねえ、みんな、そんなに殺気立ってると脳のニューロンが死滅するよ。お腹空いたなら、一緒に布団に入って、ゲーム実況見よう……? Slay the Spireのディフェクトで心臓を倒す方法を……。


ロニカ:
うわっ!? スティ、お前いつの間に入れ替わってレーサの隣におんねん! お前は客引き側なんか、格子の中側なんかどっちや!


レベマ:
誰があなたと添い寝などするものですか! 破廉恥な!


レーサ:
わたし、お腹ペコペコなのです! ポテトのLサイズが食べたいのです!


ルリア:
あ、それだけは同意。ポテトLサイズ、マジ食べたい。アイス、エレジー、起きな。マック行くよ



カランカラン。
下駄の音が響き、夜店の赤い提灯が、
夜闇にゆっくりと溶けていくのであった。





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floater 読んでくれてありがとう