わが家の子どもたち、同じ親から生まれたとは思えない
ただいま17時。
長女が部屋から、あくびをしながら出てきた。
どうやら寝ていたらしい。
本当によく寝る。
小6になった今でも、20時を過ぎると眠そうにして、そのまま寝てしまうことも珍しくない。
昼寝をした日は?
関係ない。
2時間昼寝をしても、夜は普通に寝る。
一方で、朝は早い。
5時に起きて勉強をしている。
誰に起こされるでもなく、自分で起きて、自分で机に向かう。
夜更かしして朝寝坊する母としては、同じ家に住んでいる人間とは思えない。
というか、私が産んだとは思えない。
長女は、昔から長女だった
長女は、とにかく真面目だ。
宿題はやる。
習い事も、簡単にはやめない。
「嫌ならやめてもいいんだよ」
と言っても、
「でも、ここまでやったから」
と続ける。
責任感なのか、負けず嫌いなのか、もったいない精神なのか。
母にもよく分からない。
ただ、昔から「ちゃんとやる」が染みついている。
そしてマイペース。
急いでいる朝でもマイペース。
集合時間が迫っていてもマイペース。
「急いで!」
と言われても、急いでいる“つもり”ではあるらしい。
見た目にはほぼ変化がない。
本人の中では、おそらく通常速度の1.2倍くらいになっている。
母には分からない。
そして、長女は可愛いものやキレイなものが大好きな、いわゆる“ザ・女子”である。
キラキラしたもの。
可愛い文房具。
ちょっとおしゃれな雑貨。
ファッション。
そういうものが昔から大好きだ。
今でも服や小物を見るのが好きで、本人なりにあれこれ研究している。
母が、
「それ可愛くない?」
と見せても、
「うーん、ちょっと違う」
と返されることも増えた。
はい。
もう母より自分の好みがありますね。
真面目で、
よく寝て、
朝は早くて、
可愛いものが大好き。
これが長女。
次女は、人生何周目なのだろう
次女は、ときどき思う。
あなた、人生何周目ですか。
妙に達観している。
家族で出かけるとなると、誰よりも早く準備を始める。
まずリュックを持ってきて、
ティッシュ。
ハンカチ。
飲み物。
ここまでは分かる。
さらに絆創膏。
暇になったとき用のおもちゃ。
敷物。
おしりナップ。
そして、おやつ。
待て待て。
勝手におやつを持ち出すな。
気づいた頃には、遠足にでも行くのかという装備が完成している。
一方その頃。
長女はまだ、
「何着ようかな」
と服を眺めている。
末っ子は、
「靴下どこー?」
と叫んでいる。
私は、
「早くしてー!」
と言っている。
その横を、すでに身支度を終えた次女がリュックを背負って通過する。
そして玄関でソワソワしながら待っている。
早い。
何をするにも、家族よりワンテンポ早い。
「そろそろ出るよ」
と言った頃には、もう靴まで履いている。
そしてこの人、昔から感性も少し独特だ。
小さい頃、工事現場にショベルカーがあると、立ち止まってじっと眺めていた。
男の子みたいに「ショベルカーだー!」と喜ぶのかと思えば、
うっとりした顔で、
「キレイねー♡」
と言っていた。
キレイ?
ショベルカーが?
母にはまだ、その美しさが分からない。
今もその感性は健在で、
服にも独自のこだわりがある。
上下ほぼ同じ色。
そこに同じ色の靴下。
なんなら全身ワントーン。
「それで行くの?」
と口を出そうものなら、
なぜその組み合わせが素晴らしいのかについて、こちらが一言言った分の何倍もの説明が返ってくる。
なので最近は、
そっとしておくことにしている。
ファッションとは自由である。
たぶん。
そして食の好みまで渋い。
漬物が好き。
煮物が好き。
魚が好き。
誕生日に何が食べたいか聞いても、
出てくるメニューがだいたいおばあちゃん。
もう少しこう、
ポテト!
唐揚げ!
ハンバーグ!
みたいな感じはないのだろうか。
準備は早い。
好みは渋い。
感性は独特。
人生何周目なんだろう。
末っ子は、考えるより先に体が動く
そして末っ子。
この人は、また全然違う。
考えるより先に体が動く。
思いついたら走り出す。
猪突猛進。
小さい頃は、本当に一瞬たりとも目が離せなかった。
外を歩いていても、
「あ!」
と思った次の瞬間には走り出している。
こちらが、
「待って!」
と言った頃には、もう数メートル先。
だから幼い頃、私はフード付きの服をよく着せていた。
おしゃれのためではない。
突然走り出したときに、
フードをつかむためである。
そうでもしないと間に合わない。
幼児用安全装置。
用途が違う気もするが、母には必要だった。
正直、
この子、この先大丈夫なのだろうか。
と思ったことは何度もある。
幼稚園ではちゃんと座っていられるのか。
学校に行ったら授業を聞けるのか。
先生の話の途中で突然どこかへ走っていったりしないのか。
かなり心配していた。
ところが。
小学生になったら、なぜか落ち着いた。
学校ではちゃんと座って授業を受けているらしい。
先生の話も聞いているらしい。
……信じられん。
家で「ねぇねぇ!」と言いながら走り回っている人と、本当に同一人物なのだろうか。
学校に出来のいい分身でもいるのでは。
頭の中はいつも数字
そして末っ子は、数字が大好きだ。
これは男の子あるあるなのか、本人の性格なのか分からない。
道路標識。
車のナンバー。
時計。
値札。
カレンダー。
目につく数字があると、すぐ計算が始まる。
「これとこれ足したら○○でしょ」
「じゃあ○○引いたら?」
「○○があと何個あったら100?」
一人でぶつぶつやっている。
こちらが会話している横でも、突然数字の世界へ入る。
今それ計算する必要ある?
と思うのだが、
本人にはあるらしい。
長女が道ゆく人のファッションをチェックし、
次女がショベルカーを「キレイねー♡」と眺め、
末っ子は看板に書いてある数字を足している。
同じ景色を見ているはずなのに、
見えているものが全然違う。
年上にも、ためらいがない
末っ子には姉が二人いる。
そのせいなのか、昔から年上の子に対する抵抗がほとんどない。
公園でも、
習い事でも、
年上の子たちが集まっていると、普通に入っていく。
ちょっとくらい遠慮するとか。
様子を見るとか。
そういうものはない。
「何してるのー?」
と入っていく。
そして優しいお兄さんたちが相手をしてくれる。
ありがたい。
本当にありがたい。
なのに。
気づくと、そのお兄さんたちの真ん中で一人だけ偉そうにしている。
なぜ。
一番年下ですよ。
「次これやろう!」
とか、
「それ違うよ!」
とか。
やめとくれ。
お願いだから、その優しいお兄さんたちへの敬意をもう少し持ってくれ。
本人は完全に仲間だと思っている。
むしろ、なんなら仕切っている。
この遠慮のなさ。
人見知りな長女にはない。
赤ちゃん好きな次女にもない。
末っ子特有なのか、この子特有なのか。
いまだによく分からない。
3人とも、同じように育てたつもりなのに
不思議だ。
同じ父と母から生まれて、
同じ家で暮らして、
同じようなご飯を食べて、
同じように怒られて、
同じように笑って育っている。
なのに、全然違う。
真面目で、マイペースで、可愛いものが大好きな長女。
人生何周目なのか分からない、準備の早い独自路線の次女。
思いついたら走り出し、数字を見れば計算し、年上の輪にも当然のように入っていく末っ子。
もし子どもが長女一人だけだったら、
私はきっと、
「子どもとはこういうものだ」
と思っていた。
きちんと宿題をして、
習い事は簡単にやめず、
夜は早く寝て、
朝は早く起きる。
可愛いものを好んで、
大人に言われたことをそれなりに聞く。
ところが二人目が生まれて、
「あれ?」
となった。
三人目が生まれて、
「あ、もう全然分からん」
となった。
同じように育てれば、同じように育つ。
そんな単純な話ではなかった。
親の育て方だけでは説明できないもの
もちろん、親の接し方はそれぞれ少しずつ違う。
長女のときは、こちらも初めての育児だった。
何をするにも慎重だったし、
ちょっとしたことでも心配した。
次女の頃には、少し肩の力が抜けていた。
末っ子に至っては、
「まあ大丈夫でしょう」
がかなり増えた。
だから、まったく同じ環境だったとは言えない。
でも、それを差し引いても、
生まれ持ったものって、やっぱりあるんだなと思う。
同じお出かけでも、
何を着るかをじっくり考える子がいて、
先回りして絆創膏まで準備する子がいて、
とりあえず玄関から飛び出そうとする子がいる。
同じものを見ても、
「可愛い」と思う子。
「キレイ」と思う子。
数字を探して計算する子。
親がその性格を一から作ったというより、
最初からその子の中にあるものを、
毎日少しずつ見せてもらっているような気がする。
だから子育ては、何人育てても初めて
長女でうまくいった方法が、
次女にはまったく通用しない。
次女に響いた言葉が、
末っ子には一ミリも響かない。
「上の子の経験があるから、二人目以降は楽でしょう」
なんてことは、もちろん多少はある。
熱が出た。
転んだ。
友達とケンカした。
そういうときの親側の経験値は上がる。
でも、
「この子にはどう言えば伝わるんだろう」
は、毎回初めてだ。
攻略本が一冊できたと思ったら、
次の子は別のゲームだった。
しかも三人目も別タイトル。
セーブデータ、引き継げません。
そんな感じだ。
それぞれ違うから、家族はおもしろい
17時。
昼寝から起きてきた長女は、まだ眠そうにしている。
きっとこのあと、また服や雑貨を眺めている。
次女は明日のお出かけに備えて、リュックに何かを詰めているかもしれない。
頼むから勝手にお菓子は入れないでくれ。
末っ子は横で、
「ねぇ、47と28足したら何になると思う?」
とか聞いてくる。
今?
今なの?
うるさい。
非常にうるさい。
そしてバラバラ。
でも、このバラバラ具合がわが家なんだろう。
誰か一人が正解でもないし、
誰かみたいになってほしいとも思わない。
長女は長女。
次女は次女。
末っ子は末っ子。
同じ親から生まれたとは思えないくらい違う3人を、
同じ親が今日も育てている。
……いや。
育てているつもりだけど、
最近はむしろ、
「人間ってこんなに違うんだな」
と、こちらが観察させてもらっている気もする。
とりあえず三者三様、これからも楽しませてもらうとしよう。
