ハンドフルートの可能性をどこまでも広げたい/高山 大知 (ハンドフルート奏者) 6/6放送
普段の活動について
第97回のアーティストファイルにお迎えしたのは、ハンドフルート奏者 高山大知(たかやま だいち)さんです。高山さんは、楽器を一切使わずに自分の両手だけを組み、そこに息を吹き込むことで美しい音色を奏でる「ハンドフルート」の専門奏者として活動されています。熊本県内でも珍しい、平成音楽大学のミュージックパフォーマンスコース・ハンドフルート専攻を卒業されたという、まさにこの道のスペシャリストです。現在は国内外での演奏活動に加え、YouTubeでの動画配信やオンラインレッスンを通じて、この不思議で魅力的な表現の普及に努めていらっしゃいます。今回は、中学生の頃の運命的な出会いから、熊本から世界を見据える大きな夢まで、たっぷりとお話を伺いました。

自分の手が楽器になる「魔法」
熊本県八代市で育った高山さんがハンドフルートに出会ったのは、中学3年生の時。それまでは特に将来の夢もなく、習い事もしていなかったとのことですが、ある日テレビでハンドフルートの考案者である森光弘さんの演奏に出会います。画面越しに流れる音色に心を奪われ、見よう見まねで手を組んでみたところ、なんと最初から音を出すことができたそうです。自分自身が楽器になれるという魔法のような体験に、高山さんは一気にのめり込んでいきました。当初は1人で練習を重ねていましたが、やがて森さんに直接師事するようになり、本格的な音楽の世界へと足を踏み入れることになりました。

人前での初演奏が変えた人生
音楽の道へ進む大きな転機となったのは、高校時代の経験でした。それまで自宅で練習を続けていた高山さんですが、担任や生徒指導の先生がその才能に気づき、「高校の音楽祭に出てみないか」と背中を押してくれたのです。初めて上がった大きなステージで、客席から届く温かい拍手や、多くの人々からの純粋な応援の声に触れ、高山さんの心は震えました。このとき「これを続けていきたい」という強い確信が生まれ、それまで音楽の基礎を学んだ経験はありませんでしたが、プロを目指すために地元の平成音楽大学への進学を決意することになりました。
師匠との二重奏
大学ではピアノや歌、楽譜の読み書きといった音楽の基礎を徹底的に学び、土台を固めました。プロとしての活動をスタートさせてからの忘れられない瞬間の一つが、師匠である森光弘さんの教室発表会にゲスト出演した際のことです。そこで実現したのは、世界で初めてとなるハンドフルートの二重奏でした。また、札幌の時計台ホールでのコンサートに招かれた際は、2日間連続の公演を通じて、自分自身の技術的な課題や表現の幅を痛感したといいます。もっと成長しなければならないという渇望こそが、現在の飽くなき探究心の原動力となっており、高山さんは今でも地道な練習を欠かさず続けていらっしゃいます。

場所を選ばない演奏活動
高山さんの演奏活動の場は、既存のコンサートホールの枠を軽やかに飛び越えています。地元・八代港に大型クルーズ船が寄港する際のイベントでは、海外から訪れた観光客に向けて、言葉の壁を超えた感動を音色で届けています。また、神奈川県で開催されたスターバックスとのコラボレーションイベントでは、コーヒーの紹介に合わせて演奏し、極上のリラックス空間を創出しました。結婚式や学校、保育園での演奏など、どんな場所でも自分の手さえあれば最高級のエンターテインメントを提供できることこそ、ハンドフルートという表現の持つ最大の強みです。

世界に広がるハンドフルートの輪
ハンドフルートはまだ世界的に見ても奏者が少ない希少な分野ですが、高山さんはデジタル技術を駆使してその輪を広げています。YouTubeでの演奏動画の発信はもちろん、ビデオ通話を利用したマンツーマンのオンラインレッスンにも力を入れており、遠方に住む人々とも直接繋がっています。レッスンではビデオ越しに手の形を確認し合い、音の出し方を丁寧に指導されています。自らが窓口となることで、この未知なる楽器の可能性を一人でも多くの人に伝えたいという誠実な想いが伝わってきます。
ハンドフルートの世界大会を!
高山さんが未来に向けて描いているビジョンは、自身の可能性への挑戦と普及の両輪にあります。今までできないと思っていたような難曲にも積極的に挑戦し、ハンドフルートの音楽的な表現の幅をどこまでも広げていきたいという強い決意を持っていらっしゃいます。「多くの方にハンドフルートを広めて、その楽しさや奥深さも知ってもらいたい。演奏者がもっと増えて、遠い将来には大会も開かれるようになったら嬉しい…」そう語ってくださいました。一つひとつのステージを大切にしながら、高山さんはその美しい手で、誰も見たことのない音楽の未来を紡ぎ続けています。

|リクエスト曲|
ルパン三世のテーマ / (ハンドフルート) 高山大知
|Spotify|
https://open.spotify.com/episode/6ZF3EZ1vuC62gMafxrLbWY
最後に
ハンドフルート奏者がいる、という噂はずっと耳にしていましたが、ようやくご本人にお会いすることができました。
高山さんのインタビュー中、何気なく手を組んだ瞬間に響き渡った、あの澄んだ音色が忘れられません。
楽器を持たずに演奏するというのは不思議な感じですが、ひとたび音が放たれれば、そこには心を震わせる独特の響きを感じました。
中学時代にテレビで出会ったという小さな出来事が、音大での研鑽を経て、今や世界大会を夢見る大きな活動へと繋がっています。控えめな語り口の奥にある「熊本から世界へ」という静かな情熱は、大きく飛躍するアーティストの輝きそのものです。高山さんの手が奏でるメロディが、これからも多くの人々の心に届くことを願わずにはいられません。
(事務局 濵島玲恵)

