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本の虫12ヶ月 11月



  ただの本の虫

 🐛





「ある明治人の記録
会津人柴五郎の遺書」

会津関係の手記のいろいろが
つながってくるなあ。
山川健次郎と井深梶之助のふたりは、
斗南まで行かなかったから、
ここまで悲惨な目はみていない。
でも東京での書生ぐらしとかは、
共通している。このひとたちは、
会津のなかでも成功したひとたちで
そのほかにいくらでも、
辛い暮らしから抜けられなかった
ひとがいることは忘れられない。
しかしこの三少年の手記を読むと、
その精神の強さにおどろく。



「おんな二代の記」
山川菊栄

再読。
菊栄さんはかっこいい。
背筋がすっとしていて、流されない。
大杉栄に、おたくの恋愛沙汰に
巻き込まないでくれ、
というところなんか良かった。
水戸の国学者の家のひとだから、
武士の娘らしいけじめがついていて、
あの戦前の社会主義者の破廉恥恋模様から
すっと一本引いている。
でも困っている伊藤野枝と大杉栄と
付き合ったり、面倒をみたりはする。
ちゃんと芯がぶれないんだな。

それにしても母君千世さんの同級生が、
華厳の滝の藤村操の母だとか、
木下尚江の演説を聴きに行っただの、
いろいろおもしろいなあ。
それであの木下ってひとはなんだったの。
けっきょく二流の思想家で終わったの。
安曇野よりもすぱっすぱっとしているのは、
菊栄さんの芯がぶれないから。



源氏物語 上
角田光代訳

ついに!
むかし寂聴訳で挫折したのを再挑戦!
角田訳、良き。
モダニズム小説みたい。
明石くらいまではもう前回読んでた。


源氏物語 中
角田光代訳

紫式部って、
中世の文学界に舞い降りた宇宙人なの?
どうしてとつぜんこんな複雑で完成された
小説が誕生しちゃったの?
源氏物語を読むにあたって、
菅原孝標女があれだけ夢中になって
読んでたのを心に浮かべながら読む。
娯楽のない時代だったとしても。
更級日記の彼女と一緒になった気分で、
一巻につき二日のスピードで読み進めた。

途中で光源氏が地獄で苦しむシーンは
出て来ないのかと期待した。
あのね、地獄で苦しむべきは、
六条の御息所じゃなくて、
光る君でしょ。
玉鬘に言い寄ってたとこあたりで、
ぞわぞわ気持ち悪かった。
本気で光る君みたいなひとに
出会いたかったの、菅原孝標女さん。
平凡な受領の妻になるほうがいいよ。
けれど平安時代の身分感覚がだいぶ
わかってきておもしろい。


「ジョン万次郎漂流記」
井伏鱒二

よみきかせホームスクーリング。
息子は漂流記や航海記好きなので読んだ。
候文のぶぶんでは、寝てた。
抱き合わせで、山椒魚がついてくる。
生物好きなので、食いつきがよかった。



嫉妬と階級の源氏物語
大塚ひかり

下世話な副読本。
それにしても源氏物語は受領をばかにしすぎだ。
受領のなにがわるいっていうんだ。
転んだ場所の土をもつかむところか?
信濃守さん。
「わが心なぐさめかねつ更科の
姨捨山に照る月を見て」



平和か戦争か
サン=テグジュペリコレクション

「好きなドイツの詩人がいるんですの」
「わかりますよ、リルケですね。
彼は内面の道を行きました」
アン・モロウ・リンドバーグとサン・テグジュペリの邂逅。わたしはどうしても、片山廣子と芥川竜之介に重ねてしまう。かれらの関係を疑うのは、なんて下世話なのでしょう。おなじたましいの二人が出会ったのに。
「才知において格闘できる唯一の女に出会った」……
そうね、片山さんたちには、すこしなにかあったかしらないけど、でもそれもすべて「クレーヴの奥方」的であったようなきがしている。あのような知性のあるひとは、そのようなことを相手には為さない、とおもう。

おなじことばを語るひとをみいだしたときの興奮!
内面のみちを行くなかま。
「わたしたちは、おともだちになるわけにはいかないのでしょうか。あなたは女と話していて退屈しなかったことはない、とおっしゃっていました」
片山さんの心を、なぜかサンテックスをよみながら、
推し測っていた、そんなよくわからない読書。



源氏物語 下
角田光代訳

よみおわった!
もうわたしの年表の、三十歳の欄には、
「源氏物語の現代語訳を通読した」
とだけ書いてもらえばよろしい。


ドルジェル伯の舞踏会
ラディゲ

クレーヴの奥方からの、堀辰雄からの推薦図書。
人物のうらに、先祖たちがあやなされている。
心理小説おもしろい
いつになくとっても丁寧によんでいる。
よみおわった。近代小説では、ヒロインを、
修道院送りにするわけにはいかないのだろう。
クレーヴの奥方式の始末のつけかた。
マルチニーク島にでも帰るか。



ハリエット・タブマン
モーゼと呼ばれた黒人女性
上杉忍

おもしろかった。
アメリカで知らぬひとはないという彼女、
ぞんじあげませんでした。
奴隷性の過酷さは、重労働よりも
家族の分断である、ということば。
藤本和子さんの聞き書きをおもいだしながら。



 旧制高校物語
秦郁彦

ドクトルマンボウのせいで、
旧制高校萌えするようになってしまって。
祖父が高知高校に行ったのだけれど、
「母親に一高に行けと命じられたから
高知に逃げてやった」というふうなことを
いっていた背景を理解するようになった。
おじいちゃん、高知高校たのしかったみたい。
モラトリアムが、一般教養をつむ時間が、
三年与えられていたあの制度、
すてきだなあ、とおもうけど。
旧制高校記念館で、松高生がよんでた
本を積み上げてあった。
岩波文庫を、一メートルくらい。
すてきだなあ、とおもうけど。
ええ、松高生のあの奇行もすきです。
縄手通りで棺桶かついで、
きえええっと叫んでたやつとか。


信濃追分文学譜
近藤富枝

横浜のブックオフでみつけた、
著者のサイン入り本……
でもよみこまれてる。
相続かなにかで放出されたのか?
片山廣子さんがでてくるから。
立原道造のヒヤシンスハウス、
あれ、偶然みたことがある。
別所沼公園、むかしそう遠くないとこ
に住んでたから、ふらっと行ったら、
なにかあって、夫といっしょにみた。
すてきな小屋。でも立原道造をしらなかった。
著者が、ヒヤシンスハウスをうちの庭に
建てたいな、とか書いてた、
けっきょくさいたま市がやったのね。


評伝 石牟礼道子
米本浩二

古本屋で買ったら、レシートがはさまってた。
鎌倉駅の西口の、とっても硬派な本屋さんの。
そういう残り香、好き。本をとおして、
であわないひとたちの気配を感じること。
 石牟礼さんのこの評伝について書きだすと、
ながくなって面倒だからかかない。



ロビンソン・クルーソー
デフォー

よみきかせホームスクーリング(5歳)
「アワレナ、ロビンソン・クルーソー!
ドコニイルノカ?
ドコカラキタノカ!?」
オウムのポルの物真似が、
母子のあいだで流行ったのでした。
食人族たちの宴の描写が
えげつない。こわわわ。
しかし貨幣経済だの資本主義社会だの、
すべてから抜け出してしまって
生活しているロビンソン、おもしろい。
森の生活とか、ちょっとおもいだす。
ソローは社会から隔絶されてないし、
お金使ってたけどね。


憂行日記
北杜夫

なんの罪があって、中二病の少年の日記なんか
読まないといけんのか(八十年まえの)。
でも、ただ「電車通りから電車にのって」とか
「中町を歩いて松本城に」とか「ひさしぶりに
浅間温泉にはいったら垢が糸みたいに落ちた」
とかいう松本の描写を拾うためだけに読んだ。
ついでにさいごのやつは、読みながら悲鳴をあげた。
それと、日記にはあのオモシロ試験回答や、
学校祭の奇行とかは載ってない。
かれがオモシロイのは外に向かったときなのか。


没後二十年
須賀敦子の本棚

須賀さんのエッセイを、小説だといってるひとがいて、
たしかに、とおもった。石牟礼さんの苦海浄土が、
ノンフィクションではないように、須賀さんのも、
あれは小説だよなあ。じぶんの人生のなかから、
じゅうぶんな素材が見つかったというだけで。
さいごのほうのカトリックの司祭のは飛ばした。


ギフテッドの光と影

きょねん、チア・にっぽん(クリスチャンの
ホームスクーリング支援団体)で、ギフテッドについての
講義を受けた。突出しているところと、欠けているところがあることとか。じぶんの子ども時代そのままで、
聞きながら泣いてしまった。いま、わたしにそっくりな
おちびをホームスクーリングで
育てることができているのは、ほんとうに祝福だ。



池澤夏樹選日本文学全集
堀辰雄
福永武彦
中村真一郎

堀辰雄のかげろう日記を読むために
借りてきたつもりが、福永武彦すごかった。
廃市という短編、退嬰的なふるい運河の街の、
旧家のひとたちの小説、これ、すごく良くて、
二度読み返した。池澤夏樹のお父さんだもんね、
とおもってたけど、これは全集にいれてくれて
ありがとう。こないだ信濃追分文学譜で、
 堀辰雄門下のかれらについて読んでおいたのも
よかった。中村真一郎もすごかった、なんて複雑な構成
の小説だ。ごめん、漢文読めないから
読み飛ばしたけど。



無名の人生
渡辺京二

いつかnoteで、渡辺京二という思想家についての良い記事をよんで、頭に残っていた。そしたら彼は、石牟礼道子さんについて読んでいたら、石牟礼さんの秘書か家政婦のようなふしぎなおじさんとして、登場してきたので、かれの本を読んでみたくなった。エミリー・ディキンソンの「わたしは誰でもないひと」みたいなこのタイトル、気に入って買ってきた。思想家、みたいなひとはすこし敬遠していたけれど、けっこうじぶんの考えていたことに近かった。もういちど読み返してみようとおもう。

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