夜店から #️⃣シロクマ文芸部
夜店から想い出を感じる。
思い出じゃなくて想い出を感じる?
例えば夜店で買ってもらったりんご飴美味しかったなとか、一等が欲しくて貰ったお小遣い全部使ったなとか、単に覚えている出来事じゃなくて懐かしさや切なさ、喜びなどの感情や情景も一緒によみがえるからだと思う。
(一言で思い出でしょう?と言えばそうかもしれない。けど、なんとなく違うのだ。)
宵の時が近づく頃、上流から灯篭が流れてきた。灯篭の優しい光は琥珀色で川面をゆっくりと導くように流れていき、幻想的な雰囲気に引き込まれていく。
私はその景色に何かを感じていた。
そんな中、鼓動が飛び跳ねるような大きなドンという音が胸を打った。
音がする方へ目をやると頭上には大きな一輪の花が咲いていた。
最後の火の粉が光の尾を引きながらは流れ星のように美しく、余韻を残しながらすーっと夜空に溶けていく。
一発目の花火を見送ったのも束の間、湧き上がる歓声と共に次から次へと絶え間なく打ち上げられ、響く音は心臓の奥にまで届いた。
灯籠流しの情景を打ち消すかのような光景が目の前に広がる。
私の地域の花火大会では毎年の光景だ。
横に目をやると花火の明かりに照らされる夫と子供の顔。そして、人々の笑顔が夜の闇に浮かぶ。
今年も言うと決めている。
子供の頃、和ダンスから見つけた母の浴衣。
白地に赤い花模様の浴衣だった。
友達に誘われた花火大会、
「お母さん、わたしこれ着たい」
「お母さんの若い時の浴衣で、今時じゃないけど」
そう言いながら、母に着させてもらった浴衣。
「文庫結びでいいやろ」
と慣れない手つきでイライラしていた母だが、その浴衣を着させてもらった時間は嬉しかったけど、寂しかった。
本当は家族と行きたかったからだ。
父も母も人混みは嫌いとか、暑いからとかで一緒には行ってはくれなかった。
夜店でりんご飴買って、綿菓子買って家族で花火を見て言いたかったのだ。
当時の私は仕事で忙しかった両親に遠慮して言えなかった。
喜びなどの感情と情景を今、私の家族と重ねて懐かしさと切なさを感じている。
母が旅立って数年が経った、灯籠流しの景色に余韻を残しながら遠くへ消えていく花火の音に想い出を感じている。
そして、今年も絶対に言うのだ。
「また、来年も皆んなで来ようね」
今回初めてnoteに投稿します。
#️⃣シロクマ文芸部#️⃣夜店から
お題から書きはじめるnote企画「夜店から」
