カレンダーは、未来を全部知っている。
カレンダーを見ていて、ふと思った。
こいつ、未来を知りすぎている。
来週の月曜日が何日なのか知っている。
三か月後の日曜日も知っている。
クリスマスが何曜日なのかも知っている。
しかも、一年前から知っている。
かなりすごい。
なのに、誰もカレンダーを「予言者」とは呼ばない。
⸻
人間は毎朝、カレンダーを見る。
「今日は29日か。」
カレンダーからすれば、
「前から書いてましたけど。」
という話だろう。
月末になって、
「もう今月終わり!?」
と驚く。
これもカレンダーからすれば、
「31日まであるって最初から言ってましたよ。」
である。
人間は、かなり前から知らされている未来に毎月驚いている。
⸻
特に12月。
「もう一年終わるの!?」
みんな驚く。
カレンダーは1月からずっと、
12月31日までしかないことを隠していない。
むしろ堂々と公開している。
それなのに毎年驚かれる。
少し気の毒だ。
⸻
でも、人間はカレンダーにいろんなものを書き込む。
「旅行」
「誕生日」
「飲み会」
「病院」
「締め切り」
楽しい予定もあれば、
できれば来てほしくない予定もある。
予定を書いた瞬間から、その日は少し特別になる。
ただの「8月10日」だったマスが、
「旅行の日」になる。
ただの「15日」が、
「給料日」になったりする。
カレンダーの日付は同じなのに、人間が意味を足していく。
⸻
子どもの頃のカレンダーは、少し違って見えた。
夏休みまで、あと何日。
誕生日まで、あと何日。
クリスマスまで、あと何日。
未来には、楽しみなことがたくさん待っていた。
一日がなかなか進まなかった。
「まだ水曜日か。」
「あと三日もある。」
一週間が長かった。
⸻
ところが大人になると、
カレンダーの動きがおかしくなる。
月曜日。
気づけば金曜日。
「今週早かったな。」
そして、
「もう月末?」
さらに、
「もう年末?」
カレンダーは同じ速度で進んでいるはずなのに、
こちらだけがどんどん置いていかれる。
たぶんカレンダーも困っている。
「私、普通に一日ずつ進んでます。」
⸻
それでも、新しい月になると少しだけ気持ちが変わる。
一枚めくる。
まだ何も書かれていない、新しい一か月が現れる。
予定のない白いマスが並んでいる。
これから何が書き込まれるのかは、カレンダーにも分からない。
日付は知っている。
曜日も知っている。
祝日も知っている。
でも、
その日に何が起こるのかだけは知らない。
そこだけは、人間と同じなのかもしれない。
⸻
楽しい日になるかもしれない。
何もない日になるかもしれない。
あとから思い出す、大切な一日になるかもしれない。
カレンダーが知っているのは、
その日が必ずやって来るということだけ。
だから今日も、一日ずつ進んでいく。
そして人間は、その横で毎月同じことを言う。
「えっ、もうこんな日?」
たぶん来月も言う。
来年も言う。
カレンダーだけは、それもなんとなく予想している気がする。
