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日本で通用する礼儀は、フランスでは無礼!?

こんにちは。
フォレスト出版編集部の森上です。
 
サッカーワールドカップ北中米大会が盛り上がっていますが、「フランス」チームは自慢の攻撃陣が機能し、準決勝まで勝ち進んでいますね(本記事執筆時2026.7.12時点)。
 
そんなフランスですが、フランス人は、仕事の捉え方も、休日の過ごし方も、私たち日本人とはまるで違うことは、下記の記事でもお伝えしました。

その違いは、友人とのコミュニケーションも、まるで違う。日本で通用する礼儀は、フランスでは無礼にあたる――。
 
そう教えてくれるのは、在仏14年超、8人の子を育てる日本人、トレオレル美智子さんです。
 
フランスでの友人とのコミュニケーションの取り方は、具体的に日本人とどのように違うのか? その違いの真意は何なのか?
 
7月21日に発売予定のトレオレル美智子さんの新刊『フランス人の気楽な働き方、全力の休み方』で、その違いと真意について詳しく解説しています。
 
そこで今回は、同書発売に先立ち、このnoteで特別に、その該当箇所を一部編集して公開します。

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「日々の愚痴」を話すのはNG?

 日本で通用する常識が、フランスでは非常識になることがある。
 それは、私たち日本人が当たり前のように、むしろ良かれと思ってやっていることがフランスでは通用するどころか、関係性に距離ができてしまうことがあるから厄介だ。
 友人とのコミュニケーションも、その1つ。
 例えば、数カ月ぶりに友人とランチの約束したとき、あなたはどんな会話をするだろうか?
「わぁ~、久しぶり!」
 再会の喜びと共に、次に出てくるひと言は、
「元気だった? 最近どう?」。
 おそらくそんな会話からスタートするだろう。
 これは、日本もフランスも同じだ。
 相手への興味を示し、気遣う質問をする。
 問題はここから。
 お決まりのパターンに続く答えと言えば、日本人ならこんな感じだろう。
「いや~、もう仕事が忙しくて、家に帰っても食事してお風呂入って寝るだけの毎日だよ」
「うちの子が反抗期で、言うこと聞かないし、腹立つこと言ってくるし、で、ストレス溜まりまくりよ」
 日本人同士ならおなじみのやりとりである。
 ここで良い話、ポジティブな話をしてしまうと、相手には自慢しているように聞こえてしまうかもしれない。もしも相手が現在大変な状況だったら、こちらが呑気なことを言ってしまったら申し訳ないと思ってしまう……。
 だから、相手を気遣いながら、「最近どう?」という質問に対して、近況をあえてネガティブに伝える。いわゆる謙けん遜そん。 これが日本人の気遣いであり、礼儀である。
 典型的な日本人な私は、これを、フランスでもやり続けていた。
 しかしこれがフランスでは通用するどころか、逆にぎくしゃくしてしまうのだ。

良かれと思ってやっている日本的な礼儀が逆効果

 よりリアルに感じてもらうために、実際にあったエピソードでお伝えしよう。
 フランスでは、朝、子どもたちを学校へ送って行くときや、スーパーでの買い物中に、知り合いや友人に会うと、まずは、
「ボンジュール!」。
 ただの顔見知り程度ならこれで終わりだが、友人ならここで、
「サヴァ?」
 と続く。
 これは、「最近どう? 元気?」と言った意味で、「私はあなたのことを気遣っているよ」という意思表示の表現だ。「ボンジュール」だけに終わらず、「サヴァ?」まで言ってもらえると、誰でもうれしくなるもの。万国共通の喜びだ。
 そこで私は、「失礼のないように」と、張り切って答える。
「うーん、最近は、赤ちゃんが夜寝なくて、毎日睡眠不足よ」
「今週は食べ過ぎて太ってしまったから、お気に入りのスカートが入らないわ」
 すると、笑顔で「サヴァ?」と尋ねてくれたはずの友人の表情が曇り出すのだ。
 そして、
「あ、あら、そう……。じゃあ、またね!」
 と、そそくさとその場を去って行く。
「あれ? なんだか盛り上がらないな、急いでいたのかな?」
 フランスに移住したばかりの私は、こんな展開を少し不思議に思いながらも、その後も「サヴァ?」と尋ねてくれる人たちにはその気遣いに応えようと、日本人的な気遣いで頑張り続けた。
 しかし……。
 いつまで経っても、フランス人たちと仲良くなれないのだ。とにかく、会話が弾まないのである。

フランス人は、良い話がしたいし、聞きたい

 そこで私は、他のフランス人たちがどうしているのかを、観察してみることにした。
 まずどのフランス人たちも、出会いがしらに「サヴァ?」を言い合っている。ここまでは同じ。
 その後に続く返事に、大きなポイントがあった。
 
「最高に元気だよ! 週末は、親せきが集まってのバーベキューが盛り上がったんだ」
「良い調子だよ! 昨日観た映画がすばらしくてね、おすすめよ。今度、紹介するね!」
「もちろん、元気よ。子どもの誕生日パーティーをやったから、プレゼントに囲まれて幸せそうでねぇ」
 
 なんと、いつ誰の「サヴァ?」を聞いても、良い話しかしていないのだ。しかもその様子は、見ているだけでも気持ちが良い。

フランス人が良い話しか、やりとりしない理由

 だが、相手を気遣って「謙遜」を続けてきた私にとっては、この「良いこと」のみのやりとりには、どんな裏があるのだろうと、気になってしょうがなかった。
 そんなときに、私には頼りになる存在がいる。私の知る中で誰よりもフランス人であり、友人も多い、フランス人の夫である。
 そこで夫に、フランス人が良い話しかやりとりしない理由を聞いてみた。
 
「あなたたちフランス人は、『サヴァ?』の後には、良い話しかしないの? 悪いときだってあるでしょ? 悪いことは、言わないの?」
 
「え! 悪いことなんて、言わないよ。『サヴァ?』は、相手が僕のことを気遣ってかけてくれた言葉だよ。その気遣ってくれた相手に、楽しい時間を返す。 これは、礼儀だよ。暗い話をすれば、会話の空気が重くなる。そんな時間を過ごさせるなんて、せっかく僕に話しかけてくれた人に対して失礼だよ」
 
 気遣って声をかけてくれた相手に、感謝をする、思いやる──。
 日本人だって、これと同じ思いで相手に向き合っている。「謙遜して悪いことを話す」ことを「礼儀」としている。
 一方、フランス人は、楽しい時間を返すために、良い話をする。
「相手への気遣い」という点では一緒でも、真逆の捉え方であり、実践ではないか……! 私は衝撃を受けた。

フランス流の「礼儀」を実践してみたら

 この価値観の違いを知った私は、「礼儀なら任せておけ」と言わんばかりに、フランス流の「礼儀」を試してみることにした。
 さて実際にやってみると、意外と大仕事だった。突然「サヴァ?」と聞かれても、とっさに良い話なんて出てこないのだ。これには、事前準備が必要だった。
 そこで私は、いつでもすぐに良い話ができるようにと、ふだんから「良い話」を5、6つほど用意するようにした。
 しかもこの「サヴァ?」という質問は、しょっちゅう同じ人から飛んでくる。多い人なら平日毎朝聞いてくるので、同じネタを毎回言うわけにはいかない。
 そのため、ネタを更新しておかなければならなくなり、私は毎日、「今日あった良いこと」探しに忙しくなった。
 その意識が功を奏したのか、
「サヴァ?」
 と聞かれたときには、
「うん、元気だよ! 最近、この地方のお酒、ピノーを飲んでみたの。本当においしかったわ!」
「元気よ、ありがとう。今セール中だから、かわいい子ども服を買うことができたわ」
 と答えられるようになった。
 それに対して友人たちは、
「まぁ~、それは良い選択ね! ピノーは、最高よ。あれは家族や友人が集まれば、週末に何本空けるかしら」
「うちもよ! 年頃の女の子は大満足よ~」
 とうれしそうに話してくれた。
 私はついに、フランスで初めて! 話を盛り上げることに成功したのである。
 と同時に、私がずっと叶えたかったこと、「私に話しかけてくれた人を、幸せにしたい」 という思いが、叶えられた瞬間でもあった。

「一日」の価値が変わる、魔法の呪文

 私が叶えたことは、実はこれだけではなかった。
 毎日友人たちに「良い話」ができるようにと、準備をする。そのため、私は常に「良いことはあるかな」とアンテナを立てながら一日を過ごすようになった。
 こうなるともう、良いことにしか気が向かないようになる。しかも、ネタが見つからないと、良い出来事を自らつくろうとまでするようになった。
 一日とは、短いもの。 こうしてネタをいくつも用意しようとすると、一日は良いことしか起こらなくなるのだ。
「サヴァ?」というひと言は、ただの挨拶ではない。一日を「良いことを探す時間」に変える、フランス人の魔法の呪文である。

〈著者プロフィール〉
トレオレル美智子
フランス在住14年の8人子育てワーキングマザー。
1986年滋賀県生まれ。一度目の結婚で二児を設けるが、良き妻、良き母でいようと尽くした結果、夫がモラハラDV化し、親族らにより強制離婚。東京でシングルマザー生活を送る。後にフランス人と再婚して渡仏。5人を出産し、7人の母として暮らしていたところ、フランス語が話せないまま突然またもやシングルマザーとなる。職なし、貯金ゼロ、公共料金の払い方も知らないところから、日仏辞書を片手に訪ね歩き生活を立て直す。子どもには不自由な思いをさせないようにと、働きながらも家事の手を抜かず、自分のことを後回しにしていたが、それを知ったフランス人マダムから「どうして自分の人生を楽しまないの!」と怒られる。「休む」ことを目的に働くのではなく、「楽しむ」ことを目的に一日中行動するようになる。その結果、仕事もプライベートもペースを崩すことなく両方が充実し、フランス人と三度目の結婚。その中で出会ったフランス人たちの些細な一言や行動に対してインタビューを重ね、「フランス人の楽に幸せに成功し続ける生き方」をメソッド化。オンライン・リアル(日本)での講演やセミナーを多数実施している。
【著者の壮絶な半生を描いた記事はこちら】(文春オンライン)
https://bunshun.jp/articles/-/89388
https://bunshun.jp/articles/-/89389
https://bunshun.jp/articles/-/89390

いかがですか?
 
フランス人は、たとえ、仕事で失敗しても、失敗したのは「仕事」というコスチュームを着た「私」が失敗しただけ。まるで作品を訂正したり改良するかのように、手を加えればいい。プライベートの「私」とは何のつながりがない――。
 
そう考えるので、仕事の失敗をプライベートにひきずることはなく、ストレスも溜めません。
 
休日の過ごし方も、日本人のようにダラダラしたりせず、早起きして、夜遅くまでパーティーを楽しみます。
 
なぜなら、自分の人生を楽しむ、過去でも未来でもなく、「今」を楽しむことを大切にしているから。
 
「仕事もプライベートも、自分の人生を楽しむためにある」
 
そんなフランス人の人生哲学を解説した新刊『フランス人の気楽な働き方、全力の休み方』(トレオレル美智子・著)は、7月21日からネット書店および全国書店で順次発売されます。興味のある方はチェックしてみてください。

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