🌺ウメばあちゃんのひとり語り「風呂敷の中には、母の心が包まれてた」(re)
—— 包むことは、守ることやったんよ
風呂敷ちゅうのは、不思議なもんやった。
布ひとつで、なんでも包んで、どこへでも運べる。
形が決まっとらんからこそ、何にでも寄り添えるんやろな。
うちの母は、いつも風呂敷を使うとった。
おむすびも、薬箱も、縫い物道具も、
だいたい“あの布”の中にあったんよ。
ある日、小学校の遠足でな。
うちは朝、寝ぼけながらお弁当受け取って、
学校行って、昼になって広げたら──
真っ赤な梅模様の風呂敷の中に、
小さな竹の皮でくるんだ、塩むすびが2つだけ入っとった。
周りの子は、卵焼きやウインナーや言うて賑やかで、
ちょっと恥ずかしなってもうてな。
うちは、そっと木の陰でひとり食べとった。
けど帰った夜、母がな、
「風呂敷の端に、小豆ちょこっと入れといたんやけど…見たか?」て。
「…え? そんなん、知らん」言うたら、
「ほら、ここやがな」って布の端っこを開いて見せてくれてな。
そしたら、風呂敷のすみっこに、小さな包みが仕込んであった。
甘納豆やった。
「お弁当少なかったやろ思うてな」って、母は笑いながら言うたけど、
うちはそのとき、なんやもう胸がぎゅうっとなってしもてな。
“ごちそう”やない。
“豪華”やない。
せやけど、あの一包みが、うちにはいちばんうれしかった。
風呂敷の中にはな、
食べもんだけやのうて、気づかいとか、心配とか、
たぶん「がんばりや」っていう母の願いまで、
きゅっと包まれてたんやろなぁ。
今はもう風呂敷使う人、あんまり見かけへんけどな、
うちは今でも、旅に出るときは一枚持ってくんよ。
なんかあったら、ふわっと包んで守れるように。
あの日の母みたいに──
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