🌺ウメさんと喜三郎の縁側シリーズ『板の温もり』26/07/22
縁側の板に、素足を下ろした。
ひんやりと、足の裏が冷たい。
夏でも、朝のうちの板はまだ冷えていた。
ウメが、縁の端に腰かけて、足をぶらぶらさせている。
板の木目を、足の指でなぞった。
「気持ちよかねぇ」
喜三郎も、隣に腰を下ろす。
裸足の足を、板の上に置いた。
「……夏は冷たうて、冬は冷たすぎる。
難儀な縁側たい」
「あんたは文句ばっかりやね」
ウメは、くつくつと笑った。
日が高くなるにつれて、板が少しずつ温んでくる。
足の裏に、じわりと木の温もりが移った。
「ほら、あったかうなってきた」
ウメが、嬉しそうに言う。
「同じ板やのに、朝と昼で、まるで顔が違うとよ」
喜三郎は、足の裏で板を確かめた。
たしかに、日の当たるところは温い。
日陰のところは、まだ冷たいままだった。
「……木にも、機嫌のあるとやな」
ぽつりと、そう言った。
ウメは、おやと思って横を見た。
喜三郎は、知らんふりで遠くを見ている。
「そうたい。
春は湿っぽうて、夏は熱うて、冬はしんと冷たか。
裸足で座ると、季節のぜんぶが、足から伝わってくるとよ」
裸足でなければ、わからないこと。
板の温度。
木目の手触り。
季節のうつろい。
履物を脱いで、じかに座る。
それだけで、いつもの縁側が、季節を映す鏡になった。
あんたも、たまには裸足になってみんね。
靴を履いて、急いで歩いとるばかりやと、見えんことのあるとよ。
足の裏で感じる、地面の冷たさ、温かさ。
そんな小さなことが、今がいつなのか、ちゃんと教えてくれるけんね。
最後まで読んでくれてありがとうね。
もし心が軽くなったなら、『スキ』や『フォロー』をしてくれると嬉しいばい。
いつでもここ(縁側)で待っとるけんね。
いいなと思ったら応援しよう!
🌿チップでの応援、ほんの少しでも嬉しいです。いただいたご支援は、新しい記事づくりの糧にします。