🌺ウメばあちゃんのひとり語り「舁き山が走る音」(re)
——七月の博多は、魂が走る
あんた、博多の祇園山笠って見たことあるかい?
うちは昔、一度だけ見に行ったことがあるんよ。まだ若いころ、友達と二人で夜汽車に乗ってな、朝もやの博多駅に着いたんよ。
その日はちょうど追い山のある日やって、町中がピリッと空気張りつめとってな。
舁き山が走る音。
ゴンッ、ゴンッて太鼓の音といっしょに、足音と掛け声が地面に響いてきてな。
「オイサ!オイサ!」ちゅう声が夜明けの通りを割っていく。
あのときの空気、今でもはっきり覚えとる。まだ暗い空の下、山が通り過ぎるたびに、うちの胸もドンッと揺れたんよ。
あれはな、ただのお祭りやない。
男衆が、町を、神さまを、そして自分自身を背負って走る、そんな時間やと思ったんよ。
舁き手の顔が真剣でな。命を削るように走るその背中が、ほんまにかっこよかった。
なかには若い子もおってな、先輩に怒鳴られながら、歯くいしばって走ってた。
祭りやのうて、生きざま見せとるみたいやった。
道端で見とったおばあちゃんが、ぽつりと言うたんよ。
「山が通ると、今年も生きとるなぁ、て思うとよ」って。
うち、それ聞いてな、なんや涙が出そうになったわ。
きっと、毎年この山を見るたびに、自分の暮らしと重ねとったんやろなぁ。
博多の夏は、あの山が走らんと始まらんのやろな。
今年も走っとるんやろか。
舁き山の音を聞くたびに、人はまた、前に進もうとするんかもしれんね。
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こうしてひとりでポツポツしゃべっとるけど、
読んでくれるあんたがいてくれて、うちはほんまに嬉しいんよ。
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また会える日を、楽しみにしとるけんね。
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