この家族でよかった。親子で行く真冬の富山旅行
どの家族もそうであるように、わたしたちの家族もそれなりに波乱万丈だった。
親ふたりが勤める会社が立ち行かなくなり、「とーさんが倒産!かーさんも倒産!」みたいな状況もあったし、
妹が生まれるより前に父親は事故で死にかけている。
このことに関して、親の苦労をちゃんと分かっているわけではない。
ただ、ひとりの娘としては、家族でなんとか乗り越えて、おおよそ健やかにすごしてきたと感じている。
時は流れ、親は50代半ば、きょうだいはみんな成人しているけど配偶者も子どももいない。
親子で旅行に行けるのは今ぐらいかもね。
そんな会話から始まった富山旅行。
親子で旅行できることに感謝をこめて思い出を書きとどめます。

旅行先が富山になったのは、単に母が漫画「ミステリと言う勿れ」を好きだったから。
この漫画は主人公で大学生の整君がたんたんと謎を解いていく推理もの。人の心の薄暗いところから生まれるやるせない事件を、整君が言葉で解きほぐすように解決していく話だ。
その漫画の作中で、富山を舞台にした話がある。
それを読んだ母が、話に出てきた場所に行きたい言い、じゃあ富山に行こうかと旅行先が決まった。

2月後半の連休、吹雪の高速を抜けてまず向かったのは氷見。道中、北に向かうほど雪深くなる景色に、えらいタイミングで来てしまったと思う。
寒波のなか、昼ごろには最初の目的地「ひみ番屋街」に無事たどり着いた。ここはご飯どこやおみやげ屋さんが入っている道の駅で、ミステリと言う勿れにも12巻で登場している。
雪景色も聖地巡礼もそこそこに、何はともあれお昼ご飯。
富山に来たなら海鮮でしょう!と、道の駅にある海鮮のお店「きときと亭三喜」に入る。店内はそこまで広くなく、昼時なこともありテーブル席が空いていなかった。
カウンターでもよければと言われ、7人がけほどのカウンターに5人ずらっと座らせてもらう。
さて、何にしよう。
家族が海鮮を食べる気満々の雰囲気のなか、わたしはちょっと迷っていた。
海鮮丼ももちろんいいけど、宿の夜ご飯できっとお刺身も出る。それにメニューの白エビのかき揚げ丼も気になる。
母親はこの旅行で海鮮丼を食べると決めていたらしく、即決していた。
右隣に座る妹も海鮮丼とかき揚げ丼で迷っていて、結局ふたりで半分こすることに落ち着く。妹と隣の席でちょうどよかった。

ふたつきのお椀に入って、先に海鮮丼がやってきた。まずは妹が海鮮丼を食べるターン。
ふたを開けてわあ〜〜と小さな歓声をあげ、海鮮丼を見つめたあとにふたの裏を見せてきた。
「見て、いくらがひとつだけ残ってる!」
妙に嬉しそうにする妹がおかしくて(多分妹のツボに入ったんだと思う)思わず写真を撮ってしまった。

続いてかき揚げ丼もやってくる。
わたしの目の前に置かれたそれは、海鮮丼と同じく蓋つきのうつわ。
でも、かき揚げが大きすぎてふたが閉まっていない。
閉まりきってないやん!と心のなかでつっこんで、やっぱりこれも写真に撮った。

言語化できない「なんかいい」を留めておけるから写真って好き。
ひと粒のいくらもはみ出すかき揚げも、しょうもないことだと思う。
でも、人には理解されにくい、けれど自分にはおかしく思えることのほうが記憶に残ったりする。
家族といると、ささいなおかしさも共有することが多い。それが相手のツボに入れば大爆笑されるし、理解されなくても「ふふふ」と返してくれる。
決して、「それがなに?」とあしらわれることがない安心感。
この安心感のおかげなのか、わたしたち家族はしょっちゅう小ネタを言い合っている。
それにしても、白エビのざくざくとしたかき揚げと、甘めのタレがおいしくてがっつきながら食べてしまった。
妹と半分こと言いつつ、ちょっとだけご飯多く食べちゃった。ゆるして。

お昼ご飯のあとは雨晴海岸をながめながらカフェでのんびりと過ごし、南に下って庄川沿いの温泉宿に向かった。
宿についておもてなしのお菓子を食べたあと、わたしと父親、弟はお風呂に、母と妹は館内の散策にでた。夜ご飯の時間は決まっているけど、それまで自由行動。
自由行動なのが、なんかいいなって。温泉に入りたい人は入り、そんな気分じゃない人は別のことをして。
すべて個人プレーではないけれど、全員で同じことをする、みたいな決めごともない。このゆるやかさは本当に落ち着く。
お風呂に入って部屋に戻ったとき、ほかの人はみんな帰ってきていた。
持ってきたボードゲームで一勝負していたらしく、母親から「勝っちゃった!」と嬉しそうな報告を受けた。

こちらは弟の圧勝
さて、旅行のメインはお宿の夜ご飯。
夜ご飯の会場に行くと、前菜や小さい鍋物が用意されていて、まさにいいとこの旅館のご飯といった感じ。
席に着くと、用意されている前菜の説明をされ、みんなでほんほんと聞き入る。
説明が終わってから軽い乾杯をし、ひとくちサイズの前菜の5種盛りに箸を伸ばす。
「このお豆食べてみよっかなー」と言えば「それ甘くておいしいよ」と妹が応え、「パイのやつうまいよ」と弟が言えば、「え、食べてみる」と口にする。
家族とご飯を食べると、なんどもおいしい、うまいが飛び交う。おいしい、おいしいと言いながら食べるご飯は本当にしあわせなので、食事中に言わない人はぜひ試してほしい。
続々とおかずが配膳され、熱心に説明を聞き、うまいうまいと食べる。
時間をかけて、ゆっくりと食べるご飯はぜいたくな時間だった。

一番手前がお肉のパイ包み
夜が明けて2日目。朝ごはんをうまうま言いながらしっかり食べたあと、富山ガラス美術館と帆船の海王丸を見に行った。
午前中、美術館を出たときは晴れていたのに、午後には吹雪。
天気のふれ幅大きすぎない?
雪にも負けずたくさん写真を撮った。

このときは青空が出てた


ロケットのような、イカのようなかたちに見える

吹雪なこともあり、遭難船やなと父が言うから笑ってしまった。

雪かきされた道を歩いてたんだけど、みんなスニーカーで来てたからくつがびしょびしょ(準備不足)
最終的に弟が「おれ諦めた!」と宣言して雪の中を走ってた。その後ろ姿。
この旅行中、たくさん家族の好きなところを見つけた。
それぞれが持つ「なんか良い」を、安心して共有できる空気が好き。
家族だけど、それぞれがそれぞれであると、個のままでいられる感覚に安心する。
おいしい、おいしいと言いながら食べるご飯がしあわせ。
探せば探すほど、家族の好きなところは見つかるんだろう。
わたしたちの家族はいつだって順風満帆だったわけじゃない。どの家族もきっとそうだと思う。
わたしが小学生のころに親ふたりが勤める会社が倒産し、妹が生まれるより前に父親は事故で生死をさまよったと聞く。
(事故のことが分からなかった3歳のわたしに、おとうは宇宙人にさらわれちゃったのよと母が説明してくれた。そのとき、母はどんな気持ちだったんだろう)
そんなことがあっても、いま、こうして家族でいられてる。
それは幸運と、家族それぞれの努力のおかけだと思ってる。
波乱万丈なできごとに、恨み言を言ったり、無気力にすべてを投げ出したり、そんな方法はいくらでも取れた。
今回の旅行だって、吹雪に文句言ったり、なんでこんな日程にしたのと誰かを責めることもできた。
できたけど、誰もそうしなかった。
どんな状況でもなんとかしようとすること、理不尽に他人を責めないこと。それはもう、努力だと思うのだ。
この先、またこんな風に旅行ができるかはわからない。
何が起こるかなんて、知りようがない。
でもまあ、この家族ならたいがいのことは大丈夫なんだろう。
なにがあったって、しょうもないことで笑い合っていけるだろう。
そんな根拠のない自信を、思い出とともにしまっている。
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