信号機ぶどう味
アルザスの小さな村には、空港から村への入り口に信号機がひとつだけあり、その横に土手が伸びていた。夕方になると人々が一人二人と集まり、轟音をあげて飛び立つ飛行機や、反対側に広がる葡萄畑を眺めていた。秋には丘の上まで続く畑に紫色の葡萄が稔り、収穫時には微かに葡萄の香りが漂った。
その土手の上で父親に連れられて飛行機を見に来る双子の少女と知り合い、サリュー!と挨拶を交わすようになった。ある秋の日、ジャンプしながら先を争って叫んでいる二人を見た。信号の色が変わるたびにその色を叫んでいるのだった。"rouge!(赤)” ”jaune!(黄)” ”vert!(緑)”
黄金色の夕陽が地平線の彼方へと落ち、夜の濃厚な闇が訪れる前のほんのわずかな隙間のこと、空は青と赤が完璧な調和をもって混ざり合い、妖艶でどこか幻想的な紫色のグラデーションに染め上げられた。一瞬黙った二人が次の瞬間"raisin!"(ぶどう)と叫んだ。信号の色が確かに葡萄の色、紫に輝いていた。紫色のキャンバスに美しく描き出された風景がその濃淡を変えながら、刻一刻と夜の訪れを告げているそのとき、私はぶどう味の空気を胸いっぱい吸い込んだのだった。
おわり(501文字)
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