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熱帯夜【シロクマ文芸部】

 熱帯夜続きで、エアコン嫌いなわたしもついにつけっぱなしの夜を過ごすようになった。涼しくなれば不眠症が治るわけでもなく、一番お気に入りの横向き姿勢のままじっと横になっていると不審な音に気づいた。
 「ポトリ、ポトリ、ポタポタ、ポトリ・・・」
 え?なにこれ?と灯りをつけて見渡すと、なんとエアコンから水が垂れてヘッドレストのすぐ外に置いた緊急持ち出し袋の上に落ちているのだ。慌てて水を拭いバケツを置いたものの、動揺してますます眠気が遠ざかった。午前1時半、まだまだ夜は長い。小人が眠りを集めて持っていく、という詩を読んだことがあったが、今夜もそれかもしれない。

 エアコンを切って30分ほどすると、ポタポタは治まった。明日管理人に話に行こう・・・やっとあくびがひとつ・・・思いっきり口を開けて上を向いてあくびする。その方がスッキリするから。ゴールドウィン・メイヤーのライオンのように。

 そうだ、扇風機がある。ここに越してきたときタイタニック号から凍てついた冬の海に飛び込んだつもりで買ったダイソンのわっか型扇風機。なが~い顔がムンクの叫びをちょっと思い出させる。ヒヤリとする風に今度は派手なクシャミひとつ。以前の同居人が「百年の恋も冷める」と言ったクシャミ。それからも同居は続いたからあれは嘘だったのか?いや逆に告白?彼の笑顔が浮かんで消えて。

 眠りに落ちる前に一瞬夢と現実が混じったような場面が浮かぶことがある。海の奥深くに住んでいる魚が気まぐれに浅瀬に姿をみせるようなたよりない夢。その夢にすがりついて眠りに落ちようと試みる。ああやっと・・・
そのときまたあの音がした。
「ポトリ、ポトリ・・・」

          おわり

小牧さんの企画に参加させてください。
小牧さんお手間をおかけしますがよろしくお願いいたします。



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