“レアな脚質”の研究
皆様、こんばんは。まぐです。
今回はレアな脚質について書きます。
「ハイペースでは差し馬有利、スローペースでは先行馬有利」というのは、競馬では半ば常識のように語られる考え方です。
しかし、実際のレースを見ていると、この常識では説明できない馬が存在します。
スローペースで差し切る馬。ハイペースで粘り込む先行馬。
本来は不利なはずの展開で結果を出すこれらの存在について、具体例を挙げながら語りたいと思います。
スローペース向きの差し馬
2020年スイートピーステークスは、私の常識が通じないレースになりました。逃げ馬が少なく、戦前からスローペースが予想されるメンバーだったので、私は先行できる馬を中心視。前に行ける実力馬スマートリアンから馬券を買いました。
レースは競り合うことなく、すんなりと隊列が決まり、1000m通過は61.1秒のスローペース。6F目も12.5秒と遅いラップを刻み、後半3Fだけの瞬発力戦になりました。
ここまで遅いと多くの馬がバテず、18頭中13頭までが上がり33秒台をマーク。普通なら先行有利になりそうですが、ただ1頭、デゼルだけが上がり32.5秒という異次元の切れ味を披露。大外一気で差し切りました。2位の上がりが33.3秒だったので、上がりの差だけで他馬を0.7秒以上も上回ったのです。
デゼルはその後、2021年の阪神牝馬ステークスで重賞を制しましたが、その800m通過は47.1秒のスロー。ここでも上がり32.5秒を使い、大外から差し切りました。
「スローペース向きの差し馬」という考え自体は以前からありましたが、それを強く実感させたのがデゼルでした。
ではどうしてこのようなタイプが存在するのでしょう? 普通なら逃げ先行馬がバテるハイペースの方が差し馬に向くはずです。
その特徴をいくつか挙げてみます。
・追走力に欠けるため、スローの方が追走に苦労しない
・脚が溜まりやすいスローでこそ、末脚の爆発力が上がる
・平均的な差し馬より、もう一段階速い上がりを使える(上がり32秒台がいい目安になる)
上記の特徴がスローペース型差し馬を作り上げるものだと思われます。
現4歳オープンのウイントワイライトはまさにその典型。
初勝利こそダートで逃げ切りですが、他の3勝は全て東京芝1400mで差し切ったものです。
特に2勝クラスでの勝ち方は衝撃的でした。3F通過は35.2秒。直線では残り400m地点でも最後方。普通なら間に合わない位置取りでした。しかし残り200mから一気に加速し、他馬をゴボウ抜き。上がり32.5秒を使い、全馬まとめて差し切りました。
この一戦こそ、スローペース型差し馬の典型です。
東京芝1400mで勝ち星を重ねているのは、決して偶然ではありません。
というのも、東京芝1400mは他の競馬場よりもペースが緩みやすいからです。京都芝1400mもスローになりやすいですが、他の新潟、阪神、中京の芝1400mはペースが流れやすいコース。
また、東京は直線も長いため、自慢の末脚を生かしやすいと言えます。
事実、ウイントワイライトは中京芝1400m(3F通過33.9秒)と阪神の芝1400m(3F通過35.5秒と遅かったものの、直線の短いコース・重馬場で自慢の切れが削がれた感)でも普段通りの差し競馬で挑みましたが、掲示板にも載れずに惨敗。1200mの葵ステークス(3F通過33.5秒)でも同じように大敗を喫しています。
スローペース型の差し馬は極めて条件に依存しやすいタイプです。
にもかかわらず、負けた3つのレースでも人気を集めていたのです。これこそが、このタイプの難しさと言えるでしょう。
今後もハイペースになりやすいコース、ハイペースになりそうなメンバー構成の時は軽視が妥当。せいぜい、押さえまでに留めるべきでしょう。
本命を打つには複数の根拠が欲しいところです。
ハイペース型の逃げ・先行馬
逃げ・先行馬は差し馬よりも速い上がりを使えないことが弱点になりやすく、だからこそ前に位置するという側面もあります。
通常の逃げ・先行馬は自身もバテないペースを刻み、後続との距離差を生かして粘り込むのが定石でしょう。ハイペースで飛ばすことは基本的には不利に働くので、速すぎず遅すぎずのペースで逃げるのがベター。
ところが、ハイペース型の逃げ・先行馬は、速い流れでこそパフォーマンスを上げるタイプなのです。
その特徴は以下の通り。
・ハイペースで飛ばすことで差し馬との距離差を築く
・ハイペースで飛ばすことで後続の末脚を削る
・ハイペースでもバテにくい
現役のケイアイセナはまさにハイペース型の逃げ・先行馬で、自ら厳しい流れを作りながら勝ち切るタイプです。
このタイプはスローに落としてしまうと、後続に捕まりやすくなりますが、ケイアイセナも例外ではありません。
オープン馬になる前は様々な乗り方を試していました。
なかでも、2024年のセンテニアルパークSは1000m通過60.6秒の平均的なペースで後続を引き付けて逃げました。しかし、2番手に付けていたアスコルティアーモにクビ差で差され、3着馬の追い込みもギリギリ凌いだだけでした。
この馬の真骨頂は2025年の巴賞。
セットアップとコンクシェルが競り合う形になり、1000m通過は57.4秒の超ハイペースに。道中はかなりの縦長馬群。ケイアイセナは離れた3番手から運びましたが、前の2頭は3コーナーでガス欠に。ケイアイセナが早めに先頭に躍り出ました。直線では2馬身後ろのコントラポストが追い込んできましたが、ハイペースでもバテない強みを生かしてクビ差残しての勝利。1.44.8はレコードタイムでした。
この手のタイプは「絡みに行くと潰される」という意識を他騎手に植え付ける、という副産物も生み出します(ただし、ケイアイセナは控える競馬もするので、あまりそうは思われていないかもしれません)。
代表的なのは、逃げ馬として覚醒してからのパンサラッサ。
テンが遅い逃げ馬なので、序盤にハナを奪うのに苦労しやすいですが、押してハナを奪うと他馬も譲るようにすぐ控えてくれます。
いずれにしても予想する側としては、このタイプが出走するだけで展開を読みやすくなるため、特徴を覚えておきたいタイプです。事実、ケイアイセナが出走したレースは、逃げるかどうかにかかわらず、その多くがハイペースになるのです。
「ハイペースでは差し有利、スローペースでは先行有利」という常識は、確かに間違いではありません。しかし、それだけでは説明できない馬がいるのも事実です。
例外に見えるものを、例外のままにしない。
そこにこそ、馬券のヒントがあると言えるでしょう。
まぐ
期待値馬券が全盛だからこそ、数字の裏付けがある「強い馬」を狙うべきという信念のもと予想理論『余力ラップ』を開発。立川優馬氏のオンラインサロンで行われた予想コンペティションで最優秀賞を受賞し、2023年10月より『ウマい馬券』に参画。2024年はプラス回収を達成し、トップ予想家としての地位を確かなものにした。
競馬予想の基礎を全7章にわたってまとめた電子書籍はこちら。
X(ツイッター) @33magu
