「距離短縮有利」の正体〜前に行ける馬をどう見抜くか〜
皆様こんにちは。まぐです。
「競馬は距離短縮有利」「競馬は先行有利」。この二つは、読者の皆様も共通認識として持っていると思います。
ところが、この二つを並べて考えると、少し奇妙なことに気づきます。
距離を短縮すると、レースの流れは速くなります。そのため、長い距離を走っていた馬は追走に苦労し、前走より位置を下げやすい。
つまり、距離短縮馬は「先行有利」という競馬の原則から遠ざかりやすいわけです。
それなのに、「距離短縮は有利」と言われる。
位置を取れなくなるのに、なぜ成績は上がるのでしょうか。
私は以前のコラムで、「距離短縮の不利は追走負けしやすいこと」「それでも追走できる馬は強い」と書きました。今回は、この一見矛盾して見える現象を、Magulyticsを使ってもう一段深く掘り下げてみたいと思います。
距離短縮すると、本当に位置は下がる
まず、「距離短縮すると位置を下げやすい」という前提そのものが正しいのかを確認しました。
Magulyticsは私自身が作っている競馬分析ツールです。自作ツールで都合のいい数字を出していると思われても困るので、今回は集計条件もなるべく細かく書いておきます。
対象は2023~2025年のJRA平地競走。前走と今回が芝→芝、ダート→ダートで、今回の距離が前走より短くなった馬をすべて「距離短縮馬」としました。
位置取りには、各馬について最初に記録された公式通過順位を使いました。
たとえば前走が「8-8」、今回が「5-5」なら、8番手→5番手なので「位置上昇」。前走「3-4-4」、今回「3-3」なら、最初はどちらも3番手なので「同位置」。前走「4-4」から今回「7-6」なら「位置低下」としています。
また、正常に完走し、そのレースで本来記録される通過順位を最後まで持っている馬だけを対象にしました。競走中止などによって途中から通過順位がなくなった馬や、新潟芝1000mのようにコーナー通過順位そのものが存在しないケースは除外しています。
この条件で、
芝の距離短縮馬は11,452頭。
最初の通過順位の平均は、
前走6.20番手→今回7.58番手。
位置を上げた馬が32.6%、同位置が11.3%、位置を下げた馬が56.1%でした。
ダートは13,018頭。
最初の通過順位の平均は、
前走6.45番手→今回7.84番手。
位置上昇31.8%、同位置11.8%、位置低下56.5%。

芝でもダートでも半数以上の馬が前走より位置を下げているのです。
短い距離の速い流れに入ることで追走が厳しくなり、相対的な位置はむしろ悪くなりやすい。ここまでは、以前書いた「距離短縮では追走負けしやすい」という話と一致します。
では、それなのに、なぜ「距離短縮有利」なのでしょうか。
位置を下げた馬は、本当に成績も下がっていた
答えを見るために、距離短縮馬を「位置上昇」「同位置」「位置低下」に分けてみました。
まず芝です。

距離短縮で位置を下げた馬は、勝率6.8%→5.8%、複勝率20.3%→18.8%と、実際に成績まで下がっていました。
一方、位置を上げた馬は勝率4.7%→10.1%。複勝率17.5%→29.5%。
しかも、単勝回収率は109.3%、複勝回収率108.2%もありました。
ダートも同様です。

ダートの位置上昇馬は、勝率が2.6%から9.8%、複勝率が13.7%から28.6%まで上がっています。単勝回収率106.5%、複勝回収率107.9%。
逆に位置低下馬は、勝率6.4%→4.4%、複勝率17.5%→15.0%。単勝回収率54.6%、複勝回収率53.8%でした。
つまり、「距離短縮」という条件自体が全ての馬へ一様にプラスに働いているわけではありません。
追走が厳しくなって位置を下げた馬は成績も悪くなる。
それに対して、短縮によって追走条件が厳しくなったにもかかわらず、前走より前の位置を取れた馬が大きく成績を伸ばしているのです。
ただ、ここで終わってはいけません。
位置を上げたかどうかは、レースが終われば誰でも分かります。
「今日は前走より前へ行けたから走った」
とレース後に言ったところで、馬券には活用できないでしょう。
私たちが知りたいのは、
「今回、この距離短縮馬は前走より前の位置を取れる・取れない」と、レース前に予想する方法です。
そこで、位置を上げる短縮馬を事前に見つける材料を探しました。
まず見ておきたいのが出走頭数です(取消・除外などを除いた実際の出走頭数を使っています)。

4頭以上減った馬では、52.9%が前走より位置を上げています。一方、4頭以上増えた馬では17.3%。頭数が減るほど位置を上げやすく、増えるほど位置を上げにくいという、非常にきれいな傾向になりました。
複勝回収率も、4頭以上減で87.0%、1~3頭減で86.5%でした。ただし、100%を超えているわけではありません。つまり、「頭数が減れば買い」という話ではなく、あくまで今回の位置取りを予測する材料として使うべき数字でしょう。
そして、出走頭数は馬券を買う前に一瞬で確認できる情報です。
競馬は「相対的な位置」を争う
この結果は、私にとって少し意外でした。これまで私は、少頭数なら紛れが少ない、多頭数ならゴチャつきやすい、くらいには考えていても、「前走から何頭減ったのか、増えたのか」を位置取りの予測材料として意識していなかったからです。
ただ、「頭数が減れば通過順位が前になる」こと自体は、ある意味では当たり前です。18頭立てが9頭立てになれば、同じように走っていても順位は前になりやすい。
今回、私がむしろ気になったのは、その「前になること」自体にも意味があるのではないかということです。
たとえば、9頭立ての3番手と18頭立ての6番手。どちらも割合で見れば「前から3分の1」ですが、9頭立ての3番手なら前にいる馬は2頭、18頭立ての6番手なら5頭います。多頭数になれば周囲の馬も増え、被される、進路を失う、他馬の動きに対応するといった不確定要素も増えます。
同じ前方3分の1でも、9頭立てと18頭立てでは、その位置が持つ意味は違う。
頭数が減ることで前の位置を取りやすくなり、自分より前にいる馬や不確定要素も減る。今回の検証で、単純な「何頭立てか」という数字には、私が思っていた以上に意味があるのではないかと感じました。
枠も位置取りを左右する重要なファクター
次に枠も調べました。

位置上昇率の差は、芝もダートも約2ポイントと大きくありません。
複勝回収率も芝では内外ほぼ同じでしたが、ダートでは5~8枠が80.1%と、1~4枠の70.8%を上回っています。
枠も今回の位置取りを考える上で重要なファクターだと考えていいでしょう。
ただし、「芝なら内枠、ダートなら外枠」と単純に考えてはいけません。
たとえば、スタートしてすぐにコーナーへ差し掛かるコースでは、内枠から好位置を取りやすい。コースの差も重要です。
自分の内に速い馬がいるのか、外から前へ出てくる馬がいるのかによっても、取れる位置は変わります。内の芝が悪ければ、外枠からの方が先行しやすいかもしれない。
こうしたところは、データだけで一律に答えを出すことはできません。
今回のデータから「芝では内寄り、ダートでは外寄りがやや位置を上げやすい」という大まかな傾向までは分かります。その上で、実際の出馬表を見ながら、
「この並びなら、この馬はどこを取れるだろう」
と考える。
そこにはまだ、予想の面白さや醍醐味が残っています。
「距離短縮だから有利」と単純に考えない
なお、位置上昇馬をさらに分けると、回収率をプラスまで持っていったのは、やはりより前まで行けた馬でした。
今回6番手以内だった馬は複勝回収率129.7%。一方、7番手以下では70.8%でした。
単に前走より位置を上げるだけでなく、どこまで前に行けるかも重要なのでしょう。これは「競馬は先行有利」という原則にも矛盾しません。

距離短縮は「走る距離が減るから有利」と単純に考えるのではなく、今回その馬がどの位置を取れるのかまで考えることが重要なのでしょう。
その予測には、出走頭数や枠、コース、相手関係などが使えます。
次回は、今回とは逆の「距離延長」について考えてみます。
まぐ
期待値馬券が全盛だからこそ、数字の裏付けがある「強い馬」を狙うべきという信念のもと予想理論『余力ラップ』を開発。立川優馬氏のオンラインサロンで行われた予想コンペティションで最優秀賞を受賞し、2023年10月より『ウマい馬券』に参画。2024年はプラス回収を達成し、トップ予想家としての地位を確かなものにした。
競馬予想の基礎を全7章にわたってまとめた電子書籍はこちら。
X(ツイッター) @33magu
