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【前編】このチンコのない身体でも良いんだと思えた日

――チンコをつけなかった僕が、劣等感を抱えていた頃

あれは、たぶん15年くらい前のことだ。

戸籍を変えて、社会では「男性」として生活していた。

仕事でも、外でも、誰から見ても男。

そう見られることに、違和感はほとんどなかった。

でも、身体は完全に男性ではなかった。

それをどう扱えばいいのか、当時の自分には分からなかった。

だから僕は、自分の中に残っている「女性だった部分」を、できるだけ深く封印していた。

思い出さない。

触れない。

考えない。

そうすれば、ちゃんと男でいられる気がしていた。

女性から男性への手術には、いくつかの選択肢がある。

胸を取る。

ホルモンを入れる。

声や体つきが変わっていく。

そこまでは、比較的多くのFTMが通る道だと思う。

でも、「チンコをつける手術」は別次元だった。

ないものを、作る。

言葉にすると簡単だけれど、現実はまったく違う。

手術は一度で終わらないし、身体への負担も大きい。

失敗や合併症のリスクも高い。

そして、何より——

お金がかかる。

覚悟と資金、その両方がそろって初めて選べる手術だ。

正直に言えば、当時の僕には、そこまで踏み切る気持ちはなかった。

だから僕は、

“ある程度の男性化”で生きる道を選んだ。

社会的には男性として扱われ、

日常生活に大きな支障はない。

完璧じゃない。

でも、現実的だった。

ただ、その選択の奥には、

誰にも言えない劣等感が、静かに残っていた。

「作った人」の話を聞くたびに、

尊敬と同時に、比べてしまう自分がいた。

あそこまでやった人こそ、本物なんじゃないか。

自分は、どこか中途半端なまま生きているんじゃないか。

理屈では分かっている。

正解も不正解もない。

それでも心のどこかで、

――逃げたんじゃないか

――覚悟が足りなかったんじゃないか

そんな声が消えなかった。

性欲だって、あった。

気持ちいいと感じる部分も、確かにあった。

でもそれは、

「なかったこと」にしなければいけないものだと思っていた。

これは自分だけの秘密。

誰にも話してはいけない。

墓場まで持っていくもの。

同じFTM同士でも、性の話はほとんどしなかった。

手術や戸籍の話はするのに、

「感じる」「欲がある」という話題になると、空気が変わる。

みんな、触れないようにしていた。

このまま一生、

この劣等感と一緒に生きていくんだと思っていた。

――まさか、

答えがエロの無料動画にあったとは思いもしなかった。

👉 後編につづく

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