元女今男の回想 女の子でしょ、と言われるたび、心がざわついた。
小さな頃から、なんとなく「違う」と感じていた。
母が選んでくれたワンピース。
可愛いね、と褒められる髪型。
ランドセルの色は、赤だった。
入学式の写真には、満面の笑みを浮かべる“女の子”が写っていた。
けれどあの笑顔の裏で、僕の心は少しだけうつむいていた。
「どうして赤なんだろう」
「黒がよかったのに」
言えなかった。
言えば、悲しませてしまう。
「普通じゃない」と思われてしまう。
赤いランドセルに、小さな違和感をそっと押し込んで、
僕は「女の子らしさ」を演じる毎日をはじめた。
「女の子なんだから、静かにしなさい」
「女の子でしょ?そんな座り方しちゃだめ」
「女の子なのに、乱暴なんだから」
――そのたびに、心がざわついた。
周囲の“正しさ”と、自分の“本音”がかみ合わない。
そのズレが、年を重ねるごとに静かに、確実に、僕を苦しめていった。
ピンクより青や黒が好きだった。
フリルよりシンプルな服。
可愛いより、かっこいいと言われたかった。
それは「趣味」や「好み」ではなく、
「本当の自分を選びたかった」だけなのだと、今なら言える。
思春期が近づくにつれて、
胸がふくらみ、スカートを履く制服に、
僕はひとつずつ「自分ではないもの」を身につけていくようだった。
鏡の中の“女の子”に、そっと目をそらした。
「僕」はどこにいるんだろう――そんなふうに、思っていた。
でも、今の僕が言えることがある。
あの赤いランドセルも。
あの頃の無理な笑顔も。
全部、僕を形づくるひとつの“かけら”だった。
心の奥で叫びつづけてきた声を、
ようやく言葉にできるようになった今、
僕は、自分を少しだけ誇らしく思う。
「女の子でしょ」と言われてきた過去が、
今の「僕」を強くしてくれたから。
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読んでくれて、ありがとう。
この記事が、
「自分ってなんだろう?」と迷う誰かに届きますように。
あの日の僕のように――ひとり、じゃないから。
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