モフモフドライヤー
「アルパカを愛でる会」
会長 深水 楓 です。
今日の私は、
朝からアルパカタウンの
執務室にこもっていました。
何をしているかって?
それはですね……
あ、ナギさんがやってきました💦
「おはようございます会長。早いですね」
「おはようございます。ナギさんこそ」
「……今、何か隠しましたね? 見せてください」
「あ、いや、これは個人的な――」
隠そうとした手元の紙を、
ナギさんはサッと引き抜きました。
なんという早業😱
そのまま、容赦なく読み上げます。

「昔々あるところに、アルパカの夫婦がいました。
……会長、これは何です?」
私は観念しました😓
「絵本を書いてるんです。趣味ですよ」
私はドヤ顔で答えます。
「……それはわかりましたが、次のこの文章――」
ナギさんは、
笑いを堪えているように見えました。
該当する箇所を、指でポンと叩きます。
「ご主人は街へ仕事に、奥さんはコインランドリーに洗濯に行きました。――って、急に現代的ですね。昔々で始まった物語に、コインランドリーが登場……どういうことですか?」
「世相を反映してるんです。今の時代、川へ洗濯へなんか行かないでしょう」
「また無理やり持ってきましたね」
「返してください」
私はナギさんから紙を取り返すと、
再び席につきました。
「……コインランドリーの情報が足りない。よし! 取材に行こう」
「会長?」
「ナギさんも行きますよ!」
「いや、私は仕事が……」
続けようとするナギさんを、
私は遮りました。
「コインランドリー、しょっちゅう行ってますよね? 洗濯にしては回数が多い」
「会長! それは個人情報です」
「無理やりは聞きません。ちょっと推理しに行きましょう」
私は、ナギさんの手を引いて、
会長室を後にしました。
コインランドリーに到着しました。
ナギさんは中に入ってきません。
入口で待機しています。
今回、珍しくナギさんが尻込みしています。
その理由を探るべく、
私は店内を見回しました。
壁に沿って、
大型の洗濯機と乾燥機が並んでいます。
中央にはテーブルと椅子。
テーブルの下には、
洗濯物を入れるための
カゴが積まれています。
なんてことはありません。
普通の店です。
そこで、
私は気づきました。
店内の一番奥にあるのは――

「モフモフドライヤー!!
あなたも一瞬で、モフモフに💕」
このキャッチコピーに、
私は思わず目を奪われました。
ナギさんを振り返ります。
ナギさんは目を逸らしました。

私は看板に目をやり、
その下の説明文を読み上げました。
「アルパカ専用乾燥機、モフモフドライヤー……あなたのモフ毛、
一瞬でふわふわモフモフに💕 新しい身だしなみ。爆誕🥰」
🦙
🦙
🦙
🦙
🦙
「……もしかして、ナギさん、これに通ってるんじゃないですか?」
私はずばり、指摘しました。
もう、ニヤニヤが止まりません。
ナギさんは黙ったまま、
ふいっと横を向きました。
やがて、ぼそっと呟きました。
「……悪いですか?」
「え?」
「通ったら、悪いんですか?」
「いや、そんなこと言ってませんよ。怒らないでください」
「じゃあ、その薄ら笑いをやめてください」
私は、緩んだ表情を引き締めました。
「あ……ごめんなさい。からかうつもりじゃなかったんです💦」
数秒の沈黙の後、
ナギさんがぷっと吹き出しました。
私もつられて笑います。
「いや、まさか……会長がそこまで把握してると思いませんでした。いつも大雑把なのに、今回はやけに突っ込みますね」
「いつも大雑把は余計ですよ。ところで、何で隠したんですか?」
ナギさんは、
一瞬躊躇した顔を見せましたが、
やがて、観念したように口を開きました。
「……モフモフドライヤーは、かなり強力です。膨らむんですよ。
直後は、毛量が2倍ぐらいに見えるんです」
「……え? それだけ?」
「そんな姿、誰にも見せたくありません。会長、想像しないでください」
もうダメでした。
この一言で、
私の防波堤は見事に決壊しました。
想像しないわけがありません。
毛量が2倍のナギさんを🤣
モフモフ爆誕!
ナギさんの言葉は、
さっきのキャッチコピーと共に、
私の中にいつまでも
残り続けることになりました😄
