おっかけ②
【おっかけその②】は、
工作前の、木材に墨付けをした状態の画像を紹介しましょう。
珍しいですよ。伝統大工以外の人には何が何だか分からないと思いますが(^_^)



無垢の木は、生物材料としての特性が至る所でそれを扱う職人の前に問題を突きつけてくるものです。『適材適所』と、簡単には言いますが、それが自然と不作為を醸し出せるまでに納まっている状態にもっていける技術は、かなりハイレベルなものと言えます。
私などはまだまだ発展途上で、勉強の至らぬ点ばかりですが、それでも私の技能と知識を総動員して、部材と対決して格闘しながら、耐震性だけでなく、時間(歴史)という評価に対しても決して恥ずかしくない仕事を心掛けている毎日です。
画像は【おっかけその①】の、9寸角(27センチ×27センチ)の7メートルの杉の墨付けした木材。木組みの本やHPでよく見る完成後の状態と比べて、『はぁ?』という感じでしょう?この墨付けが大変難しい訳です。
何が難しいかといえば、【総合的な見地】に立たねばならないからです。総合的な見地といえば、思いつくままに…木の性質、木目、木の繊維、材面の美しさ、構造力学、木材の乾燥の度合い、材の割れの具合、木材の背と腹、最適な木組みの選択、最適な金物補強の選択、木の元と末とその継ぎ方(元と元、元と末、末と末)、相手材との関係…等々。
大工といっても全自動構造材プレカットしか経験がない人では、実際に墨付けをして工作をしている人からすると、同じ大工といってもその技能・知識量は雲泥の差があります。
素人の人は『大工』といえば全員、私が作る位の木組みの種類をいとも簡単に作るもの、と思っているようです。(ちなみに私は3年程前で51点の木組み模型を作って実際の建築に応用していますが、私の妻はそれ位大工なら誰でも出来るもの思っていますσ(^_^;)? ま、いっか。
私が自身のHPで『伝統大工』という表現を用いているのは、
その違いを言いたいのです。
木造は、これからの日本を背負って立つハイテク産業ではなくて、今やローテク産業ではありますが、人々の暮らしの基本である『衣食住』の住分野を担う、個人の資産としてはもちろんのこと、社会資本としてもとても大切なものでもある訳です。
その質、耐震性と耐久性を向上させることで、”平均寿命26年”という使い捨て住宅のローンに追われて一生を終えるような人生とは違う人生も可能であることを、【住まい】という観点から私は提案したいのです。
その為には、こと木造住宅について言えば木造を知りぬいた設計と、実際に形にする大工が『伝統大工』でなければ、絶対に出来ません。それは現場に張り付いて観察してみれば嫌というほど良く理解できます。
基礎工事以前の土工事で、根切りして出た掘削土の処理をコストダウンの名の下にいったいどのように実際に処分しているのか。それ以前に、根切りすら行わないで基礎工事をしてしまう工務店や建設会社があるという現実!『凍結深度って何?』ですからね。彼らにとって、”根切り”とは、”値切り”であるというのが実態。
それに基礎工事で水セメント比を的確に管理(監理)できる施工管理者・設計者がいったい木造住宅の基礎工事現場にどれだけいるか。設計で伏図が書けない、つまり構造設計の出来ない一級建築士が設計事務所の意匠だけで押し切ってしまう木造住宅の数の甚大さ。
また、N釘とFN釘の違いも勉強せず、安いからといってFN釘を間隔も規定以上に大きくして釘さえもケチろうとする途方も無い数のぶっつけ大工。国土交通省の認定書まで偽造して所定の強度が出ていると捏造して売り込もうとする木ねじ業者や『建設省認定耐震強度4倍』などとこれまた構造性能を捏造してまで営業パンフレットを作成し、販売至上主義に没頭する某住宅メーカー。
性能値をさもありなんと羅列してその効果が見込めると導入したにもかかわらず全く効果が得られなかった太陽熱を利用した設備品をパブリシティ本まで出版して全国展開で売り込む業者等々…
現代主流の大量消費社会、売れれば正義といった価値観で動いている今の日本で、こと木造住宅では真に伝統構法を理解出来る設計士と大工を養成しなければ、日本の住宅は絶対に良くはなりません。私は断言します。
さて、話題を墨付けの木材に戻しましょう。この材の墨付けをしたのは私ですが、以上のことから、考えられることは全て墨付けに反映させました。
この材は人工乾燥を掛けたのですが、【末】つまり木が立ち木の状態の時の先端側に、ご覧の目割れが入っていました。継ぎ手は【元】と【元】つまり木の根っこ側同士を継ぐのを『別れ継ぎ』、【元】と【末】を継ぐのを『送り継ぎ』、【末】と【末】を『行合い継ぎ』と言いますが、一番玉の【元】は生物材料としてアテの出易い部位であり、『アテに当たれば目もアテられない』(笑)からか、出来れば避けたい継ぎ方です。
何しろアテの内部応力といったら、物凄いクセで、私は一度、ヒバの2寸×3寸(6センチ×9センチ)位だったと記憶しているのですが、軒反りのある化粧隅木への配付け垂木として工作後、取り付けまでしばらく日数が経っていたのを倉庫から引っ張り出して見てみると、真っ二つに割れて”タコウインナー(^3^)”のようにギュイーンと曲がって使い物にならなくなっていたのを体験したことがあります。その時は『?』だったのですが、今思うとアテ材だったのだと理解しています。木のクセって、本当に凄いものなのですよ。怖い位です。
画像の白いチョークは材の割れを墨付けに反映させる為にマーキングしたものですが、私の過去の記憶も引っ張り出してきて、これらの割れが工作後の木組みで強度に悪影響を絶対に及ばせてはならないと、墨を付ける訳です。もちろん材の化粧面にも配慮します。【元】【末】にも。そして選択可能な木組みの種類から今回は【追っ掛け大栓継ぎ】に決定した訳です。
私はよほどでない限りは【おっかけ】か【金輪継ぎ】かを選択します。中でも【おっかけ】は仕様規定で金物補強の必要の無い木組みなので、現場検査でノーチェックなのは木組みをご存知無い技術者や検査官には面倒がありませんね。
反面、メチを組んで、【おっかけ】よりも接合面の凸凹が経年変化でも出にくい【金輪継ぎ】は最低基準である建築基準法はもちろんですが、仕様規定に記載されていないので、強度的にはほぼ同等なのに構造計算が必要になるという、建築基準法の低レベルに合わせた仕様から漏れただけで超面倒な構造計算が必要になってしまうといった法整備の弊害がありますね。
【鎌継ぎ】よりはるかに強度も出て経年変化でも圧倒的に性能低下が起きないにもかかわらず、面倒な書類の提出をしないといけないなんて…
何か、おかしいですよね。要は大量生産を前提にしてしまうと、イイモノは法のネットからスル~っとこぼれ落ちてしまうということなのです。
接合部についていえば、耐力は木組みか金物かどちらかの最大値で決定されるのだから,例えば鎌継ぎは木組みをやめてしまって、【両面プレート金物ボルト締め】仕様にしてしまうのもあり得る訳です。そうすれば更に簡素になって手間もかからずコストダウンが出来るのだから、いっそのこと、ツーバイ化するのも一つの木造住宅のあり方といえます。耐用年数さえ考慮しなければ…といえると思いますが。
つづく
