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竹内商店

以前、アメブロに書いた恐怖のショートストーリーです。

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当時19歳の妹は、ハギレが大好きだった。
行きつけの竹内商店で色とりどりのハギレを買ってきて、コースターやランチョンマットを楽しそうに作っていた。

パニック障害気味のところがあって、定職にはつけなかったが、自分で作ったものをフリマアプリで出品して、それなりの売り上げがあったようだ。

わたしは妹の3つ上の兄だったが、妹は真っすぐにわたしを慕ってくれていた。深く蒼い吸い込まれそうな瞳の妹で、かなり美人の部類に入る女の子だった。

「ねぇ、ねぇ、おにいちゃん、おにいちゃん!」という言葉が、わたしに話しかけるときの妹の定番の言葉だったことを思い出す。

でも、その言葉を最後に聞いたのは、およそ8年前。自転車で竹内商店にハギレを買いに行く途中の交差点で、妹は大型トラックに命を奪われた。

最愛の妹を失って2年後の、とある日の夕暮れに、わたしは竹内商店の前に立っていた。

実は妹と同級生の竹内商店の娘と1年ほど前から、わたしは付き合い始めるようになっていたのだ。すでに結婚の約束もしていた。その日は、結婚式の打ち合わせで彼女の実家に訪問する日だった。

「お義父さん、お義母さん、おひさしぶりです」と、わたしは挨拶した。
「おぉ、わざわざ来てもらってすまないね」と、お義父さんが申し訳なさそうに奥から出てきた。
「ねぇ、ねぇ、これ見て!」と結婚予定の彼女も奥から出てきた。
「ほら、きれいにできたでしょ、ねッ!」と、ハギレで作ったコースターを見せてくれた。
「すごいね、ずいぶんと細かくて、きれいな仕上がりじゃないか、すごいよ」とほめてあげたが、妹が作ったコースターとどこか似ている部分があって、少し驚いた。

とはいえ、彼女と妹は友達同士で、妹は彼女にコースターの作り方を教えてくれていたのだ。

その後、彼女とは無事結婚し、その翌年には女の子も生まれた。
子どもはぐんぐん成長してくれる。
あっという間に幼稚園も卒園の年になり、今度は小学1年生だ。
娘は、かなりのパパっこで、わたしに甘えてばかり。妻が嫉妬するほどだったが、そんなことはお構いなしに、わたしも娘にベッタリの日々だった。

そして、卒園式の日。

「ほら、もう行くよ、少し速足で歩かないと遅れるよ」と玄関で、まだモタモタと靴を履いている娘に声をかけて、「ママも急いで!」と言いながら、わたしは玄関の外に立って、一軒家の自宅前の道路を眺めていた。

すると、うしろから…

「ねぇ、ねぇ、おにいちゃん、おにいちゃん!」

この8年間、聞いていなかった言葉が、わたしの背中めがけて飛んできた。

体が凍り付くような驚きというのは、こんなことをいうのだろうと、頭の片隅で考えていた。なぜなら、その声は19歳の妹の声そのものだったのだ。
懐かしさ半分、恐怖心半分の複雑な心境だった。

でも意を決して、ゆっくりゆっくりと振り向いてわが娘を見た。

そして、わたしは見てしまった。

そこに立っていたわが娘の瞳を。

その深く蒼い吸い込まれそうな瞳は、事故で亡くなったはずの妹の瞳そのものだった……


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