トランプ政権のエネルギー緊急事態宣言とデータセンター関連株への影響の振り返り
背景:国家エネルギー緊急事態宣言の概要
2025年1月、新たに就任したトランプ米大統領は「国家エネルギー緊急事態」を宣言し、急増するテック産業(特にデータセンター)の電力需要と国家安全保障を理由に、前政権のクリーンエネルギー政策を大きく転換しました (Trump ‘energy emergency’ centers on tech boom, national defense - E&E News by POLITICO) (Trump declares "national energy emergency," introduces raft of directives to support fossil fuel sector - DCD)。この宣言により、環境規制の緩和や化石燃料プロジェクトの加速など一連の措置が発表され、「データセンターの電力需要急増」がその決定を正当化する重要因として挙げられました (Trump declares "national energy emergency," introduces raft of directives to support fossil fuel sector - DCD)。実際、米エネルギー省によれば2028年までにデータセンターが米国電力消費全体の6.7~12%を占める見通しであり、現行の再生エネルギー拡大ペースでは供給不足との懸念が示されています (Trump ‘energy emergency’ centers on tech boom, national defense - E&E News by POLITICO)。トランプ政権は「不十分で断片的なエネルギー供給は経済・安全保障上の脅威」であるとし (Trump ‘energy emergency’ centers on tech boom, national defense - E&E News by POLITICO)、即時の対策を講じる方針を打ち出しました。
こうした政策転換は、データセンター関連企業のビジネス環境に直接影響を及ぼします。本稿では、データセンター関連株(特に米ビストラ・エナジー<VST>やバーティブ<VRT>など)に焦点を当て、宣言前後の株価推移、市場の反応と専門家の見解、そしてエネルギー政策が業界にもたらす短期・長期の影響、および関連銘柄への波及効果について整理します。
株価推移:宣言前後の変動
VST(ビストラ)とVRT(バーティブ)の株価は宣言に前後して大きく変動しました。トランプ氏のエネルギー政策への期待から、両銘柄とも2024年末~2025年初にかけて力強い上昇トレンドを描いていました。たとえばVSTは2024年中に株価が3倍以上に跳ね上がり、過去最高値を更新 (Palmetto Grain Brokerage - ) (Palmetto Grain Brokerage - )。2024年第四四半期には前年比+115%という驚異的な上昇率を記録しています (Vistra, Constellation Energy Stocks Rise Further on AI Energy Needs)。VRT(バーティブ)も同様にAIブームによる需要期待で前年比80%以上の株価上昇を遂げており (Vertiv Holdings Stock Sinks on AI Data Center Demand Concerns)、両社とも宣言前から「AI・データセンター需要の恩恵銘柄」として注目を浴びていました。
宣言直後の株価急騰: トランプ大統領の宣言と関連施策が具体化すると、市場は即座に反応しました。エネルギー緊急事態宣言が伝わった翌取引日(1月下旬)にはVST株が一日で約15%急騰し、79.22ドルで引けました (Jim Cramer Says This Utilities Stock 'Will Continue To Win,' Recommends Buying AMD - FastBull)。同じ日にVRT株も約7.8%上昇し、78.70ドルまで値を伸ばすなど、関連銘柄は総じて大幅高となりました (Jim Cramer Says This Utilities Stock 'Will Continue To Win,' Recommends Buying AMD - FastBull)。これは、新政策によりデータセンター向け電力供給が加速し収益拡大につながるとの期待買いが入ったためです。実際、この週にはビストラやコンステレーション・エナジー(後述)が揃って株価上昇を記録し、S&P500種指数のトップ上昇銘柄となりました (Vistra, Constellation Energy Stocks Rise Further on AI Energy Needs) (Vistra, Constellation Energy Stocks Rise Further on AI Energy Needs)。
短期的なピークと調整: しかし、その後まもない1月27日には状況が一変します。中国発の新たなAI技術動向を受けて「本当にそこまで電力需要が伸びるのか?」との疑念が広がり、VST株は一日で約30%も急落し、年初来上昇分を帳消しにする事態となりました (Power stocks plunge as AI energy needs questioned due to new China AI lab - World News - Hopzone.eu)。同日、コンステレーションやGEベルノバ(GE Vernova)など類似銘柄も20%以上の下落に見舞われています (Power stocks plunge as AI energy needs questioned due to new China AI lab - World News - Hopzone.eu)。市場がAI関連の電力需要見通しに神経質になったことで、一時的な利益確定売りと調整が起きた格好です。また2025年2月中旬には、VRTが発表した当四半期ガイダンスが市場予想をわずかに下回ったこともあり、VRT株が約9%下落する場面も見られました (Vertiv Holdings Stock Sinks on AI Data Center Demand Concerns)。このように、宣言後の関連株は急騰→急落というボラティリティの高い推移を辿りましたが、それでも依然前年から大幅高の水準(例:VRTは直近12ヶ月で+80%以上)を維持しています (Vertiv Holdings Stock Sinks on AI Data Center Demand Concerns)。
市場の反応とアナリスト評価
市場の初期反応は熱狂的でした。宣言により「AI時代に必要な莫大な電力需要を政府がバックアップする」との見方が強まり、テック分野に電力を供給する企業の株が軒並み買われました。 (Power stocks plunge as AI energy needs questioned due to new China AI lab - World News - Hopzone.eu)にあるように、投資家は「AIデータセンターが膨大な電力を必要とする」との思惑で原子力・火力発電を手掛ける電力会社や、データセンター設備メーカーを積極的に物色しました。その結果、前述のVSTやコンステレーション・エナジーは**「AI電力需要銘柄」として2024年末から株価急騰し、2025年初にもその勢いが継続 (Vistra, Constellation Energy Stocks Rise Further on AI Energy Needs) (Vistra, Constellation Energy Stocks Rise Further on AI Energy Needs)。コンステレーションはマイクロソフトと提携して停止中の原発を再稼働させデータセンターに電力供給する計画**を発表し株価が急騰(8.4%上昇) (Vistra, Constellation Energy Stocks Rise Further on AI Energy Needs) (Vistra, Constellation Energy Stocks Rise Further on AI Energy Needs)、VSTも2024年に買収した原子力資産をテック向け電源として活用する戦略が評価されました (Palmetto Grain Brokerage - )。
アナリスト・専門家の見解も総じて強気が目立ちます。特に公益・電力株としては異例の高成長を遂げたVistra(VST)には強気の評価が相次ぎ、追跡する12人の証券アナリスト中11人が「強い買い推奨」という状況です (Palmetto Grain Brokerage - )。彼らはVSTの収益見通しについて、「2023年の1株当たり利益2.96ドルが2025年には8.26ドルまで拡大する」(年平均+38%の利益成長)と予測しており (Palmetto Grain Brokerage - )、現株価でも割高ではないとの見解を示しています。米著名投資番組のジム・クレイマー氏もVSTを「今年最大の勝ち組の一つで、今後も勝ち続けるだろう」と評し、その上昇余地に太鼓判を押しました (Jim Cramer Says This Utilities Stock 'Will Continue To Win,' Recommends Buying AMD - FastBull)。バーティブ(VRT)についても、第4四半期の売上・利益が市場予想を上回る好決算となり、経営陣は**「AIの普及に伴いデータセンター需要は今後も伸びる」と自信を示す**など (Vertiv Holdings Stock Sinks on AI Data Center Demand Concerns)、ポジティブな見方が語られています。
しかし、一方で警戒的な声や不確実要因も指摘されています。バンクオブアメリカ(BofA)のアナリストは、中国の新興企業DeepSeekによる高効率AIモデル登場を受け、「AIが必要とする電力やクラウド投資への過度な期待に疑問が生じている」とコメントし (Power stocks plunge as AI energy needs questioned due to new China AI lab - World News - Hopzone.eu)、市場全体がAI関連需要を過大視しているリスクを警告しました。またVRT経営陣も、自社見通しにトランプ新政権の政策影響(関税や税制変更、他国の対抗策など)は織り込んでいないと述べており (Vertiv Holdings Stock Sinks on AI Data Center Demand Concerns)、政策次第で業績が左右される不確実性を示唆しています。実際、DeepSeekが従来より低コストで省電力なAIプラットフォームを発表したとのニュースが伝わると、投資家心理は一転し関連株に利益確定売りが出ました (Power stocks plunge as AI energy needs questioned due to new China AI lab - World News - Hopzone.eu)。このように、「AIインフラ特需」への期待と、「技術革新や政策変化による需要減速」への懸念が綱引きしている状況で、市場は流動的な状態と言えます。
まとめると、エネルギー緊急宣言に対する市場の反応は極めて敏感でした。アナリストからは「電力・インフラ企業にとってAI需要はゲームチェンジャー」との強気見通しが示される一方、需要予測の不透明さや政策リスクを注視する慎重論も出ており、今後もニュース次第で株価が大きく振れる可能性があります。
エネルギー政策の短期的影響(データセンター業界)
トランプ政権のエネルギー緊急事態宣言に伴う施策は、短期的にデータセンター業界に追い風となる側面があります。まず、同宣言により化石燃料開発の促進や発電所建設の迅速化が図られる見込みです (Trump declares "national energy emergency," introduces raft of directives to support fossil fuel sector - DCD) (Trump declares "national energy emergency," introduces raft of directives to support fossil fuel sector - DCD)。トランプ大統領は就任直後、石油・ガスの生産拡大や環境規制の撤廃に関する多数の大統領令に署名しており (Trump declares "national energy emergency," introduces raft of directives to support fossil fuel sector - DCD)、電力供給網の強化を急務として位置付けました。例えば、データセンター併設型の発電所建設を緊急権限で即座に許可する考えを示しており、実際に「私自身の権限で数年がかりの許認可プロセスを数日のうちに完了させる」と発言しています (Trump plans to use emergency powers to fast-track generation co-located with AI | Utility Dive)。この結果、データセンター事業者にとっては新設施設の電力確保が容易になると期待されます。電力インフラのボトルネックが緩和されれば、大規模なAIデータセンター建設プロジェクト(例えばテキサス州アビリーンで進むStargate計画 (Trump plans to use emergency powers to fast-track generation co-located with AI | Utility Dive))も加速し、業界の拡張スピードは上がるでしょう。
また、短期的には電力コストや供給安定性の改善も見込まれます。供給不足が懸念される地域への発電投資が促進されるため、ピーク需要時の電力逼迫リスクが低下し、データセンターの安定稼働に寄与します。特にAI計算用の大規模データセンターは一瞬の電圧低下でも障害になりかねないため、信頼性向上の恩恵は大きいです。トランプ大統領は「米国のエネルギーを現状の2倍に増強する必要がある」と述べ (Trump plans to use emergency powers to fast-track generation co-located with AI | Utility Dive)、非常時対応としてデータセンター隣接の自家発電(石炭火力を含む)まで提案しています (Trump plans to use emergency powers to fast-track generation co-located with AI | Utility Dive)。このような方針は、今後数年の間にデータセンター電源設備(UPSやバックアップ発電機など)やエネルギー調達戦略に変化を与え、業界全体が電力アクセス強化に向けた設備投資を拡大する可能性があります。実際、政府主導のStargateプロジェクトには民間から最初の1000億ドルが投入され、全国的なAI対応インフラ構築が動き出しています (3 ‘Strong Buy’-Rated Stocks to Scoop Up on Trump’s…) (3 ‘Strong Buy’-Rated Stocks to Scoop Up on Trump’s…)。
ただし短期的な課題も存在します。再生可能エネルギー推進策の一時停止や規制緩和に伴い、エネルギー市場のルール変更や報復的な措置による不確実性が増す懸念です。バーティブ社は自社見通しについて「新政権の政策(関税や税制)や他国の対抗策の影響は考慮していない」と明言しており (Vertiv Holdings Stock Sinks on AI Data Center Demand Concerns)、例えばエネルギー貿易摩擦や州レベルでの規制対立が起これば、機器コストや電力価格に波及し得ます。また、大規模な化石燃料シフトは環境面での反発を招き、訴訟やプロジェクト遅延のリスクもゼロではありません。短期的には恩恵が見込まれる一方で、政策変更に伴う揺り戻しや市場のボラティリティにも注意が必要です。
エネルギー政策の長期的影響(データセンター業界)
長期的には、このエネルギー政策転換がデータセンター業界の構造に与える影響は両刃の剣となり得ます。一つは、安価で豊富な電力供給基盤の確立による持続的成長の後押しです。政府推計で示されたように今後数年でデータセンターの電力需要は爆発的に増加する見通しであり (Trump declares "national energy emergency," introduces raft of directives to support fossil fuel sector - DCD)、この需要に応えるための発電所新設・送電網整備が前倒しで進めば、電力不足がボトルネックとなって業界成長が鈍化するリスクは低減します。実際、大手テック企業と電力会社の直接提携も増えています。Microsoftはコンステレーション社と契約を結び原発電力で自社データセンターを賄おうとしており (Vistra, Constellation Energy Stocks Rise Further on AI Energy Needs) (Vistra, Constellation Energy Stocks Rise Further on AI Energy Needs)、Googleも小型原子炉(SMR)による電力調達に動くなど (Palmetto Grain Brokerage - )、将来を見据えたエネルギー確保戦略が進行中です。トランプ政権の方針はこうした動きを加速させ、データセンターと電源インフラの一体的な開発(co-location)が業界標準になる可能性もあります。
また、原子力回帰や大型火力発電所の延命により、ベースロード電源の供給力が厚みを増せば電力価格の長期安定化も期待できます。電力コストはデータセンター運営費の大きな部分を占めるため、価格安定は利益予測のしやすさにつながります。Vistra社は既に原子力資産を倍増させる買収を行い(発電容量を2,400MW→6,400MWに拡大) (Palmetto Grain Brokerage - )、「AIインフラ企業」へと業態転換を図るとまで言われています (Palmetto Grain Brokerage - )。長期にわたり安定電源を供給できる企業が勝ち残り、電力供給とデータセンター運営の垣根が低くなるような業界再編も考えられます。
一方で、長期的なリスク・課題も無視できません。最大の懸念は環境制約と持続可能性です。化石燃料重視への揺り戻しは温室効果ガス排出増加を招くため、将来的に規制当局や国際的な圧力で再度の政策転換が起こる可能性があります。データセンター産業自体も、近年は再生エネルギー100%宣言などサステナビリティ目標を掲げてきました。もし国家レベルで再生エネ推進が停滞すれば、大手クラウド事業者らは自前で太陽光・風力設備投資を進める必要に迫られるかもしれません。また2025年1月にIRA(インフレ抑制法)の補助金支払いを一時停止したように (Trump’s $500 billion AI data-center project expected to be powered by solar – pv magazine International)、クリーンエネルギーへの公的支援が削減されれば、長期的には再生エネ電力の調達コストが上昇しデータセンターの電力単価が上がるリスクもあります。
さらに、技術進歩による需要構造の変化も長期影響を左右します。仮にAIチップやソフトウェアが飛躍的な省電力化を遂げれば、現在想定されているような「大規模な発電所増設」は過剰投資となる可能性があります。実際、DeepSeekが示した省電力なAIモデルは「クラウド投資や電力需要の高い成長見通し」に疑問符を投げかけました (Power stocks plunge as AI energy needs questioned due to new China AI lab - World News - Hopzone.eu)。このように需要予測のブレが大きい中で、長期計画として数百億ドル規模の電源開発を進めることにはリスクも伴います。過剰な設備は将来的な電力価格の低迷や設備の遊休化につながりかねず、投資効率の悪化を招く懸念もあるでしょう。
まとめれば、短期ではデータセンター業界に追い風となった今回のエネルギー政策も、長期では持続可能性と需要見通しとの戦いになります。電力インフラ整備によって業界の成長土台が強化される一方、環境対応や将来的な需要変動への適応策を並行して講じることが、業界の長期的な安定成長には不可欠と言えます。
関連銘柄(VST・VRT以外)への影響
エネルギー緊急事態宣言とその後の市場変動は、VSTやVRT以外の関連銘柄にも波及しました。主な銘柄と影響を整理すると以下の通りです:
コンステレーション・エナジー(Constellation Energy, CEG):全米最大級の原子力発電事業者で、データセンター向け電力供給の中心的存在です。AI需要を背景に2024年末に株価は過去最高値を更新し、第4四半期には前年比+115%の上昇を遂げました (Vistra, Constellation Energy Stocks Rise Further on AI Energy Needs)。Microsoftとの提携による原発再稼働計画が伝わった2024年9月には株価が急騰し、その後も2025年初めまで上昇基調 (Vistra, Constellation Energy Stocks Rise Further on AI Energy Needs)。トランプ宣言直後もVistraと並び買われましたが (Palmetto Grain Brokerage - )、1月27日の調整局面では20%以上の大幅安に見舞われています (Power stocks plunge as AI energy needs questioned due to new China AI lab - World News - Hopzone.eu)。それでも長期成長期待は根強く、原子力によるクリーンかつ安定的な電力提供でクラウド各社との契約拡大が見込まれるため、アナリストの評価も高い水準を保っています。
GEベルノバ(GE Vernova):ゼネラル・エレクトリック(GE)の電力インフラ部門で、ガスタービン発電機や送電網事業を含みます。トランプ新政権の誕生に伴い、米国の発電所新設ニーズ増大が意識され、GE本体やベルノバ部門への期待が高まりました。実際、VistraやCEGとともに「AI電力関連」として年初来のS&P500上位に顔を出す場面もありました (Power stocks plunge as AI energy needs questioned due to new China AI lab - World News - Hopzone.eu)。もっとも、DeepSeek報道時には他の電力株同様に急落し (Power stocks plunge as AI energy needs questioned due to new China AI lab - World News - Hopzone.eu)、将来の成長期待と警戒感が綱引きしている状況です。GEベルノバは天然ガス火力の高効率化や送電インフラ更新で恩恵を受ける反面、再生エネ軽視の政策により風力部門の成長が制約されるリスクも抱えます。
テーレン・エナジー(Talen Energy):データセンター電力市場への新規参入例として注目されました。Talenは元々石炭火力主体の独立系発電事業者でしたが、近年原子力・再生エネへの転換を図っています。Amazonがクラウド(AWS)向け電力確保のため、同社の原子力プロジェクトに6億50百万ドルを出資したことが報じられ (Palmetto Grain Brokerage - )、民間主導で電力源を確保する動きの象徴となりました。現在Talenは非上場企業ですが、このニュースはテック企業と電力会社の提携強化トレンドを示唆し、上場各社にもポジティブな材料となりました。将来的に同社が再上場する場合や類似の発電事業者(NRGやディューク・エナジーなど)がデータセンター向け契約を結ぶ場合、今回の流れが評価されるでしょう。
データセンターREIT(米国不動産投資信託):エクイニクス(EQIX)やデジタル・リアルティ(DLR)といったデータセンター運営企業の株価は、電力会社ほど劇的な値動きは示しませんでした。これはこれら企業の収益が主にコロケーション需要や賃料収入によるもので、短期的な政策よりも需要動向の影響が大きいためです。ただ電力インフラの強化は長期的にデータセンター拡張を支える基盤となるため、中長期ではプラス材料です。電力コストの安定や新規開発の円滑化により、これらREITの大型キャンパス計画も進みやすくなるでしょう。一方で環境重視のテナント企業も多いため、電源構成が化石燃料に偏ることへのレピュテーションリスクには引き続き注意が必要です。
オラクル(Oracle, ORCL):データセンター「利用側」ではありますが、Stargateプロジェクトの主要企業として直接恩恵を受けた銘柄です。トランプ大統領が発表したAIインフラ投資計画(Stargate)において中核的役割を担うとされ、発表翌日にはオラクル株が7%急騰しました (3 ‘Strong Buy’-Rated Stocks to Scoop Up on Trump’s…)。これは、オラクルが自社のクラウド事業拡大に向け巨額のデータセンター建設を主導し、その資金と規制面を政府が後押しする構図が鮮明になったためです。他にもAI半導体大手のNvidiaや英Arm社など、AIインフラ需要増加の恩恵を受けるテック株が同時に買われる展開となりました (3 ‘Strong Buy’-Rated Stocks to Scoop Up on Trump’s…)。エネルギー緊急宣言自体はこれら企業の直接業績には関与しませんが、「AI需要=インフラ投資拡大」の図式が投資家心理を刺激し、関連セクター全体の株高要因となりました。
再生可能エネルギー関連:逆に、トランプ政権の方針で向かい風となったセクターも存在します。風力発電や電気自動車への政府支援目標が撤回・凍結され (Trump declares "national energy emergency," introduces raft of directives to support fossil fuel sector - DCD)、太陽光・蓄電池分野への直接的な補助も見直される可能性が出てきました。ただ一部では、SoftBank傘下のSBエナジーによる大規模太陽光+蓄電によるStargate電力供給計画が報じられるなど (Trump’s $500 billion AI data-center project expected to be powered by solar – pv magazine International)、再生エネも民間主導でプロジェクトに組み込まれる動きがあります。実際、トランプ政権はIRA(気候エネルギー法)の支出停止を指示しつつも、Stargate計画の電源選択肢から再生エネを排除していないとの報道もあり (Trump’s $500 billion AI data-center project expected to be powered by solar – pv magazine International) (Trump’s $500 billion AI data-center project expected to be powered by solar – pv magazine International)、今後は政府主導の大型プロジェクトに組み込まれる形で限定的に恩恵を受けるかもしれません。しかし全体として見れば、クリーンエネルギー企業の成長期待は政策変更によりやや抑制され、これらセクターの株価はエネルギー緊急宣言時に相対的な出遅れや下落傾向がみられました(例:再生エネ専業の一角であるFirst Solar株は市場全体が上昇する中で伸び悩む場面も報告されています)。
以上のように、データセンター関連株と言ってもその裾野は広く、電力供給側、設備インフラ側、利用するテック企業側、さらに競合するクリーンエネルギー側と多岐にわたります。トランプ大統領のエネルギー緊急事態宣言は、電力供給インフラとその周辺産業に短期的な追い風をもたらしましたが、一方で市場のテーマを「AIインフラ需要」に集中させることで明暗を分ける結果ともなりました。今後、関連各社は新政策の恩恵を享受しつつも、需給見極めや持続可能性への対応策を講じていくことが求められるでしょう。
Sources:
(Trump declares "national energy emergency," introduces raft of directives to support fossil fuel sector - DCD) (Trump declares "national energy emergency," introduces raft of directives to support fossil fuel sector - DCD)DataCenterDynamics – 「トランプ氏、国家エネルギー緊急事態を宣言。化石燃料セクター支援の一連の指令を発表」(2025年1月21日)
(Trump ‘energy emergency’ centers on tech boom, national defense - E&E News by POLITICO)E&E News/Politico – 「トランプ『エネルギー緊急事態』宣言、背景にテックブームと国防」(2025年1月21日)
(Trump ‘energy emergency’ centers on tech boom, national defense - E&E News by POLITICO)E&E News – データセンター向け電力需要急増と既存電源の退役に関する指摘
(Jim Cramer Says This Utilities Stock 'Will Continue To Win,' Recommends Buying AMD - FastBull)Benzinga via FastBull – Jim Cramer’s Lightning Round(2024年)における関連株の値動き
(Vistra, Constellation Energy Stocks Rise Further on AI Energy Needs) (Vistra, Constellation Energy Stocks Rise Further on AI Energy Needs)Investopedia – 「Vistra、Constellationエナジー株がAI電力需要で上昇」(2025年1月3日)
(Power stocks plunge as AI energy needs questioned due to new China AI lab - World News - Hopzone.eu) (Power stocks plunge as AI energy needs questioned due to new China AI lab - World News - Hopzone.eu)CNBC (経由: Pelican Press/Hopzone) – 「AI需要見直しで電力株が急落」(2025年1月27日)
(Power stocks plunge as AI energy needs questioned due to new China AI lab - World News - Hopzone.eu)CNBC (経由: Hopzone) – BofAアナリストによるDeepSeekの影響分析コメント(2025年1月27日)
(Vertiv Holdings Stock Sinks on AI Data Center Demand Concerns) (Vertiv Holdings Stock Sinks on AI Data Center Demand Concerns)Investopedia – 「Vertiv株、AIデータセンター需要への懸念で下落」(2025年2月12日)
(Palmetto Grain Brokerage - ) (Palmetto Grain Brokerage - )Barchart (経由: Palmetto Grain) – 「Vistraはエネルギー緊急事態で恩恵を受けるか?」(2025年1月25日)
(Palmetto Grain Brokerage - ) (Palmetto Grain Brokerage - )Barchart (経由: Palmetto Grain) – 上記記事内、VistraとConstellationの株価上昇要因と原子力投資に関する言及
(Trump plans to use emergency powers to fast-track generation co-located with AI | Utility Dive) (Trump plans to use emergency powers to fast-track generation co-located with AI | Utility Dive)UtilityDive – 「トランプ、大統領令でAIデータセンター併設の発電所を迅速承認へ」(2025年1月24日)
(Trump’s $500 billion AI data-center project expected to be powered by solar – pv magazine International) (Trump’s $500 billion AI data-center project expected to be powered by solar – pv magazine International)PV Magazine – 「トランプのStargate計画、ソーラー活用の可能性とIRA停止」(2025年1月27日)
(3 ‘Strong Buy’-Rated Stocks to Scoop Up on Trump’s…)Barchart via inkl – 「トランプのStargate AI発表で関連株が上昇」(2025年1月25日)

