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#せりふ三題噺 独白

はらとけいさんの企画に参加させて頂きます。
ちょっと、長めの文章になってしまいましたが、飽きずに読んでいただけると嬉しいです。

■セリフ
「受付で待ってますね」
■三題
・宇宙
・カレンダー
・昆布

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私はAI関連企業を経営している。
会社経営を始めてから既に二十年が経過した。
正直に言えば、「管理」を目的とした会社だ。
但し、ユーザーに対しては「管理」という言葉は使わない。
「サポート」と呼んでいる。呼称は違うが目的は一緒だ。
まずは、個人の行動管理いやサポートから始めた。
朝起きてから寝るまでを快適に過ごす。就寝時に明日の準備から始まって睡眠、起床、食事、天気予報、交通機関の運行状況、そして仕事。
営業マンにも最適な情報を提供できるようにした。
接客の仕方からアポイントの取り方、商品知識、これらを学ぶだけではなくユーザーの横で指導することもできるようになった。
休日を如何に楽しく過ごし、メンタルケアに役立てるか。
但し、本人には「楽しむ」ことだけを助言し、メンタルケアには触れない。
メンタルケアには触れるのは、ユーザーの行動にぶれが生じたり、相談を持ち掛けられた時だけだ。
こうなってくるとユーザーが主人なのかAIが主人なのか判別しがたくなったが、結果オーライなので、ウィンウィンの関係を築けたと思っている。
そして、会社経営やスマート都市の運営サポートまで手を広げていって成功を収めることができた。私は個人から小さな集団とボトムアップで「管理」の理念を進めてていった。
国家の運営から都市へというトップダウン方式で「管理」を構築しようとした野心家は大勢いたが、国を乗っ取るのではないかという疑いを持たれ潰されてしまった。
まあ、実際にそういう風に見えないこともないのだが、「管理社会」が行き着く先は結局そういうことになるのだ。国自体をAIが管理する。あ、いやサポートする。
実は私自身は、紙のカレンダーを使ってスケジュール管理しているのだが。
会社の経営や会議などのスケジュールについては、お気に入りの秘書に管理を任せている。
まだ、AIはチャーミングで気遣いができ、頭が切れる、キャビンアテンダントのような存在には育っていないからね。
私ももう六十歳になる。そろそろ、後任に道を譲ることを検討し始めても良いころなのだが、まだまだ、元気で頑張れると自分では思っている。
だが、万が一のことを考えておかなくてはいけないだろう。
息子の良太は三十三、信二は三十だ。
ここで気持ちを切り替えるために『宇宙旅行』へ行くことにした。
『宇宙旅行』の費用も大分安くなってきた。一人五百万円台で宇宙旅行ができる。
もしものことを考えて息子たちと同乗はしない。
長男の息子の真一が今年、中学に進学した。そのお祝いを兼ねて二人で行くことにした。
会社ではイベントの一環として経費で行かれてはどうかという打診もあったが、断った。
宇宙への旅は、どうしてもプライベートで行きたかったからだ。
私が二十二世紀まで生きていることはないだろう。もし、生きられたとしても、百歳になっている。
妻は三年前に他界してしまった。残念だが、バーチャルとなった立体映像の妻とは毎日話をしている。
孫の成長を楽しみにしているようだ。私の好みに合わせて会話をするのでそうなるのかもしれないが。
旅行先を『宇宙』に決めたのには訳がある。
昔、祖父からガガーリンの話を聞いた。ガガーリンは人類史上初めて大気圏外へ出た人物だ。
「ガガーリンが帰還した時に語った言葉として、日本語では『地球は青かった。』って訳されているが、正確には『空はとても暗かった。一方、地球は青みがかっていた』和也はこの感想をどう思うかな」
「自分が見た地球の感想を客観的に『青かった』って言ったんじゃないかな。僕たちが海は青い、空は青いって思うけれど、宇宙に出てもやっぱり青く見えたって」
祖父はにやりとして語った。
「そうだね。ガガーリンは、地球の青さをそのまま語った。地球は美しかったとも、小さかったとも自分の感想は言っていないよね。見たままの情景を伝えた。そして、それを聞いた人がどう捉えるかは、聞いた人自身に託したんだと思うよ」
「じいじはね、果てしなく暗い宇宙空間にぽっかりと浮かんだ青い星を想像したよ。どうだい。宝石のように美しくはないかい」
この会話が祖父との貴重な思い出として残った。
そして、真一にも私と過ごした思い出を残してやりたいと思った。祖父とやり取りした会話を『実体験』として継承して行く為に。
そういえば、祖父はよく昆布茶をふるまってくれたな。
いつの間にか、昆布茶を飲むのが朝のルーティーンになっているのだが。

私はタクシーに乗車していた。筑波でJAXAが運営する「宇宙旅行センター」へと向かっていた。
ここは、昔、JAXAが「宇宙センター」を運営していた跡地らしい。由緒ある場所から宇宙に飛び立てることにも感慨を覚える。
私の腕時計に着信を知らせる合図が入った。
良太からのメッセージだった。
受付で待ってますね
帽子に装着されたスピーカーからメッセージが流れた。
「今、柏上空だ。もうすぐ着くよ。」
今日は、これから宇宙旅行の説明会と健康診断を受ける。
事前に健康診断を受けてはいるが、飛行直前の健康診断で異常が見つかればフライトできなくなってしまうのだが。
そして、三日間の事前トレーニングを受ける。
私は真一と過ごす五日間が楽しみでならない。
さあ、何から話そうか。


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