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(小説)スイミング・プール 1 プールの側面に敷き詰められた青白いライナーに…

1.
 プールの側面に敷き詰められた青白いライナーに、午後4時の日光がゆらゆらと反射し、病院の心電図のように、驚くほど規則正しい波を描いていた。水の中を覗くと、空色の液体がぐら、ぐらと、同様に規則正しく波打っている。

 この水は、あまりにも美味しそうだ、とジュスティーヌは思った。

 8月の湿り気のない直射日光に照らされ、全身の皮膚は白く乾燥して、ほてっている。水に触れたら、どんなに快いだろう。

 水着は持っていない。

「残念だけど、プールは次回までおあずけね」

 そう観念して帰り支度を始めたが、あの揺れる水を見てしまった後、これ以上待つことは耐え難い苦痛だった。

 ジュスティーヌは小さなため息をついて、再びプールサイドに戻る。左右をちらりと確認すると、地味な花柄のワンピースを脱いだ。下着を外すと、足からばしゃんと無様に飛び込んだ。

「誰かが見ていたら、大きな肉の塊がプールに落ちたように見えたんだろうな」と独り言をつぶやいて苦笑した。誰も見ていないのだから、気にすることはない、と自分を励ます。

 生まれたままの姿で泳いだのは、これが初めてだった。

 両足で壁を思い切り蹴ると、水の抵抗を乗り越えて、思いのほか身体が前進した。水着が引っ張られてめくれ上がることはない。大きめの胸がぽろりと出てしまう心配もない。
 なにより、手足をどんなに動かしても、捕獲された虫のような気分にならない。昔から、水着が肩や尻に食い込んでくる感触が苦手だった。

「うわぁ、すごい……」

 身体が水の中に放たれている。その自由さ、快適さは予想以上で、ジュスティーヌは子供のように感嘆した。

 身体の隅々の触覚が、はるか昔の記憶を探しているような気がした。水の中に住んでいた頃の記憶。

 ……数億年前、私の祖先は海で泳いでいたのかな。

 誰もいないプールで、全裸のまま泳ぐこと。
 今、人生で一番美味しいもののひとつを味わっている。

「うわあああああぁぁっ!」

 水の中で絶叫する。誰にも聞こえないと思うと、驚くほど自由に声が出た。

 あおむけになり、フィルターから出る水の流れに身を任せて、目を閉じる。羽根で背骨をなぞられた時のように鳥肌が立った。

 身体中の感覚が、初めて知る快感に屈服していた。


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